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【完結】絶対に私は勇者パーティーに入りません!!~勇者パーティーに入ればバッドエンド確定の不遇なサブキャラに転生したOLの生き残りを賭けた戦いが、今ここに始まる  作者: 楊楊
幕間 それぞれの思い

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35 姫ちゃんの業務日誌 3

対岸の町は「ムリエリア」という町で急ピッチで発展しているようだった。ヤマダ商会の本店もすぐに見付かった。一応、ヤマダ商会の評判を確かめてみる。付近の人にそれとなく聞いたが、凄くいい商会ということが分かった。良心的な価格でいい品を提供し、従業員の待遇もいいそうだ。


多分いい人だと思うんだけど・・・


私は、ヤマダ商会の本店に赴き、そこの女性店員さんに声を掛け、会長に面会したい旨を伝えた。


「申し訳ありませんが、会長は多忙な身でして、アポがないとお会いできません。面会理由などをこちらに記載してくださいましたら、後日連絡をさせていただきます。旅の方とお見受けしますが、宿をご入用でしたらこちらでご紹介を・・・・」


「お主、わらわ達を舐めておるのか!!いつ来るか分からん連絡を待てだと!!こっちもそんなに暇ではないのじゃ。礼儀も知らんたわけ者め」


バーバラ、いきなり得体の知れない3人組が来て「会長に合わせろ」なんて言われたら、普通は断られるよ。


「バーバラ、このクラスの会長さんだと忙しいし、すぐに会えないのが普通だからね。

店員さん、面会希望の用紙を貸してください。記入しますので」


「しかし・・・こんな態度を取られたからには、御父上に・・・・」


店員さんも困っている。


「我儘なものですいません。言って聞かせますから、お気になさらず」


「ちょっとお待ちください。すぐに会えるかどうか確認してきますので・・・

そちらも大変ですよね。我儘な上司に仕えると大変だということはよく分かりますから」


店員さんの目には、私とクリストフが、我儘なお嬢様にお仕えする従者達と映ったのだろう。同情の眼差しを向けられた。


結局、面会できることになった。ヤマダ商会の会長さんはクリスさんという妙齢の女性で赤い髪と赤い目が特徴的な美人さんだった。そして、ちょっと会話して分かったのだが、予想通り、日本からの転生者だった。それにこの世界は大人気RPGゲームのFFQ4の世界だと教えてもらった。それに私は勇者パーティーに入る可能性もある準主人公だそうだ。どおりで、戦闘ばかりさせられるのか。


クリスさんは日本にいたときは、山田琴音という33歳の女性で、誰もが知る大手商社に勤務するバリバリのキャリアウーマンだった。その知識と経験を武器にヤマダ商会を瞬く間に一流商会に押し上げた。まさにできる女だ。

就職さえまともにできない私には雲の上の存在のように思える。


クリスさんは話していると凄く気さくないい人で、私はヤマダ商会で働きたくなった。

クリスさんにお願いしたところ、面接をしてくれることになり、多少のトラブルはあったが、無事に採用されることになったのだ。

面接のときのクリスさんの言葉は就職活動が失敗続きで、自信をなくしていた私には有難かったなあ。


「もっと自信を持ってください。自分を飾らなくてもいい。商会のために頑張ってくれるなら採用します。いえ、是非採用させてください」


今思えば、私が初めて「ここで働きたい」と思える職場だった。就職活動をしているときは、「それなりに名前の知れた会社ならどこでもいい、休みと給料が多ければ」と思っていたが、そんなんだから失敗して当然よね。


せっかく就職できたからには、私もお仕事頑張ろう!!



★★★


商会での仕事は楽しかった。最初は研修ということで色んな部署を転々とした。私はコンビニやファミレスでバイトをしたことはあるので、それなりに接客はできた。私が頑張っているとクリスさんがアドバイスをくれる。


「簡単な仕事ばかりさせてるけど我慢してね。研修では仕事を覚えるよりも、みんなにアイリスを覚えてもらうことが大事だからね。だから、すべての部署を回ってもらうようにしてるんだ」


