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【完結】絶対に私は勇者パーティーに入りません!!~勇者パーティーに入ればバッドエンド確定の不遇なサブキャラに転生したOLの生き残りを賭けた戦いが、今ここに始まる  作者: 楊楊
第二章 クリスさんの異世界細腕繁盛記

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29 人手不足解消 4

「プロテスト・・・プロテスト・・・・プロテスト・・・・」


サマリス王子が唱えているのは、ジョブに関係なく習得するサマリス王子の固有魔法「プロテスト」だ。単純に自分を含めた味方の防御力を上昇させる魔法で、非常に使い勝手がよく、重ね掛けすればほとんど物理攻撃によるダメージを受けなくなる。ゲームで言えば、マックス掛けすると、受けるダメージは1~2だ。

サマリス王子も地獄のレベル上げを潜り抜け成長しているのだろう。

余談だがサマリス王子はガラスの勇者と呼ばれるほど防御力が低く、装備できる防具も少ない。製作者サイドからすれば、「プロテスト」はサマリス王子に対する救済措置だったのかもしれない。


しかし、この「プロテスト」のお陰で別の使い方をするプレイヤーが現れた。主人公なのに「プロテスト」しかサマリス王子に使わせないのだ。武器や防具は他のメンバーに優先的に渡されるので、残り物の武器防具を纏い、ひたすら後方で「プロテスト」を唱えさせられるのだ。まるで、奴隷のように・・・・。

小学生のとき、「お前なんか、後ろで「プロテスト」でも唱えてろ!!」と怒鳴る奴がいたが、それはこのことに由来する。

不遇な運命を歩んだクリスに転生した私としては、少し親近感の湧く人物なのだ。


その辺は置いておいて、ドーラはハンマーでサマリス王子を滅多打ちにしている。しかし、全くダメージが入っておらず、サマリス王子は恍惚の表情を浮かべている。


「ああ・・・程よい刺激がたまらない・・・」


サマリス王子を以前、恐喝しようとしたリルとリラは言う。


「会長、あれは間違いなく変態の目です」

「ヤバいです・・・寒気がします」


私もそう思う。


ドーラは肩で息をし始めた。それでも殴るのを止めない。しばらくすると今度はハンマーが砕け散った。


「もう気が済んだだろ?私の話を聞いてくれないか?」


「うるせえ!!」


ドーラは今度は両手の拳でサマリス王子を殴り始めた。ハンマーでほぼ無傷だったのに拳では無理だろう。案の上、ドーラの拳は血塗れになっていた。それでもドーラは殴るのことを止めなかった。

サマリス王子はニヤニヤしているが、ドーラは逆にフラフラだ。


どうしてここまでするのだろうか?


私が疑問に思っていると、ドーラは涙を浮かべて、膝から崩れ落ちた。そして、今度は地面を叩きながら叫ぶ。


「どうしてアタイはこうなんだ!!普通に生きたいだけなのに!!」


しばらくドーラは泣き叫んだ後、うずくまってしまった。そこにサマリス王子が近寄って、ドーラを優しく抱き上げる。そして、回復魔法を掛ける。


「大分落ち着いたようだね。とりあえず、今後の話をしようか」



★★★


ドーラから話を聞く、まずは暴動についてだ。


意外なことにドーラは捕まったことを機に更生しようと思っていたらしい。それで、すべてを自白するから、手下達とは別の刑務所に収容して欲しいと申し出たそうだ。しかし、蓋を開けてみれば、ドーラ一家は全員この刑務所に収容されてしまった。

そうなると当然、ドーラ一家は刑務所を牛耳ってしまう。ドーラが指示しなくても他の囚人を配下におき、看守まで買収してしまう。

最初は、バレないように慎重にやっていた手下達も行動がエスカレートして、看守の大半を取り込んでしまったようだ。しかし看守の中にも正義感が強い者達がいて、その者達が隙をみて、騎士団に駆け込み、刑務所の実体が判明してしまう。


