表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
120/137

120 記念式典 4

決勝戦が始まった。

アイリスとギーガが言葉を交わしている。


「ギーガさん、よろしくお願いします。正々堂々と戦いましょう」


「臨むところです。せっかくなんで、賭けでもしませんか?そうだ!!クリスさんの一番弟子の座を賭けて戦うのはどうでしょうか?」


「いいですけど・・・それだと、絶対に負けられませんね!!」


「俺もです。最初から全力でいきますよ!!」


試合開始と同時にギーガは巨人化を使った。普段の3倍くらい大きくなり、右手に大型の棍棒(本人曰く「殲滅の棍棒」というらしい)、左手にドーラから貸してもらった「殲滅の鉄球」を持ち、攻撃を開始した。「殲滅の鉄球」でアイリスを簡単には近付けさせず、それでも間合いを詰めてくれば、棍棒で薙ぎ払うスタイルだ。

流石のアイリスも簡単には攻められない。


そんな攻防が続く中、アイリスが「殲滅の鉄球」を躱し、棍棒を払いのけてギーガに切り掛かった。これで勝負はついたと思われたが、なんとギーガは口から火を吹いた。


一生懸命修行していたがブレスまで使えるのか!!


プーランに抱きかかえられたドラゴンのタツメが言う。


「ギーガがどうしても教えてくれっていうから教えたんだ。なんとか中級ブレスまではできるようにはなったけどね。どうしても優勝したいからって言ってたよ」


「殲滅の鉄球」に「殲滅の棍棒」、これにブレス攻撃まで加わったら、ゲームでは魔王よりも強いかもしれない。


不意のブレス攻撃をまともに喰らったアイリスは、かなりダメージが入っているようだった。

しかし、アイリスは逆に笑みを浮かべていた。


そこからはアイリスが逆襲する。得意の「五月雨斬り」でギーガを滅多斬りにしていた。ギーガは巨人化の影響で斬られても、すぐに傷が塞がっていく。ミザリーが言うには、傷が治る度に魔力を消費するので、無限に回復できるわけではないらしい。


ここからはまさに死闘と言った感じだった。二人ともバーサーカー状態で、防御を無視して攻撃を繰り出している。このままでは両者ともに命に係わると思われたので、私は決断をした。


「これ以上は危険です。すぐに試合を中止にしましょう。審判長に指示を!!各国代表の皆様、大変申し訳ないのですが、試合を中止させていただきます」


これに対してランカシア帝が答える。


「気にすることはない。ここまでいい試合が見れたことだし、サンクランド王の大切なご息女に何かあれば、大変だからな」


「感謝する」


サンクランド王が謝意を伝えたことで、他の要人は文句をつけることはできない。


すぐに審判団が割って入ろうとするが、弾き飛ばされてしまった。二人はバーサーカー状態で周囲の声が耳に入らないようだった。

こうなったら仕方がない。


「私が行きます。レナードと治療班のクリストフさんにも協力を依頼してください!!」


私が貴賓席を離れようとしたところ、呼び止められた。サマリス王子、ムリエル王女、キアラ王女だ。三人とも自分も行きたいと言ってきた。


「王族の方は何かあったら国際問題ですし、それにキアラ王女は市長となられる方なので・・・・」


そうしたところ、ケルビンが声を上げた。


「二人とも我の弟子だからな。弟子の不始末の責任は持とう」


更にサマリス王子が続く。


「だったら王族を代表して自分が行くよ。多分、後ろから支援魔法を掛け続けるだけだしね」


少し自虐が入っているが、本当に有難い。クリストフとセットで支援魔法を掛けてくれると非常に助かる。


会場に着くと待機していたレナードとクリストフと合流する。会場は「危険防止のため、試合を中止する」とのアナウンスが流れていた。


アイリスとギーガの戦いは、間近で見るとかなり激しい。アイリスは普段使わない魔法も連発しているし、ギーガもブレス攻撃を絶え間なく行っている。

私は集めたメンバーに指示をする。


「クリストフさんとサマリス王子は支援魔法をお願いします。レナードとケルビン先生は、二人の注意を逸らしてください。隙を見て私が押さえます」


クリストフとサマリス王子のヒモコンビが補助魔法を掛け始める。物理攻撃に特化した「プロテスト」と魔法攻撃やブレスにも耐性を持たせる「マジックバリア」だ。そして、レナードがアイリス、ケルビンがギーガに切り掛かった。

流石のアイリスやギーガと言えど、この二人を簡単に追い散らすことはできず、膠着状態に持ち込んでいた。


今だ!!


