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13 勇者パーティー発表

「商人」に転職し、無事王都アリレシアに帰還した。

予定通り、レベルは1のままだ。ギルドカードを確認する。



名前  クリスティーナ・ロレーヌ

レベル 1

ジョブ 商人(一般職)

HP 15 MP 8

力 8 賢さ 60  素早さ 10 身の守り 7 

スキル 「敵感知」「罠解除」「採取」「初級魔法」「回復魔法小」「鞭使い」「両手攻撃」

「隠密」「潜伏」「解錠」「鑑定」「交渉術」


よしよしよし!!

予定通りだ。

勇者パーティー選考委員会には「武者修行に行ってくる」と言って、正式に届け出を出したので尾行はつかなかった。逆に「頑張ってください。応援してます」と励まされた。それはちょっと心苦しかった。

後は選考会まで、レベルを上げなければ後は、身に付けた「交渉術」で何とかなるだろう。

私は選考会までの間、部屋から出ず、周囲には「体調が悪い」と言ってのんびり過ごした。ルイーザさんからは「頑張り過ぎだから、ゆっくり休みな」と言われた。


予定通り、勇者発表セレモニーが大々的に開催された。ダグラス王子が勇者として国民の前に姿を現し、自信を持って演説する。


「私がこの国を!!そして世界を救ってみせる!!」



さあ、いよいよ明日が選考会だ。私の人生を賭けた戦いが始まる。



★★★


選考会に参加できるのは事前に一次審査を通過した者だけだ。なので、ここでは勇者となったダグラス王子や選考委員との面接とギルドカードの確認で終わる。ダグラス王子も選考委員も、私が最有力候補と思っているらしく、面接も簡単な質問ばかりで和やかな雰囲気だった。

しかし、ギルドカードの提示したところ、空気は一変する。


「そ、そんな馬鹿な!!「商人」でレベル1だと?これでは選考基準に値しない」


選考委員が叫ぶ。

私は念には念を入れて、スキルが記載されている箇所を指で隠し、バレないように提示した。レベル1の割に取得しているスキルが多いので、怪しまれないためだ。

ダグラス王子も驚愕している。


「クリス。一体どういうことだ。そんな・・・・」


よし、いいぞ。

混乱しているここが攻めどころだ。


私は土下座して言った。


「申し訳ありません。ダグラス王子、実はお伝えしなければならないことが・・・・」


予め考えてきた設定を話す。


「勇者となるダグラス王子の御恩に報いるため、今までにないほど自分を追い込んで特訓をしておりました」


この辺りは尾行している者から報告が上がっているので、話の内容に矛盾はないだろう。話を続ける。


「そんな私に怪しげな者が声を掛けてきたのです。神官風のその者達は、私に『そんなにも強くなりたければ伝説のジョブ「竜騎士」に転職させてやろう』と言ってきたのです。そして今なら500ゴールドで転職できるというのです。

私は怪しいと思いましたが、どうしても殿下のお役に立ちたく、500ゴールドを支払い転職することにしたのです。

しかし、結果は無残なもので・・・ギルドカードのとおり最弱職の「商人」となってしまったのです」


騙されて転職し、ステータスを下げられるのはゲームの本編でも登場するシナリオだ。「竜騎士」に憧れる村娘に魔族の手の者が巧みに転職を進める。その問題を解決すれば、その村娘を仲間にできるし、「竜騎士」のジョブも解放される。

一番効率がいいのはクリスを身代わりで転職させることだ。転職に消極的だったクリスだが、このときは「まあ伝説の「竜騎士」であれば転職しても構いませんわ」と言って転職に応じる。しかし結果は、「愚か者(フール)」という謎のジョブに転職させられ、ステータスが半分になり、魔法やスキルが使えなくなってしまうのだ。

まあ、クリスが弱体化したところで、すぐにこの村娘の身代わりで邪龍に食い殺されてしまうので、特に問題はない。推奨される「クリ捨てパターン」だ。


「今思えば、魔族の手の者だったのかもしれません」


これには選考委員達も納得する。


「クリス殿は有名冒険者だから、魔族に目を付けられても不思議ではないな・・・・」


魔族が汚い裏工作をしてくるのは周知の事実なので、より信憑性が増す。

ここで私は決めにかかる。目に一杯の涙を浮かべてこう言った。


「本当に申し訳なく思っています。できることならダグラス王子の側でダグラス王子を支えていきたかった・・・・・でも仕方ありません。私は「商人」として裏からダグラス王子をサポートすることに致します。ですので、非常に悔しくはありますが、勇者パーティーは辞退させていただきます」


どうだ!!見たか?私の一世一代の大芝居を。


私が土下座したまま動かないでいると、ダグラス王子が私を抱き起し、なんと私を抱きしめたのだ。


「クリス、俺のせいですまない。すべて俺のためにしてくれたことなのに・・・・俺は君に誓う。必ず魔王を打ち倒し、世界を平和にする。そのときはどうか俺の妻になってほしい」


あれ?

FFQ4は恋愛シュミレーションゲームだったっけ?


私が戸惑っていると選考委員のケルビン翁が言う。


「殿下!!勢いで何もかも決め手はなりませんぞ!!王子であり、次期国王となる殿下の婚礼となれば国の重大事項です。クリス殿の心意気は称賛すべきことではありますが、婚礼については御父上や宰相と協議されてはいかがでしょうか?

またロレーヌ伯爵の顔も立てなければなりませんし・・・」


「そ、そうだな。だが俺の気持ちは変わらん。クリス、いきなり抱きしめてすまなかった」


「い、いえ・・・そんな、お気になさらず・・・」


これならダグラス王子メロメロ作戦を使えばよかったかも?


まあ、恋愛スキルの全くない私なら、すぐにボロが出て、バッドエンドになるかもしれないから今回のこれが最適解だったと思おう。


★★★


勇者パーティーの発表は3日後だった。

私はめでたく落選した。これでクリス(私)のバッドエンドは回避されたと信じたい。


選ばれたパーティーメンバーだが、これは単純にFFQシリーズの大ファンとして、非常に興味があった。まずは騎士団長で「重戦士」のマッシュ・バーンズだ。

まあ順当だろう。兄のイチオシの「マッスルブラザーズ」がここに誕生した。


続いては同じく騎士団から「軽戦士」のリンダ・ドナルド。がっしりした女性で正義感が強く、パーティーに入れば、度々クリスと衝突していた。実力的には特筆すべきものはない。まあ、可もなく不可もなくといったところだ。クリスと喧嘩をするキャラという印象しかない。

多分、この世界では私の代役として急遽メンバーに加えられたのだろう。


そして最後は聖母教会所属の「治療術士」マリア・テレザだ。こちらは青髪青目の聖女キャラだ。ムリエル王女と並び美少女好きには堪らない感じだ。将来的には魔法職のジョブをいくつか経験させれば、それなりに活躍できるが、序盤は攻撃力が皆無なので苦労するだろう。マニアには「か弱いところが最高」という意見もある。



これで一段落、本当に良かった。

めでたし、めでたし。

気が向きましたら、ブックマークと高評価をお願い致します!!

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