137 エピローグ 3
気が付くと見知らぬ部屋のベッドに寝かされていた。隣のベッドには見知らぬ女性が寝ている。私が起き上がると隣の女性も起き上がった。
「失礼ですが、ここはどこでしょうか?自室にいたら急にこのベッドで寝ていたのですが・・・・」
「私もです。上司の部屋で飲んでいたら急に・・・昔話に花が咲いていて、飲み過ぎたのかな?」
「あれ?もしかしてアイリス?全然姿が違うけど・・・」
「クリスさんですか?クリスさんも全然、姿が違ってます。もしかしたら・・・」
状況から考えて、多分ここはFFQ6の世界だろう。鏡で確認したけど私とアイリスはどうやら、その中のネームドキャラに転生してしまったようだ。事情を説明するとアイリスが言う。
「また、転生ですか?これってバーバラを探せってことですかね?」
「うーん・・・どうなんだろう?」
そんな話を話をしていると部屋に美少女が入って来た。
「どうやら、起きたようじゃのう?森で倒れていたところを保護してやったのじゃ。感謝すると良いぞ」
美少女は10歳前後の幼女で、赤いベレー帽に赤のマントを纏っていたが、バーバラにそっくりだ。こんなに早く再開できるなんてツイてるな。
アイリスはというといきなりバーバラにそっくりな少女に抱き着いていた。
「バーバラ!!会いたかったよ。何も言わずにいなくなっちゃうなんて酷いよ」
いきなり抱き着かれたバーバラそっくりの美少女は困り顔で言う。
「妾はバーバラではない!!人違いじゃ!!」
「そんなの嘘だ、絶対にバーバラよ」
そんなやり取りをしていたところにベビタンに良く似た悪魔がやって来た。
「貴様!!無礼にも程があるぞ!!今すぐ離れろ。こちらは高名な魔女ベローニャ様だ。世間では「灼熱の魔女」として尊敬されているのだ」
私はその悪魔に言う。
「それは失礼しました。ところで貴方はベビタン?実は私、ヤマダ商会の会長のクリスなんだけど、覚えてる?どういうわけか、こっちの世界に転生したみたいなのよ」
その悪魔は驚きの表情を浮かべて言う。
「クリスさんってあのクリスさんですか?鞭を振り回して魔物達をボコボコにし、アークデーモンを騙してこき使う、あの危険なクリスさんですか?」
「ツッコミどころはたくさんあるし、不本意だけど・・・それであってるわ」
「わー!!会いに来てくれたんですね!!僕も会いたかったです」
「それでこっちがアイリスの生まれ変わりよ」
再会を喜んだ後、ベビタンから事情を聞く。
ベビタンによると無理やり、輪廻の輪からバーバラの魂を奪い取り、こちらの世界にバーバラを転生させたらしい。
そのときの反動でバーバラは記憶を失ってしまったようだった。そして、転生した先は高名な魔導士の娘で、なぜか100年以上この姿のままでいるそうだ。家族は全員亡くなっており、今はベビタンと二人でひっそりと暮らしているようだった。
「そうか・・ベビタンが言うのならそうなんじゃろう。全く記憶にないがな」
「ところで何で「灼熱の魔女」なの?前の世界では「氷結の魔女」だったのに」
「それはですね。僕はバーバラ様を転生させたときに力のほとんどを使い切ってしまって、唯一使える攻撃魔法がファイアボールだったんです。それをバーバラ様にお教えしたのですが、それ以外は教えられなかったのです。だからバーバラ様は当初、火魔法だけを極められたのですよ。もちろん、火魔法以外も使えますが、火魔法の威力が絶大なので「灼熱の魔女」と呼ばれるようになったのです」
「全くの逆ね。面白いわ」
そんな話をしていると一人の少年が部屋に飛び込んできた。慌てた様子で言う。
「魔女様!!大変です!!村に魔物の大群が来て・・・魔女様に知らせてこいって・・・・とにかくヤバいんです」
又しても厄介ごとに巻き込まれるのか・・・・
FFQ6はサブタイトルが「楽園の花嫁」だ。これは主人公が自分の結婚相手を選ぶという斬新な設定で、私とアイリスは、ともに花嫁候補のキャラなのだ。ベビタンとの会話などから推察するに私とアイリスは既に花嫁候補から外れている状況のようだった。
これは非常に拙い状況だ。というのも花嫁とならなかったキャラは、不遇な人生を歩むことになる。つまり、ゲームの設定では私とアイリスの不遇な人生は決定しているのだ。「楽園の花嫁」をもじって、ネット界隈では、花嫁に選ばれなったキャラ達を「地獄の元花嫁候補」と揶揄されているのだ。
でもそんなことは言ってられない。とりあえずステータスを確認すると十分戦える。アイリスにも確認するように指示した。私は棍棒を振り回すバーサーカータイプ、アイリスは前と同じ剣士タイプだった。ギーガの隣で散々見て来たし、それにオーガスティン領では棍棒が使えない嫁なんて駄目だと言われる風潮があり、これでも人並み以上には使えるのだ。
ベビタンが青ざめて言う。
「僕はどうしたら・・・格はデーモンロードのままですが、力は回復してないので、最下級のベビーサタンとほとんど変わりません。そんな・・・魔物の大群なんて・・・」
私はベビタンに言ってやった。
「落ち着いてベビタン!!それでもデーモンロードなの?私達に任せてよ」
「クリスさんの言う通りです。滅多斬りにしてあげるわ。そうよねバーバラ・・・じゃなかったベローニャ?」
「うむ、妾が焼き払ってくれようぞ」
少年の案内で村に向かう途中、魔物と出くわした。戦闘が始まる。そして棍棒を構え、怯え切った少年に私は言う。
「大丈夫よ。だって私達は、これでも世界を救ったことがあるんだからね!!」
これで、この物語は終了となります。ここまで読んでいただきありがとうございました。気が向いたら続編や後日談を書こうとは思いますが、今のところ予定はありません。よろしければ新作のこちらをご覧ください。
「勇者パーティーの船長~功績を上げて軍隊で成り上がったら、勇者パーティーの船長になりましたが、メンヘラ勇者に振り回される地獄の日々が始まってしまいました」
https://ncode.syosetu.com/n6494jj/
今作と同じ不遇なサブキャラを主人公としていますので、今作を気に入ってもらえた方ならば、楽しんでもらえると思っております。




