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【完結】絶対に私は勇者パーティーに入りません!!~勇者パーティーに入ればバッドエンド確定の不遇なサブキャラに転生したOLの生き残りを賭けた戦いが、今ここに始まる  作者: 楊楊
幕間 それぞれの思い

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37 魔女っ子バーちゃん

「先生、そろそろお願いします」


「うむ、ミレーユ、それで今日の予定は?」


声を掛けてきたミレーユはロトリア王国の宮廷魔導士団に所属している女で、黒髪のショートカット、小柄で眼鏡を掛けている。なんでもわらわにどうしても指導してもらいたいらしく、住み込みで、わらわの秘書のようなことをやらせておる。

見た目はパッとしない女じゃが、真面目でセンスがある。ムリエル王女からも「しっかりと指導してほしい」と言われておるし、期待されておるのじゃろう。



「9時にいつも通り、氷の橋を建設していただきます。午前中は学校での魔法指導、午後からは先生にアドバイスを受けたいという依頼がライラ様からありましたので、研究施設での業務となっております」


「分かった。では参ろう」


わらわはトレードマークの黒のトンガリ帽子を被り、黒のマントを羽織って、屋敷を出る。



研究中の事故に巻き込まれ、幼女の姿になって早100年、サンクランド魔法国の筆頭宮廷魔導士として威厳を保つため、特注のトンガリ帽子に黒のマントを身に付け、ワザと年寄りの話し方をしていたが、もうそれがデフォルトになってしもうた。


姫様の家出をきっかけに住み着いたムリエリアだが、200年生きて来たわらわにとっても初体験の連続じゃった。


「先生これを」


「うむ」


渡されたのは「吹雪の杖」で、氷結魔法の効率が2割アップするそうじゃ。わらわクラスになれば、杖など必要ないのじゃが、勤務中と公式行事にこの杖を身に付けているだけで、給料とは別に月に1万ゴールドを支給してくれるのじゃ。

月の給料が2000ゴールドだから、破格の待遇じゃ。

当初はこう思っておった。


こいつら馬鹿なのか?

わらわから杖の使用料を取るのが普通じゃろうに


しかし、姫様の説明を聞いて納得した。

どうやら、わらわは民達に人気があるらしく、わらわが杖を持って魔法を使うだけで、「吹雪の杖」の売り上げが上がるそうだ。そういえば姫様は「杖を2本売れば元が取れるのよ」とも言っていおったな。

杖については何の文句もないが、最近「魔女っ子セット」なるものが販売されていることは許せん。「魔女っ子セット」はわらわのトレードマークであるトンガリ帽子と黒のマントそれに「吹雪の杖」のレプリカを詰め込んだ商品なのじゃが、「魔女っ子セット」を身に付けた子供達が町に溢れているのじゃ。


これでは威厳を保つため、そして一目で「氷結の魔女」たるわらわと一般人にも分かるように、トンガリ帽子と黒のマントを常に身に付けている意味がないではないか!!

こっちは夏は結構熱いのを我慢して身に付けておるのじゃぞ!!


わらわが販売元に文句を言いに行ったところ、姫様がいたのじゃ。どうもここもヤマダ商会の系列店だったようじゃ。


「姫!!「魔女っ子セット」はもう売らんでほしいのじゃ。町はわらわと同じ格好の子供で溢れておる」


「ああ、そうね。大成功だわ。それに1セット売れるごとに5ゴールドずつバーバラに入ってくるからね。2セット売れば魔女っ子ランチが食べられるよ」


2セットで魔女っ子ランチが食べられる・・・・


「あっそうだ!!今ね、夏はその格好じゃしんどいだろうからって、「魔女っ子セット夏用」を開発してるんだよ。その開発に成功すればもっと売り上げが伸びるよ。帽子とマントに氷結魔法を付与しようと思ってるからバーバラも手伝ってね」


姫様の笑顔と金の力にわらわは屈してしもうた。



★★★


氷の橋の建設が終わり、学校に移動する。すぐに教え子が群がってくる。


「バーちゃん!!早くやろうよ」

「バーちゃんにもらった課題ができたんだよ。早く見てよ」


「お主ら!!せめて「先生」を付けろ!!」


元気があっていいのだが、わらわを友達か何かと勘違いしておるのではないのか?