クリスさんが私を大切に育てようとしてくれていることが嬉しかった。


また仕事扱いで、週に2~3回、商会が運営している子供向けの学校で、簡単な計算を教えている。商会の社会貢献事業の一環で、将来の商会員の育成や才能ある子供達の発掘が目的だそうだ。すぐに回収はできないが、後々大きな利益を生むとクリスさんは言っていた。

まだ、その辺の事情はよく分からないけど、学校で教えるのは楽しかった。


「姫ちゃん先生!!ここはどうするの?」

「できたよ、姫ちゃん先生」


子供達からは「姫ちゃん先生」と呼ばれている。元々が姫子だけに違和感はない。実際に仲のいい友達からはそう呼ばれていたし。


「バーちゃん先生!!今日は何するの?」


わらわを年寄りのような呼び方で呼ぶな!!」


バーバラも魔法の才能がある子供に初級魔法を教えている。見た目と話方にギャップがありすぎるので、よく子供達にからかわれている。


「もっと繊細に魔力をコントロールするのじゃ。そうじゃ、いいぞ。

おい、そこ!!集中力を切らすな!!」


でも、教えることはきっちり教えているようだ。




★★★


今日は管理部で研修をする。

研修の担当者から説明を受ける。


「ここでの研修は1日だけだから、資料を見て自習してください。会長からは後日、自習した内容をレポートにまとめるようにと指示を受けています」


まあ、そうなるよね。帳簿を付けるのもある程度経験が必要だし、1日の研修なら、教えてるうちに終わっちゃうしね。まあ、適当に資料でも見ようか。


だが、この資料が凄かった。ビジネスのエッセンスが盛り込まれていた。ヤマダ商会が最初に手掛けた事業は武器の販売ビジネスだった。これが驚愕だった。勇者パーティーやムリエル王女に武器や防具を無料提供して、プロモーションするというものだった。


なるほど、スポーツ選手や芸能人とスポンサー契約するビジネスモデルをこちらに持ち込んだのね。それに購入特典で、ムリエル王女から直接指導されるなんて・・・これはCDを買ってもらった人限定の握手会みたいなものかな。


私はこのことをレポートにまとめた。自分ならこうするとかの意見も書いた。提出してしばらくしてクリスさんに褒められた。


「よく分かっているね。こっちの世界の人はそういう概念があまりなくてね。説明するのに苦労するのよ。リルとリラなんて、未だに理解してるかどうか分からないし。だからアイリスには期待してるからね」


尊敬している先輩に褒められ、本当に嬉しかった。



★★★


今日の仕事は、グレートボアの討伐と素材の回収だ。

強くなっても、魔物の討伐とかは好きになれないけど・・・・それでもカツカレーや豚骨ラーメンを作るためには絶対に必要な仕事だ。クリスさんが言うには、グレートボアを農場で飼育しようと試みたことはあったけど、断念したみたいだ。

今も一緒に来ていた警備隊の人が、ボロボロになりながら戦っているところを見ると、流石のクリスさんが飼育を諦めたのも頷ける。あれを飼育するのなんて、命がいくつあっても足りない。


私はクリスさんの言葉を思い出す。


「嫌な仕事や苦手な仕事ほど、すぐに片付けること。後回しにすればするほど、仕事は溜まっていくわ。だから、気合を入れて一気にやり切るのよ」



私は3匹のグレートボアに向かって剣を構える。3匹のグレートボアは、警備隊の人を追い回していて、全く私に気付いていない。


「疾風剣!!」


私は駆け抜けるようにして、グレートボアの首を切り落としていった。討伐と同時に血抜きもできて一石二鳥だと思い考え付いた戦法だ。

すぐに短剣に持ち替えて、足を切り落とし、内臓を取り出し、皮をはぐ。


「グレートボアを一瞬で・・・・凄すぎる」

「流石は「疾風の切り裂き姫」だ」

「あんなに鬼気迫る様子で解体している人を初めて見た。まさに「血塗れの切り裂き魔」だな」


かなり引かれているのは気のせいだろうか?

それに「疾風の切り裂き姫」はまだ分かるけど、「血塗れの切り裂き魔」は酷すぎる。こっちだって好きでやってるわけじゃないのに・・・・


そういえば明日はポーシャさんとライラさんと一緒にシュークリームの試作品を作るんだった。今から楽しみだ。


嫌な仕事はササっと片付ける。私は更に解体の手を早めた。

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