私は機をとらえ、両手の鞭でアイリスとギーガの足に絡みつけて転倒させた。


「グレートサンダーボルト」


両方の鞭を伝って、かなり強めの電撃魔法を放った。アイリスとギーガは痺れて動けなくなってしまった。そして、しばらくすると正気に戻っていた。


「す、すいません!!興奮したら訳が分からなくなって・・・」


「俺もです。ごめんなさい」


「いいわよ。でも、貴方達は普通の人じゃないってことはよく覚えておいてね。本当の強敵と戦うとき以外は絶対にフルパワーで戦わないでね」


「「はい!!」」


これで一件落着・・・・とはならなかった。

観客が騒めき始める。


「何なんだ、あの女性は?」

「凄い戦いをしていた二人をあっさり止めるなんて・・・」

「魔王とかじゃないの?今度の魔王は女性だって聞くし・・・」


変な噂が飛び交っている。これって私がヤバい人扱いされてない?


そんな中、バーバラ、ベビタン、タツメにリルとリラが現れた。バーバラが拡声の魔道具で言う。


「試合が中止になって残念じゃから、代わりにわらわ達が歌って踊って盛り上げるぞ!!スペシャルステージじゃ!!」


観客は盛り上がっている。上手くいったようだ。

こっそりバーバラが近付いて来て言った。


「これは貸しじゃからな。何かあったら返してもらうからな」


「もちろんよ。何でも言ってね」


このような事態を想定してバーバラは予め手を打っていたようだった。


ステージは大成功だった。

バーバラ、ベビタン、タツメの三大マスコットに可愛いキツネっ子のリルとリラのバックダンサーがいるので盛り上がらないはずはなかった。



★★★


多少?のトラブルはあったものの、式典は上手くいったと思う。今は最後の晩餐会が行われている。ドラゴンステーキも豊富にあるし、要人達も大満足だ。因みにタツメも美味しそうに食べていた。タツメに聞いたところ、タツメ達古龍種とアースドラゴンのような知能のないドラゴンは同じドラゴンでも別だそうで、共食いにならないようだった。


会場を回ってもみんな上機嫌だ。この流れで、魔道リニアモーターカーの出資話のさわりだけでもしておこうかなと思っていたところに、慌てた様子で従者の一人が駆け込んで来た。その男は、マリシア神聖国の代表の元に駆け寄った。


「どうしたんですか!!いきなり駆け込んで来るなんて、各国の代表の方に失礼でしょう」


「しかし、本当に緊急事態なのです。聖都がクラン派に落されました。そして、クラン派は悪魔召喚に成功しているようで、聖都はアンデットモンスターで溢れかえっているのです!!

すぐに対策を!!」


会場は騒然となっている。

幸いこの会場には、各国の国家元首クラス、それも世界でもトップ10の軍事力を持つ国がほとんど参加しているので、今後の話し合いは迅速に行えそうだ。


多分、エジルが動いたのだろう。


ゲームでは、マリシア神聖国は悪魔神官となってしまったパーヨックのイベントで訪れ、そこで土のクリスタルを入手するのだが、マリシア神聖国で土のクリスタルは入手していない。エジルの活動先として、システムの修正力にマリシア神聖国が選ばれたとするなら、一応ダグラス達勇者パーティーに入手させておくんだったっと思わないでもない。


そして、私にとって最悪の展開が起こることになった。

気が向きましたら、ブックマークと高評価をお願い致します!!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