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131 決戦準備

主要な都市の解放は成功した。

まだ解放されていないのは辺境の町や村がほとんどで、解放に大部隊を派遣しては効率が悪すぎる。なので、鳥人族の部隊やタツメに少数の精鋭部隊を空中搬送してもらい、残っているアンデットモンスターを殲滅する作戦に切り替えた。今日もアイリス、バーバラ、クリストフのパーティーとダグラス大公、サマリス王子、ムリエル王女、ケルビンのパーティーが出発して行った。


アイリスは「久しぶりに三人で活動ができて嬉しい」と喜んでいるし、ムリエル王女達も仲が良さそうで、ダグラス大公の闇落ちの心配もないと安心している。

そんな中、私はほとんど外に出られずに書類仕事に追われている。

というのも難民の受け入れや各都市の支援など、仕事は山のようにある。本来はマリシア神聖国がやるべきことだが、こちらも人が足りていない。仕方なくできる範囲で手伝っている。


そんなとき、ベビタンが青ざめて私を訪ねて来た。捕虜にしている悪魔達がいるので念のため、ベビタンはここから離れられない。


「クリス会長、少しよろしいでしょうか?」


「いいけど、どうしたの?」


「もう限界です。これ以上は・・・・」


ベビタンが言うにはストレスで押しつぶされそうらしい。

最下級のサタン級の悪魔なのに最上級のデーモンロード級のフリをしなければならず、いつバレるか気が気でないようだった。


「こちらにいる間はバレても契約があるので何とかなりますが、魔界に帰ったら、絶対に酷い目に遭わされます」


「こっちは何も言ってないし、あっちが勝手に勘違いしたことなんだから、放っておけばいいんじゃないの?」


「それで納得する連中だと思いますか?」


「それはそうね・・・でも今の状況で正直に言ったところで許してくれるはずもないしね。だったら本当に位を上げてみるとかはどう?せめて同格のアークデーモンになれば、いいんじゃないの?」


「そう言われましても、今のままでは5年は掛かります。エジルを討伐できれば、その分のポイントも入りますので、3年ほどに縮まりますけど・・・・」


「とりあえず、悪魔達との契約とポイントの計算方法を確認させてもらえる?」


ベビタンが魔法で出した契約関係の書類やポイント表を確認する。ベビタンが訳しながらなのでかなり時間が掛かった。面白いのは、ポイントとして加算されるのは、悪魔っぽい、寿命や魂の他に善行や信仰といったものもあった。


「悪魔も昔は天使と同じ扱いだったそうで、その名残だと思います。現在のところ、ポイントの稼ぎ頭はアークデーモンの3体ですね。3体とも頑張ってますからね」


コンガは力仕事、スカルズは冒険者や兵士の訓練指導で信頼を得ているし、ルシールにあっては住民からは天使様と呼ばれてるくらい信頼されている。


「これは利用できるわね」



★★★


数日後、ほぼすべての都市や村の解放は終わった。

後は復興だが、流石にそこまではできない。それこそ内政干渉だ。なので、緊急の支援物資を空輸するに留めている。これも各国の支援金から支払われているので、ヤマダ商会やシャーロック商会、その他の商会にとっては特需で、嬉しい限りだ。


ここで、遷都を記念してのイベントの打ち合わせをする。極秘プロジェクトなので、メンバーを絞る。

旧転職神殿復興プロジェクトのメンバーに加えて、アークデーモンのルシールを呼び出した。


「ルシール、かなり頑張っているようね」


「そうですね。なんか・・・天使ってこういうものだったんだと実感してます。このような機会をくださったベビタン様や皆様には感謝してもしきれません」


「そこで相談なんだけど、遷都関係のセレモニーで・・・・」


私は計画を話すとルシールは難色を示した。


「私はまだ天使ではありません。それを天使と言って騙すなんて、天使にあるまじき行為です。なので、お断りさせていただきます」


意外に真面目な面があるな・・・というか悪魔って人を騙すもんじゃないの?


そうと言えない私は少し説得することにした。


「はっきり天使って言わなければいいと思うのよ。勘違いするのは相手の勝手だしね。そう言う人は大勢いるからね」


隣に座っているベビタンはブルブルと震えていた。


「そこまで言われるなら、やりましょうか・・・・本当に私で良いんですかね?」



★★★


そしていよいよ式典の日がやって来た。

現在はマリシア神聖国の代表がスピーチをしている。


「我々は困難に立ち向かわなければなりません!!神に祝福された我が国の再建は、このバスカンから始まるのです!!絶対に神の祝福が・・・・」


言いかけたところで、ルシールが降臨する。

魔法でライトアップされて、本当に天使のようだ。ルシールは普段治療院で働いているので見知っている人も大勢いる。口々に観衆が叫ぶ。


「天使様だ!!天使様が降臨された」

「やっぱりあの方が天使だったんだ」

「天使様、どうか祝福を!!」


観衆が静まったところで、ルシールが厳かに話始める。


「皆の者、よく聞きなさい!!神が貴方達を見捨てることはありません。困難に立ち向かう貴方達を私は陰ながら応援します!!」


天使とも言っていないし、応援をするもしないも心の問題だ。ルシールの話では神は見捨てる見捨てないの前に下界のことは基本的に無関心らしい。


「私が貴方達に祝福を与えます。ホリーライト!!」


これも光を出すだけの魔法だ。しかし観客は盛り上がっている。その後、ルシールが飛び去ったのだが、真相を知らないマリシア神聖国の代表は、かなり感動してしまったようで、ルシールを祭る神殿を作ると宣言してしまった。

こっちは費用さえ払ってくれれば、建設してあげてもいいんだけどね。



数日後、ベビタンが報告に来た。既にデーモンまで昇格したらしい。


「このままいけば、エジル討伐までにアークデーモンになれるかもしれません。でもこんなに多くの人を騙してよかったんでしょうか?」


「騙してないわよ。ルシールはただ空から登場して、みんなを元気づけただけなんだからね。それにルシール達悪魔の地道な活動が評価されたと思いましょうよ」


「そうですか・・・なんかクリス会長は、悪魔より悪魔っぽいですね」


心外だ!!


でも天使でないことは間違いない。

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