124 反撃開始
全ての部隊が予定した地点に集結した。
通信の魔道具で各部隊の総大将と連絡を取る。
「こちらミザリー、予定通り進軍して、最初の町で拠点を作ります」
「バーバラじゃ、こっちも予定通りじゃ」
「こっちも準備OKよ。ダグラス大公は最後のチェックに行っているから心配しないでね」
どの部隊も順調なようだった。
私達連合軍司令本部は、南ルートでロトリア王国を筆頭とした混成部隊と一緒に行動する。基本的に直接戦闘に加わることはない。そうなったら異常事態なんだけどね。
南ルートで進軍する私達は、最初の町に入った。
ここにはまだ、魔物が迫って来てはおらず、軍関係者だけでなく町の人も総出で決戦に備えていた。
マリシア神聖国の筆頭騎士団長がつなぎを作ってくれて、町の代表者と会談をする。
「斥候部隊の話では、ここから北に行った町に魔物達が迫っているそうです。その町でも必死に戦っていますが、戦況は悪く、陥落も時間の問題です。私達も防衛線を構築しながら、女性や子供は避難させる方針です」
思ったよりも戦況は悪いようだ。
ここで考えられるのは、次の町が陥落するのを待ち、ここに魔物達がやって来てから戦かうか、強行軍とはなるが、次の町まで無理して進軍して、少しでも被害を防ぐかだが・・・・
ダグラス大公が言う。
「少しでも被害を減らすために進軍しよう。何ならダグラス隊だけでも先に行ってもいい」
みんな思いは同じだ。私は決断する。
「分かりました。行きましょう。ダグラス様はすぐに出発してください。私達と補給部隊は後から合流します」
予定変更になると計画を組み直さなければならない。本部員や補給部隊員には負担が掛かるが仕方ない。みんな了承してくれた。
ダグラス隊が出発してから3日後、私達も出発することになった。無線連絡では現在交戦中とのことだった。
「タツメ、プーラン、戦況の確認に行きたいんだけど、お願いできるかしら?」
「もちろんだよ」
私はプーラン、ギーガと共にタツメの背に乗り、ダグラス隊が戦闘している場所まで向かった。上空から見る限り、魔物は5万以上いる。ダグラス隊は3万なので、数の上では倍近くいるのだ。
魔物の構成はほとんどがアンデットモンスターで、旧転職神殿の悪魔召喚で出現したスケルトンやグールがほとんどだった。
こちらは歴戦の猛者揃いなので、スケルトンやグールに後れを取ることはない。問題は指揮官となっている悪魔だった。こちらは勇者パーティーのメンバーやサマリス王子、ムリエル王女が中心となって打ち倒している。指揮官さえ倒せば、後はC級冒険者でもなんとかなる魔物だからね。
全体的な指示として、絶対に死者を出すなと強く言っている。というのも、エジルの目的は戦争を引き起こし、多くの魂を集めて、より強力な悪魔を召喚することにある。だから極力死者を減らしたい。聖都を奪還したが、強力な悪魔が召喚されてしまったら本末転倒である。
なので、もっと兵力を増強することはできたが、戦闘力の高い兵士のみで構成しているため、この規模の兵数になったのだ。
そして、少しでも傷付けば後方に下がって回復させるような戦術を採用している。
戦況はというと悪魔の指揮官を失ったアンデット部隊達は殲滅されていく。しかし、生き残った悪魔の指揮官達は早々に撤退してしまった。
「初戦ですべての悪魔指揮官を討ち取るのは流石に無理ね。問題は対策をされることだけど、それは今言っても仕方ないわね」
私達は戦闘の終わったダグラスに近付いた。丁度そのころ、歓喜に湧く町の兵士や住民が出迎えてくれた。かなり疲弊しているが、皆無事のようだった。ただ、食料や資材が底をつきかけているので、私達が一時的に援助しないといけない。他の部隊もそうなのだから、追加で発注しよう。
ダグラスとの挨拶はそこそこに、私達はすぐに連合本部に戻って、追加物資の手配をする。
シャーロック商会のゲルダ会長が言う。
「奪還の知らせを聞いてすぐに手配してますよ。こんなことも想定して、予備で物資を保管してますからね。ただ、追加分は少し割増しにさせていただきますね」
流石は世界一の商会の会長だ。本当に抜け目がない。
★★★
連合軍本部もダグラス隊に追いつき、補給も終わったので、再び進軍を始める。東ルート、西ルートの部隊も順調なようで、死者も出ていないようだった。これは、悪魔の指揮官さえ倒せば、ただの下級アンデットモンスターの集まりなので、精鋭部隊の敵ではなかったということだろう。
進軍を開始して3日目、草原で接敵することになった。今回も5万以上の魔物がいる。
ダグラスが指示する。
「前回と同じ要領で戦うぞ!!指揮官の悪魔は強力だから最優先で討伐しろ!!そうすれば、後は雑魚狩りだ」
今回も余裕の戦いとなるかと思われたが、かなり苦戦していた。相手は巧みにアンデットモンスターを動かして、数的有利を生かしてくる。こちらも混成部隊なので、連携した攻めができない。というのも指揮官を見つけ出すのに苦労していた。
悪魔側も対策を打ってきたようで、魔法でスケルトンやグールに擬態しているので、一見して誰が指揮官か分からないのだ。スケルトンが骨の馬に跨ったスカルライダーに擬態していることが多いものの、ヘルハウンドのような動物型の魔物に擬態している者もおり、指揮官だけを狙い撃ちにするのは困難だった。
しかし、数では劣るものの、地力に勝る連合軍は押し始め、アンデットの大群は、殿として残した1万程のアンデットモンスターを残して撤退して行った。今回も死者なく、勝利することができた。
戦闘後、軍議が開かれた。
ムリエル王女が言う。
「指揮官を見つけ出すいい方法があればいいのですが・・・・他の部隊も苦戦しているのではないでしょうか?」
「まだ、報告は入ってないので、一度聞いてみるね」
軍議の後、早速通信の魔道具で連絡を取る。
「こちらミザリーです。前回同様、指揮官を先に片付けたら、特に問題なく対処できました」
「妾達も同じじゃ、こっちはベビタンがいるから擬態魔法を使おうが、指揮官なんて丸分かりじゃ」
他の二部隊は苦労なく進軍しているようだった。
一体、どうやって指揮官の悪魔を見つけ出しているんだろうか?
私はに部隊の視察に向かうことにした。
「次の戦闘が始まる前に連絡してください。視察に向かいます」
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