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118 記念式典 2

武術大会の準々決勝が始まる。

第一試合はアイリス対リンダだ。リンダは無事に男の子を出産し、大会に出場していたようだった。


それにしても、なぜビキニアーマーなんだ?

結婚したから落ち着けばいいものを・・・


リンダに対しては、ブーイングと声援が入り混じっていた。


「帰れ!!尻軽女!!」

「寝取り露出女!!」

「リンダ様ステキです!!」


リンダに声援を送っているのは、主にビキニアーマー女子達だ。リンダは彼女達のカリスマだからね。それにしても今回のビキニアーマーの切れ込みはエグい。はみ出したらどうするんだと心配になるくらいだった。

一方アイリスはというと、落ち着いていて、平常心のようだった。これなら心配はないだろう。


試合が始まるとお互い牽制しながらの戦いとなった。

リンダは「軽戦士」と「重戦士」をマスターした上級職「マスターソルジャー」になっている。物理攻撃に特化したジョブであるが、大技は習得しないので、地味な感じのジョブだ。最短で勇者になれる主人公キャラ以外はあまり選択しないジョブだが、ダグラスと一緒がいいということで、リンダはこのジョブにしたようだった。

リンダはオーソドックスに楯と剣を使って戦うスタイルで、見た目の奇抜さの割には基本に忠実で安全策を取る戦い方をしていた。


アイリスはここしばらくは修行をしていたので、動きにキレはあるが、こちらも安全策を取った戦い方をしている。一緒に観戦していたケルビンが言う。


「そろそろ、相手の実力を把握したアイリス王女が攻撃に出るだろうな。もう勝負はついたようなものだ」


ケルビンの言ったとおりになった。

そもそも実力が違い過ぎるのだ。アイリスの怒涛の攻撃が始まる。リンダは防戦一方で、全く手が出せない。すぐに楯と剣が弾き飛ばされた。普通ならここで敗北宣言をするのだが、何を思ったかリンダは素手でアイリスに向かって行った。

するとアイリスは剣を鞘に納め、同じように素手で相手になるようだった。


素手での戦いもアイリスが圧倒し、拳に風魔法を纏わせた「風圧拳」でリンダを吹っ飛ばした。

ここでなんと、リンダのビキニアーマーが千切れ、ポロリ事件が発生してしまった。これで戦闘不能と見做され、リンダは失格となった。


同じパーティーのマリアが言う。


「リンダの馬鹿!!ビキニアーマーを着用するなら絶対にヤマダ商会のブランドにしろって言ったのに・・・デザイン重視で変なブランドのビキニアーマーなんて着るからこうなるんですよ」


ああ、ヤマダ商会から独立したデザイナーの店のやつか・・・・


そんな感じで、危なげなくアイリスが準決勝に進出した。


次の試合は、レナードとマイルズという男だった。面識のない男だ。

ライアットが解説してくれる。


「マイルズはランカシア帝国軍重装騎兵隊の隊長です。国の威信を懸けて参加しています。でも、レナードさんに及ばないと思いますが」


なるほど、国の威信を懸けて参加しているのか。そう考えるとここでレナードに勝ってもらったほうが、国際情勢的にはいいかもしれない。サンクランド魔法国の王女のアイリスにフルボッコにされるよりはましだろう。


試合は、落ち着いた展開となった。レナードがいつも通り、安全策を取っているからだ。相手の実力が分かるまでは無理はしない。そう考えるとアイリスはレナードに大きく影響されているようだ。オーガスティン領での「棍棒戦」で足元を抄われた苦い経験が影響しているのだろう。もっと早くリンダを倒せただろうにと思ってしまった。


試合はというと、最終的にマイルズの剣を受け流したレナードが基本通りに腕と足に攻撃を当てて、戦闘不能にしていた。

これにはキアラ王女が大はしゃぎだった。


「やっぱり、レナード先輩は凄いです。基本的な技だけで相手を追い込むなんて!!父上、ご覧いただけましたか?」


「やはり彼の強さは本物のようだな。ランカシア帝国の猛者をこうもあっさり倒すとは・・・」



★★★


休憩を挟み、第三試合が開始される。

ギーガとマッシュの試合だ。


どちらもパワー重視であるが、全く逆のスタイルだ。ギーガは力任せに棍棒を振り回すスタイルでマッシュは持ち前のパワーで攻撃を正面から受け止めるスタイルだ。大方の予想通り、ギーガが棍棒で攻撃し、マッシュが正面から攻撃を受け止める展開となった。