この時点では大した犯罪は起きていない。物品の横流しや酒やタバコ類の持ち込みぐらいだったそうだ。まあ言ったら悪いが、こんなこと多少はどこの刑務所でもあるみたいで、事情を知ったドーラは手下に「正直に話せ、どうせ懲罰房にしばらく入れば、終わりだ」と指示したそうだ。

しかし、ドーラ達囚人はそれで良くても、看守は別だ。このことが公になれば自分達も犯罪者になってしまう。買収されていた看守の中には幹部はおろか、所長までいたそうだ。

それに所長以下の幹部達は不正蓄財をはじめ、様々な犯罪に手を染めており、今回の件で調査が入るとすべてが露見してしまうことから、ドーラ達に罪を擦り付けようとしたのだ。


買収に関与した手下達は、懲罰房に連れて行かれ、口では言えないような拷問を受け、やってもいない犯罪を自供する調書を作成される。

これにブチギレしたドーラは暴動を起こすことになった。所長や悪事に加担していた看守達を東の塔に監禁したのだ。そして数日後、刑務所内で暴動が起きていることを認知した騎士団に包囲されたというわけだ。


私はドーラに尋ねる。


「看守達を監禁した後、どうするつもりだったの?」


「まずは、看守達の悪事の証拠集めだ。それを元に交渉するつもりだったんだ。思ったより早く暴動を起こしたことがバレちまって、予定が狂ったのさ。騎士団に囲まれた後も証拠集めを続けてたけど、こっちは帳簿が読める奴はほとんどいないから、時間がかかったよ」


ドーラが集めた証拠を確認する。すべて確認していないが、間違いなくクロだった。


「騎士団にそのことは言ったの?」


「言ったけど、取り合ってくれなかった。『人質を解放して、投降しろ』としか言われなかったよ。それはそうだろう。天下の騎士団がすぐに暴動を起こした囚人達と交渉するわけない。だから、なるべく時間を稼ぎ、もしものときのために逃走用のトンネルを掘らせたりしてたのさ。下手したら口封じで全員消されてもおかしくないしな。

それで、そろそろ騎士団もじれて来る頃だと思って、本格的に交渉する準備をしてたら、いきなり正門がドカーンだろ?本当にツイてないよ・・・・」


ここまでの話を聞いたところ、ドーラは戦闘力だけでなく、統率力を含めた管理能力もある。別の人生を歩んでいたら将軍にでもなっていたかもしれない。


どうして、ドーラはこうなったのだろうか?


「貴方がこれまで、どんな人生を送ってきたか教えてくれないかしら?」


ドーラが語る半生は、こうだった。


ドーラはランカシア帝国で生まれ育った。魔族とのハーフだったドーラは、かなり差別を受けていたという。しかし、ある程度成長したドーラは体も大きくなり、力も強くなった。今度は仕返しとばかりに差別してきた連中を叩きのめしていったそうだ。

次第にドーラの周りには亜人や獣人だけでなく、様々な人が集まるようになった。ドーラ自身、積極的に悪事を働こうと思ったわけではないらしい。ドーラを頼って来た人達を助けているうちになぜか犯罪者組織の親分になっていたそうだ。


ドーラは下の者から頼られると放っておけない性分らしく、あるとき敵対組織に捕まって拷問されていた子分を奪還しに敵対組織に乗り込んだのだが、その組織は有力貴族ともつながりがあり、調子に乗った子分達は、その貴族も襲撃してしまったらしい。それが元で帝国には居られなくなり、各地を転々とするようになったそうだ。


「いつもそうさ、困っている人を助けてるつもりが、いつの間にか悪い方へ悪い方へ流れていくのさ。もう疲れたよ」


サマリス王子にあそこまで、突っかかっていたのも、自暴自棄になってのことだという。みんなドーラに同情している。ドーラの話を聞く限り、アイリスと同じようにこの世界の大いなる力に翻弄されていると思う。


「私達もハーフだから・・・気持ちは分かるよ」

「ドーラが可哀そう」


リルとリラは、同じハーフとして同情的だった。しかし、ライラは違った。


「どんな理由があるにせよ、孤児院の子供達を奴隷にして売りさばこうとした貴方を、私は許さないわ」


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