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【完結】絶対に私は勇者パーティーに入りません!!~勇者パーティーに入ればバッドエンド確定の不遇なサブキャラに転生したOLの生き残りを賭けた戦いが、今ここに始まる  作者: 楊楊
第三章 行き詰った勇者パーティー

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39 勇者パーティーの帰還 1

「えっ、サンクランド魔法国の国王とランカシア帝国の皇帝がトンネル開通式に出席するって?」


「そうなんですよ、クリスお姉様。アイリス王女が留学している関係で、サンクランド魔法国の国王が出席することは理解できるのですが、何かと対抗心を燃やしているランカシア帝国の皇帝が出席するのは、予想外でした。宰相が言うには、サンクランド魔法国が出席するので仕方なくランカシア帝国に声を掛けたところ、思いのほか反応がよく、こんな事態になったそうです」


ムリエル王女の説明によると、ランカシア帝国の皇帝は、ダグラス王子が私の資金援助を断り、旅に出た話に心を打たれ、「ダグラス鉄剣」を士官学校に100本程寄贈したそうだ。ランカシア帝国はロトリア王国に好印象を持っており、サンクランド魔法国への対抗心だけが理由ではないという。

聞くところによると騎士団による物理攻撃が得意なランカシア帝国と魔法至上主義のサンクランド魔法国は水と油で、国際会議を開催する際はかなり気を使わなければならないらしい。


ただでさえ、開通式の準備で忙しいのに、余計な仕事が増えそうだ。

ムリエル王女と打ち合わせをしているとリルとリラが会長室に入って来た。


「会長、勇者パーティーが着きました」

「一人変な女がいたけど、かなり怒ってましたよ」


★★★


勇者パーティーがムリエリアを訪れた。各国の要人よりも早く現地入りしてくれたのはよかった。打ち合わせに時間が取れるからだ。


勇者パーティーだが全員がレベル15になっており、以前にも増して逞しくなっていた。ただ、こっちはレベル20越えがゴロゴロいるので、複雑な気分だ。戦闘力の高いメンバーには、「空気を読め」と指示している。再会の挨拶もそこそこに早速仕事の話を始める。


「まずダグラス王子にお尋ねしますが、提供している「ダグラスの大剣・改」の調子はいかがでしょうか?」


「かなり使いやすいぞ、それに威力もあるし、メンテナンスもしやすい。クリスには感謝しているよ」


「ありがとうございます。それでは、開発スタッフにその旨を伝えます。次の新作武器の要望がありましたらお伝えください」


ヤマダ商会は勇者パーティーとスポンサー契約をしている。ダグラスには剣、マッシュには楯と言った具合だ。提供する武器、防具は一人一種類にしている。すべての装備品をヤマダ商会で賄ってしまうと他の商会と険悪な関係にもなるし、ダグラス達の楽しみを奪ってはいけないと考えたからだ。やっぱり、色々と装備を整えるのも楽しいからね。

基本的にダグラスも他のメンバーも満足しているようだ。

今もそれぞれのブースで、担当スタッフがメンバーに要望を聞いている。


「マッシュ様、次回作について要望はありますか?」


「力も付いてきたからもっと大きく頑丈にしてくれ。それで重量が増えても構わないから」


「分かりました」


リルとリラのレポートによると、マッシュは自分の役割を分かっているようで、「重戦士」のジョブを生かして、前線で攻撃を受け止めているそうだ。楯役に徹しているところは評価できる。


続いてマリアのブースに移動する。ここは開発スタッフだけでなく、販売担当のスタッフもマリアに群がっていた。マリアは聖母教会所属の「治療術士」で、青髪青目の聖女キャラの彼女だが、他のメンバーと契約内容が全く違う。

全ての装備品一式をヤマダ商会の製品にしてほしいとの要望があり、更に自分で売り上げた利益をキックバックして欲しいとまで言ってきた。それに「音爆弾」や「虹色の扇」などの自分では使用しないアイテムの販売も手掛けている。

資料によると並みの販売担当が太刀打ちできないほど売り上げを上げていた。


勉強熱心なスタッフが彼女に群がるのも頷ける。期待のアイリスも勉強の為に見学に来ていた。


「マリア様、私は販売担当スタッフなのですが、思うように成績が上がりません。秘訣があるなら教えてほしいのですが・・・・」


誰もが聞きたかったことを勇気を出したスタッフが尋ねた。スタッフ達の顔つきが変わった。

マリアは笑顔で答える。


「最初から売ろう売ろうとしてはいけません。まずは売りたい相手と友達になるんです。そして親身になって話を聞くんです。そして、その人にあった商品を提供する。例えば、貴族の貴婦人に槍を売ろうとしても売れませんし、逆に騎士団の騎士にアクセサリーなんかを売れるわけありませんよね」


言っていることはその通りだが、何か胡散臭く感じる。


「先月、「音爆弾」を100個販売した話なのですが、まず、お茶会などを通じて、レートランド王国の伯爵家の令嬢と仲良くなりました。彼女は領民のために何かしてあげたいという優しい方だったのですが、何をしていいか、分からないと私に言ってきました。こうなったらチャンスです。もっと詳しく聞きましょう。ここで大事なのが、「貴方の側にいるよ」というメッセージを伝える続けることです。問題を見付け、一緒に考え、解決していこうという同志的なポジションを確立するのです」


だんだん怪しくなってきた。


「彼女は言いました。『誘拐事件が多発して領民が不安になっている』と。こうなったらこっちのものです。彼女の悩みを解決できる商品を提供するのです。今回は「音爆弾」です。大きな音がするだけですが、防犯には最適です。

ただ、彼女は少し迷っていました。いくら伯爵家の令嬢といってもすぐに動かせる現金は知れています。なので、ここからが正念場です。私は彼女に言いました。

『100個の「音爆弾」すべてを貴方が買う必要はありません。もしそんなことをすれば、私が絶対に止めます。まず貴方の計画に賛同する3人のお友達を見付けるのです。そしてその3人のお友達がまた3人、そして3人と伝えていけばどうでしょう。一人2~3個の代金を出すだけになります』

とここまで話しましたが、常に貴方の味方というポジションをキープし続けることがポイントですね」


これはアレだ・・・・

アイリスも気付いたようで、小声で言ってきた。


「これってマルチですよね?」


「そうだね。日本でもマルチ商法自体は違法ではないし、そもそもこの世界にそんな法律はないだろうし・・・商会の会長として、私はどう対応したらいいのかなあ・・・」


「難しいですね。頭ごなしに駄目っていうのもちょっと・・・」


販売スタッフの中には真剣にメモを取ってる者もいるし、ある程度の対策は必要だ。

対策を考えていたところ、別のブースから大声が聞こえて来た。


「こんな卑猥な物を着させやがって、もう限界だ!!クリスを呼んで来い!!」


「そ、そんな・・・ちょっと・・・」


私はすぐにそのブースに向かう。大声を出していたのはリンダだ。

まあ、怒るのも頷けるが・・・

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