122 聖都奪還に向けて
2日後、対策会議が開かれた。
旧転職神殿復興プロジェクトのメンバーに加えて、ダグラス以下勇者パーティー、マリシア神聖国の関係者、冒険者ギルドの代表としてラクーンさんとルイーザさん、魔王ミザリーにも出席してもらっている。
まずは役割り分担を決めていく。
「部隊の補給についてはヤマダ商会とシャーロック商会がメインで行います。このような事情ですので、通常の3割引きで、やらせていただこうと思っております」
そう発言したのは、会長のゲルダさんだ。一見して、奉仕の精神を前面に出しているように思われるが、需要は通常の3倍以上に跳ね上がるので、全く問題はない。世間からは良心的な商会と評価が高まり、更に大きな利益が得られる。本当に抜け目がない。そこが頼もしくはあるのだが。
「輸送隊の護衛は冒険者が請け負うよ。でも、こっちは悪いけど割増しにさせてもらうよ。国軍はどこも大忙しで、魔物の間引きができないから、そのしわ寄せが冒険者にくるんだからさ。本当に人が足りないから引退した冒険者も一時的に復帰させる。それには餌が必要だからね。
ということで、アタイもラクーンも現場復帰するからな」
それは頼もしい。
冒険者への謝礼は、シャーロック商会の割引分を足せば何とかなりそうだ。
続いて各国の戦力についての話が始まる。ライアットが言う。
「ランカシア帝国は重装騎兵部隊隊長のマイルズ以下5000名、僕が隊長を務める魔道騎竜隊1000名を派遣するつもりです。これに補給部隊500名を入れた総員は6500名です」
アイリスも続く。
「ウチは魔導士を中心に3500名を派遣します。内300名はホバークラフト部隊、200名が補給部隊です。「空間収納」のスキル持ちも多くいるので補給もバッチリです」
ランカシア帝国は数で押し切る部隊編成で、サンクランド魔法国は魔法攻撃に特化した部隊編成にしているようだった。
更にミザリーも続く。
「魔王軍は力の強いオーガ族、ギガンテス族、トロル族、弓や遠距離攻撃が得意なダークエルフ族、それに普段は他種族と交流しない鳥人族もリルリランドの借りは返すと言って、女王自ら参戦してくれる予定です」
航空戦力が確保できたことは幸運だ。
一通り、戦力の報告を終えた後で、元マリシア神聖国の騎士団長が話始めた。
「祖国の危機ということで、私が臨時でマリシア神聖国軍の筆頭騎士団長に任命されました。はじめに、今回の不始末を招いたことを改めて謝罪致します。まず戦況ですが、他国にアンデットモンスターを流出させないことを第一の目標に戦っております。マリシア神聖国は北が海、西と南が小国家群、東がモンダリア騎馬王国と面しております。海に面した北の端に聖都ルベンシアがあり、西、南、東にそれぞれ聖都ルベンシアに通じる街道が整備されています。現在、街道を封鎖する形で防衛線を構築していますが、徐々に防衛線を下げている状態です」
更に筆頭騎士団長の話は続く。
「三つの主要街道があるというのがネックでして、モンダリア騎馬王国の方に抜けられるとすぐに人的被害はありませんが、草原地帯なので捕捉が難しくなります。また小国家群の方に抜けられるとすぐに多くの国に被害が出るので、街道の防衛線を外すことができないのです」
ここでサマリス王子が発言する。
「筆頭騎士団長の話からすると、こちらの部隊を三つに分け、防衛線を押し上げる形で北上するしかないように思えるのだが、その認識でいいだろうか?」
「はい、その通りです。しかし、かなり難しいと考えております。というのも足並みを揃えて防衛線を上げなければならず、一部隊だけ突出してしまうと包囲されて殲滅される恐れがありますので・・・・」
頻繁に連絡を取り合い、足並みを揃えるか・・・・ヤマダ商会の新製品と鳥人族を使えば大丈夫そうね。
「それならば大丈夫だと思います。魔王ミザリー殿より説明のあった鳥人族に連絡要員として頑張ってもらいましょう。それにこちらには古龍のタツメ殿もいらっしゃいますしね。そして、ヤマダ商会の新製品を配布いたします」
私が提案した新商品は通信の魔道具だ。現代日本で言うトランシーバーのような物と遠距離でも使える大型の無線機のような物を開発していたので、それをここで配布することにした。性能は問題ないのだが、コストが掛かり過ぎるのだ。魔石を大量に使うし、魔石を使わなければ、魔導士が常に魔力を補給しなければならない。
なので、作っても売れないだろうなと思っていた。
でも今回は各国から豊富に資金が出るので、この際、宣伝の意味も込めて提案したのだ。
「これは凄い!!これがあればかなり細かな作戦ができるぞ」
「クリスお姉様、流石です。それに補給もスムーズに行えますね」
筆頭騎士団長が言う。
「流石は元帥殿ですね。それでは部隊編成ですが・・・・」
この議論は難航したが、結局はこのようになった。
東ルート
兵力約1万 総大将バーバラ(ベビタンを含む)
ライアット隊長以下ランカシア帝国兵6500名(重装騎兵隊、魔道騎竜隊、補給部隊を含む)
アイリス隊長以下サンクランド魔法国兵3500名(補給部隊、ホバークラフト隊を含む)
支援治療部隊(クリストフ、ミレーユ)
西ルート
兵力約1万 総大将ミザリー
リル、リラ隊長以下魔王軍7000名
レナード隊長以下マリシア神聖国部隊2000名
キアラ隊長以下獣人部隊1000名
南ルート
兵力約3万 総大将勇者ダグラス
ロトリア王国、レートランド王国、ザーフトラ共和国、モンダリア騎馬王国等の混成部隊
※ムリエル魔法兵隊長、サマリス支援部隊隊長(ドーラも帯同)、マッシュ重装歩兵隊長、トール騎兵隊長、ワグネル傭兵隊長、バーダッグ斥候部隊隊長、マリア治療部隊隊長で運用する。
※因みにリンダは祖国防衛のためお留守番のようだ
連合軍司令本部
総司令官ロトリア王
元帥クリスティーナ・ロレーヌ
参謀ピエール、マリシア神聖国筆頭騎士団長、ライラ、ゲルダ商会長
本部員ギーガ、マルチナ、タツメ、プーラン、ルイーザ、ラクーン
※ 南ルートに帯同
東西南の街道から進軍し、足並みを揃えて聖都を目指す戦略だ。部隊間の連絡は魔道具と魔王軍所属の鳥人族が行う。南ルートに戦力を集中させているのは、他の2ルートの支援を考えてのことだ。
粗方まとまったところで、ロトリア王が言葉を述べる。
「諸君いよいよだ。出発までの間、しっかりと準備をしてくれ」
これが最終決戦となればいいのだけど・・・・
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