それは置いておいて、生徒はセンスのある者も多い。それに祭りの効果じゃろうか、氷結魔法を極めんとする者が増えた気がする。祭りでわらわはアイスキャンディーなるものを販売した。果実水を客の目の前で凍らせてやるだけなのじゃが、これがかなりの売れ行きであった。

ヤマダ商会も夏に向けて本格的に開発に乗り出すようで、氷結魔法が得意な生徒にも声が掛かっておるそうじゃ。期間限定のアルバイトじゃが、報酬はいいらしい。


「夏までに氷結魔法を身に付けて、雇ってもらうんだ」

「私も」


現金な奴らじゃ。

生徒らにとっては、魔王を屠るような大魔法よりも日銭を稼ぐすべとなる魔法のほうが興味があるのだろう。


生徒達の指導を終えたところで、ミレーユが声を掛けてきた。


「先生、お昼はどうされますか?」


「そうじゃなあ。屋敷に戻るのも面倒くさいから、ヤマダ食堂で食べるとしよう」


注文するのは決まっておる。魔女っ子ランチじゃ。

魔女っ子ランチは、わらわがプロデュースしたメニューでお子様ランチの上位互換じゃ。


日替わりで、わらわが好きなおかずが入っており、お子様ランチより割高な分、デザートもおまけのおもちゃも充実しておる。

唐揚げ、エビフライ、オムライス・・・デザートはスライムゼリーか・・・そして一番のお楽しみのおもちゃじゃが・・・・なんだこれは!!


「おい、責任者を呼べ!!」


慌てた様子で店長がやってくる。


「どうされましたか?バーバラ様」


「どうしたも、こうしたもないわ!!お主はおまけのおもちゃを舐めておる。なんだこれは?小さなボールが一つだけではないか!!それに変に弾力があるし・・・」


「あっ「スーパーボール」でございますね。ライラ様の研究で失敗から生まれた材質に目を付けたクリス会長が考案した新商品なんですよ。ちょっと床に落としてください。私も初めて見たときにはびっくりしました」


そのボールはかなり反発力があり、強めに床に投げると天井に届くくらいの高さまで跳ね上がる。


これはこれで、面白い。わらわは自分の行動を恥じた。


「店長よ、すまなかった。いい物をもらった。開発したライラに褒美をやりたい。クッキーを少し包んでくれ」


本当にこの町は驚きの連続じゃ。わらわの知らん物がどんどんと誕生する。



★★★


研究室でライラの研究データを解析する。わらわの予想したとおりのようだった。


「ライラの足自体は治っておる。問題は足に魔力が上手く流れておらんようじゃ。クリストフ、ライラにごく弱い身体強化魔法を足にだけかけてやれ」


クリストフがライラに身体強化魔法をかける。


「動かしてみよ。どうじゃ?」


「先生凄いです。スムーズに動きます」


「地道にやれば、いずれ完治するやもしれんな。クリストフ、しっかり支えてやれ、ライラは足に今の感覚を覚え込ませるのじゃ」


クリストフはライラに付きっきりでいる。ライラは満更でもないようじゃ。後は若い二人に任せて、わらわは立ち去るとしよう。


クリストフが姫様に惚れているのは知っておる。まあ、知らん奴はおらんじゃろうが。しかし、コイツもまだ若い。少し姫様離れもさせんとな。

その上で、姫様と結ばれるか、それともライラか・・・神のみぞ知るところであろう。



こんな形でわらわの忙しい1日は過ぎていく。

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