134 最終決戦 2
エジルが最終形態に変化した。
ゲームでも普通にやれば、かなり苦戦する。でも裏技があるのだ。
ゲームでは最終形態に変化した後の3ターンは攻撃してこない。
「蚊でも刺したか?そんな攻撃効くわけがなかろうが!!」
と言って余裕ぶって見せるのだ。しかし、レベルを上げ、このときに全戦力を集中してしまえば、3ターン以内に倒しきることは可能だ。レベルの目安としては50位だったと思う。私はもうレベル50に達しているので、単騎での討伐も可能だ。ゲームならという注釈がつくけどね。
「まず私が行きます。それで様子を見ましょう」
私はエジルの前に歩み出る。
ゲームで見たエジルもグロかったが、実物を見ると本当にグロくて禍々しい。グールを潰して人型に作り替えたような感じだ。言葉では表現できない。
「どうした、怖気づいてたか?早く掛かってこい」
「言われなくても行くわよ!!
「アルティメットウィップ」、「分身の術」、「剣の舞」!!」
「アルティメットウィップ」は勇者にしかできない最強スキルだ。ダグラス大公だと「アルティメットソード」だったと思うけど、魔力を大量消費して、大ダメージを与える。私の場合はなぜか鞭技になっているのはよく分からないけどね。
これに攻撃回数を増やすスキルを重ね掛けする。多分、限界まで攻撃を放てば、倒せるだろう。たとえ倒せなくても、後は皆が何とかしてくれる。
最強スキル「アルティメットウィップ」を纏わせた両手の鞭で、エジルを滅多打ちにする。エジルはゲーム通りのセリフを吐く。
「蚊でも刺したか?そんな攻撃効くわけが・・・・グギャアー!!」
効いている。
私は一気に魔力を込め、攻撃を加速させる。次第に手が上がらなくなり、分身も解けた。どうやら魔力切れのようだ。私はその場に膝をついた。
すぐにギーガが駆け寄って来て私を抱きかかえた。
「クリスさん!!大丈夫ですか?すぐに避難を!!」
リルとリラもやって来て、ギーガをサポートしてくれた。
しばらくして、周囲を見回すと、大量に居たアンデットモンスターは消滅し、エジルはうめき声を上げている。
「無念だ・・・もう輪廻の輪に・・・」
そう言って、光となり消滅した。今度は本当に消滅したと思う。
みんなが私に駆け寄る。
ピエールが言う。
「エジルの気配はもうない。我々の勝利だ。礼を言う」
動けない私をギーガが中心となって介抱してくれていたが、他のメンバーは付近を探索していた。そしてアイリスが、大聖堂に張っていた障壁を発生させる魔道具を発見していた。
「これどうしましょうか?壊してもいいですかね?」
「とりあえず壊しましょうか?残骸は研究者が喜びそうだから持って帰りましょう」
そう言うとアイリスは魔道具を一刀両断にした。感覚的にだが、少し空気が良くなった感じがした。多分障壁が解けたのだろう。
「じゃあ、胸を張って帰りましょうか?」
これにリルとリラが反論する。
「お宝を探しましょうよ。余裕で勝ったんだから」
「そうです。大金持ちへの道です」
ゲームでは、クリスがこの後に行方不明になる。だから私は、二人に言った。
「それは後でマリシア神聖国が冒険者でも雇って探索すればいいでしょ?私達はまず、生きて帰ることを優先しましょう。追加でボーナスを出してあげるから」
お宝に目がくらんで、ダンジョンが崩れ、生き埋めになるなんて笑えない冗談だ。
リルとリラも渋々納得する。
★★★
帰りはモンスターは出なかったし、リルとリラのマッピングも完璧だったので、行きの3分の1の時間で大礼拝堂まで帰ってこれた。そこにはバーバラやムリエル王女を筆頭に多くのメンバーが待機してくれていた。
「帰って来たぞ!!姫様達は成し遂げたのじゃ!!」
バーバラが歓喜の声を上げる。
もうここまでくれば大丈夫だ。私は生き残ったのだ。
ここまで、頑張って来た甲斐があった。最初は勇者パーティーに入らないように努力したけど、結局は最後のボスを討伐してしまった。結果オーライだ。ここからは「クリスさんののんびり異世界ライフ」が始まるんだ!!
しかし、最後の最後までシステムの修正力が私を許さなかった。最後尾を歩いていた私の足元の床に亀裂が生まれ、私はその中に転落してしまった。
結局こうなるのか・・・でも、もういいか・・・私一人の犠牲でこの世界に住む多くの人が幸せになるのなら。それに本当にこっちの世界に来て充実していたしね。悔いは・・・ないことにしよう。
落下しているとき、なんと私にギーガとリルとリラが抱き着いてきた。私を心配して咄嗟の行動を取ったのだろう。私と一緒に彼らが死ぬことはないのに・・・・
そうか!!システムの修正力はこれを機にここに居てはいけない存在のギーガやリル達も一緒に始末しようと考えているのか?
そうなるとドーラやピエール、ミザリーだって危ないじゃないか!!
こんなところで死んではいけない!!私が救わなければ!!
でも、もう無理だよね。ごめんね、ギーガ、リル、リラ・・・・巻き込んじゃって。
私は静かに目を閉じた。
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この後、しばらく後日談が続きます。