「ギーガ殿、貴殿の攻撃が止まったときが、貴殿が負けるときだ」


「そうなる前に決着をつけてやる!!」


お互い一歩も引かない。かなり長い時間攻防が続いている。私達から見るとマッシュが完璧に攻撃を防いでいるように見える。そして、流石のギーガも息が上がってきた。

ライアットが言う。


「この勝負はマッシュさんに軍配が上がるのでしょうか?攻撃を防ぎ切りそうですし・・・」


これにケルビンが答える。


「ライアット皇子もまだまだですな。ギーガもただ、闇雲に攻撃をしているわけではないのですよ。まあ、見ていれば分かります」


しばらくすると試合に動きがあった。ギーガが攻撃を止め、間合いを取った。


「ギーガ殿、貴殿の攻撃は、もうお仕舞か?」


「ああ、そのとおりだ」


「だったら、遠慮なく行かせて・・・・」


マッシュがそう言いかけたところで、膝をついてしまった。


「こ、これは・・・抜かったわ!!」


なんとかマッシュは立ち上がろうとするが、足がもつれて転倒してしまった。

ケルビンが言う。


「ギーガのスキル、「貫通打」です。防御に特化した相手に有効です。楯や鎧の防御力を無効にしてダメージを与えるスキルなのですが、ダメージが与えられたと気付かないように上手く調整して、攻撃をしていたのでしょうね。立てなくなるくらいのダメージが入るまで、マッシュも気付かなかったようです。自分の防御力を過信したことが、マッシュの敗因ですな。

勇者パーティーになって調子に乗っているようなので、ここらで一度、気合を入れ直してやらねばなりませんね」


ケルビンの発言にライアットは青ざめている。


普段から一緒に訓練しているライアットは、ケルビンの怒り具合を知っているからね。


試合のほうは、マッシュが立ち上がれず、ダウンと見做されて、ギーガの勝利となった。

続いては、準々決勝の最終戦だ。ドーラと・・・あれは!!


そこに居たのは、マリシア神聖国騎士団の正装に身を包んだ元騎士団長だった。試合前にドーラと握手を交わしていた。


「どうしたんだい、そんな恰好をして?」


「古い知り合いに頼まれましてな。どうしても『マリシア神聖国の代表として出場してくれ』とね。レナードのほうが優勝をする確率は高いでしょうが、あいつは騎士団で強くなったというよりは、こっちに来てから才能が開花したようなものですからな。

こう見えても、本国では少しは名の知れた存在だったのですよ」


「そうかい。色々背負っているものがあるんだね。でも手加減はしないよ」


「臨むところです」


貴賓席では、マリシア神聖国の代表が話をしていた。


「恥ずかしい話ですが、国内のゴタゴタで選手を派遣できませんでした。少しでも国の威信を高めようとお門違いとは思いましたが、元団長に依頼したのです。一応三大国と呼ばれているので、プライドはありますからね」


元団長は国の期待を一身に背負っているようだった。


試合はというと、元団長は上手く立ち回っていたが、ドーラの圧倒的なパワーの前に屈してしまった。しかし、その頑張りに観客から温かい拍手が送られていた。年も年だし、私達のように転職ブーストを使わずにこの強さは、尊敬に値する。

試合後は、レナードを含めた元騎士団のメンバーや勇者パーティーに加入したトール、ワグネル、ゴーダッグ、それに貴賓席から会場まで下りたキアラ王女などの教え子達に健闘を称えられていた。


人を引き付けるのは強さだけではないということがよく分かった。遠巻きに見ていたギーガも涙ぐんでいるしね。


準々決勝もいい試合ばかりだったし、準決勝や決勝も楽しみだ。

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