136 エピローグ 2
アイリスこと綿矢姫子との再会を果たし、就業後、歓迎会が開かれた。酔った佐藤君が絡んできてウザかったけど、適当にあしらった。そして、私はアイリスを自室に誘った。
「アイリス、会いたかったよ!!これから部屋飲みしようよ。積もる話もあるし」
「もちろんです。クリスさん」
酔った勢いもあり、私とアイリスは抱き合っていた。
佐藤君が呟く。
「山田課長はソッチだったのか・・・だったら俺が入り込む余地は・・・」
違うからね!!
佐藤君を無視して、私はアイリスを自宅に招いた。
二人で缶ビールを空ける。話は尽きることはなかった。アイリスも死後、いつの間にか日本に戻っていたようで、それから就職で我が社に入社したようだ。
でも、メインはやっぱり恋バナだったけど。
「アイリスがライアットと結婚するなんて予想外だわ。全国のクリストフ、アイリスカップルを応援していた人が聞いたら涙を流すわよ」
「私も予想外でしたよ。あの事がきっかけだったのは確かですね。年下だけど、しっかりしてて、私を支えてくれましたから・・・」
あの事は私もアイリスも触れたくないようで、言葉を濁して話した。
「そんなクリストフも結局ミレーユと結婚しちゃったしね」
「そうなんですけど、『私達の夢を!!』とかクリストフとミレーユが言い出して、二人の長女もぐいぐい来る女の子で、ウチの次男と結婚しちゃいましたけどね」
「結婚式のとき、大泣きしているクリストフ夫妻とドン引きのアイリスとライアットを見たら、吹き出しそうになったんだから」
「恥ずかしいからやめてくださいよ。でも、それを言ったらクリスさんだって・・・本当にびっくりしたんですからね」
そう、私はギーガと結婚してしまった。ギーガは私が教えたとおりに動いていたようで、父のロレーヌ伯爵もロトリア王も主人公の三人も丸め込まれ、外堀が埋められてしまっていた。周りから攻めるのはビジネスの鉄則だからね。
気付かぬうちに外堀を埋められてしまったことは、本当に不覚だった。
「でも結婚してよかったでしょ?優しいし、それにいつまでもラブラブで」
「そうね。ギーガの味を覚えたら、こっちで結婚なんてできないわ。ギーガの棍棒はそれは立派で・・・」
「クリスさん!!下ネタになってますよ」
いかんいかん、親父化してきている。
話を戻そう。
「サマリス王子とドーラの結婚式もよかったわね」
「そうですね。種族の違い、それも王族、ましてやドーラは囚人でしたからね」
「でも最後の「棍棒受け」はどうかと思うのよ。『ドーラの愛を受け止める』とか言ってさ。あの後、オーガスティン領でも大流行して、結婚式の度に怪我人が続出したから、禁止の法律まで作ってさ」
「でも、「棍棒受け」用のソフト棍棒を売り出したところは、流石はクリスさんだって思いましたよ」
話は尽きないし、お酒も進む。流石に飲み過ぎた。
そんなとき、アイリスが突然泣き出した。
「ウッウッ・・・バーバラ・・・会いたいよ。突然逝っちゃうなんて、そりゃあないよ。お礼もお別れも言わせてくれないなんて・・・酷いよ。ずっと側に居てくれると思ってたのに・・・」
あの事だろう。
私も予想外の出来事だった。
エジル討伐から3年後、バーバラは世を去ることになった。それも突然に。
ステージを終えた後、眠るように旅立ったのだ。発見したのはベビタンだった。いつも側に居たからね。旧友のハイエルフのディートが言うには、肉体自体が限界を迎えていて、いつ死んでもおかしくない状態だったらしい。
「バーバラに口止めされてたんだ。これは遺書だよ」
遺書にはこう記されていた。
「この遺書を見付けたとき、妾はもうこの世におらんじゃろう。
でも悔いはない。研究室に引きこもり、死を待つだけの人生じゃったが、姫様と旅に出てからは、これまでの200年の人生がこのときの為にあったと思うくらい輝いておった。胸躍る冒険やステージの上から熱狂する観客を見れば、本当にここまで生きて来てよかったと思う。姫様、本当に感謝しておりますぞ。
別れを言えない状況になるかもしれませんので、この遺書を残しておきます。
湿っぽいのは嫌いなので、笑顔で見送ってくだされ。
なんたって、妾は永遠のアイドルスターじゃからな。
最後にベビタン、好きに生きよ。もうお前は立派な大悪魔じゃからな。願わくば、世のため人のために生きて欲しい」
突然の訃報に多くの者が泣き崩れ、アイリスは見たことがないくらい取り乱していた。結局、葬儀を取り仕切ったのは、ライアットで、そのことがきっかけでアイリスとライアットが結ばれたのだけど・・・
葬儀の後、遺体を埋葬しようとしたところで、ベビタンが突然現れた。
「皆さんすいません!!どうかお許しください。バーバラ様は僕が何とかします。それにはその御遺体が必要なんです。では、失礼します。もう会うこともないでしょう・・・クリスさん、本当にお世話になりました」
そしてあろうことか、ベビタンはバーバラの遺体を奪い取り、消え去ってしまった。何十年も前の出来事なのに今でも鮮明に覚えている。機転を利かせたライアットがバーバラの遺体が入っているように偽装して、棺を埋葬したのだけど、あの後どうなったのだろうか?
「アイリス・・・辛かったね・・・絶対バーバラはどこかで元気にやっているよ。ベビタンを信じようよ」
「そうですね・・・気持ちに整理をつけたつもりだったんですが、クリスさんと再会して気持ちが高ぶってしまいました。もう大丈夫です」
落着きを取り戻したアイリスに言う。
「そうだ!!実はFFQ6にバーバラとそっくりのキャラが登場するのよ。名前は違うけど、ベビタンぽい悪魔を連れているし、もしかしたらバーバラの子孫か、生まれ変わりかも?ってファンの間では言われているのよ。ちょっと見てみる?」
「そうですね、はい」
私はゲーム機にFFQ6のディスクを入れて、スイッチをオンにした。
すると突然意識が無くなってしまった。
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