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【完結】絶対に私は勇者パーティーに入りません!!~勇者パーティーに入ればバッドエンド確定の不遇なサブキャラに転生したOLの生き残りを賭けた戦いが、今ここに始まる  作者: 楊楊
第六章 勇者と魔王

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112 オーガスティン領のおもてなし 3

準決勝の二試合目はアイリスと勇者パーティーのマッシュだ。

アイリスは女性を中心にファンを集め、逆にマッシュはオーガ族、ギガンテス族、トロル族から多くの支持を得ていた。

ギーガが言う。


「マッシュ殿はここまで、すべての攻撃を正面から受け止めて勝ち上がってきました。棍棒を振り回したりはしませんが、そのスタイルはオーガ族の琴線に触れたのでしょう。そういう自分も、普段お世話になっているアイリス様には悪いですが、マッシュ殿を応援したくなります」


「そういうもんなのね・・・じゃあ、私はアイリスを応援するわ」


「そうしてください。でも、これから大楯のブームが来ると思いますよ。子供達は既に棍棒を楯で受け止める遊びをしてましたからね」


「ギーガも商人ぽくなってきたわね。これならいつ研修を終了してもいいくらいだわ」


「まだまだです。もう少しお側に居させてください」


そんな会話をしている間に試合が始まった。大方の予想通り、アイリスが攻撃を仕掛け、マッシュが受け止める展開となった。流石のアイリスも木剣ではダメージが与えられない。一進一退の攻防が続く。ここで、アイリスがギアを上げ、攻撃の手数を増やした。マッシュは堪らず、防戦一方になる。

試合を終えて、観戦席にやって来たガンテスとロルゾーが話している。


「マッシュ殿はあそこからが本領を発揮するんだ。無理に攻撃しようとすれば、逆にやられてしまう」

「それはそうだが、アイリス王女の攻撃は受けきれまい。実際にやられた我が言うののも何だが・・・」


これにギーガも加わる。


「俺はアイリス王女が勝つと思う。やはり実力差があるからな。マッシュ殿が何とか凌いでいると見たほうがいいだろう」


しばらくして、アイリスは驚きの行動に出る。

攻撃を止め、無防備にマッシュに接近する。マッシュは大楯と長めの木槍を装備しているので、もうマッシュの間合いに入っている。しかし、マッシュは動かない。

更にアイリスがマッシュに接近するとマッシュは後退した。何も攻撃をしていないのにマッシュは後退し続ける。


「ギーガ、お前の言ったとおりだな。マッシュ殿は自分からアイリス殿を突き崩す実力がないことを分かっているから、攻撃を受け止めてわずかな隙を狙っていたが、相手が攻撃してこなければ、戦術自体が成り立たなくなる」

「ガンテスの言うとおりだ。実力差があっても、ここまで戦ったマッシュ殿を褒めるべきだろう」


コーナーまで追い詰められたマッシュは堪らず、木槍で突きを繰り出す。しかし、苦し紛れの突きがアイリスに通用するわけもなく、あっけなく躱され、カウンターでアイリスが突きを放つ。


「疾風突き!!」


アイリスの突きは、マッシュの右肩の鎧で覆われていない部分にヒットし、マッシュは木槍を取り落した。すかさず、アイリスはマッシュの首筋に木剣を突き付ける。


「参りました」


マッシュが潔く敗北宣言をした。

一瞬会場は静まり返ったが、大歓声が上がる。両者を褒め称える声も多く上がった。

試合後、アイリスとマッシュは言葉を交わして、互いの健闘をたたえていた。


「試合は私が勝ちましたが、マッシュさんのようなタンクが同じパーティーに居れば心強いと思いました」


「お気遣い感謝します。単純に私の実力がアイリス王女に及ばなかっただけですからね。もっと修行して強くなりますよ」


マッシュは決して弱くはないし、アイリスが言うようにマッシュの特徴を生かしたパーティーを組めば、かなりの戦力になる。こういった試合ならアイリスが有利というだけだ。


★★★


三位決定戦を挟み、いよいよ決勝戦が始まる。三位決定戦は僅差でキアラ王女が勝利していた。これにはレナードのアドバイスが大きかったようだ。上手く立ち回り、最後は関節技で勝っていた。予想しない攻撃で流石のマッシュも屈してしまったようだ。


会場は決勝限定の賭けも行われているようで、大盛り上がりだった。


「どっちが勝つかな?」

「アイリス王女じゃないかな?実力が別格だし・・・」

「そうかもしれないけど、レナードがどんな武器で戦うか、それが気になる」

「そうだな。多分見たこともないような武器でくるはずだよ」


それは私も思う。「ウエポンマスター」のレナードが使う武器に非常に興味があった。アイリスは剣なので、普通に考えれば槍か何かだと思うけど。


しばらくして、アイリスとレナードが入場して来た。注目のレナードの武器はなんと、何の変哲もないただの長い棒だった。

私はギーガに尋ねる。


「レナードはどういう意図で、あの棒にしたのかしら?」


「難しいですね。リーチはアイリス王女より長いんですけどね・・・考えられるとしたら、棒に何かを仕込んでいるとかですかね?」


それはそう思う。一体どんな武器なのだろうか?


審判の合図で試合が始まった。

アイリスはレナードに急接近して、連続攻撃を繰り出している。それをレナードは上手く躱していた。

一緒に観戦しているドーラが言う。


「レナードは多分、攻撃を躱すだけならムリエリアで一番かもしれないね。とにかく安全第一だからさ。サマリスとは大違いだよ」


ギーガも応じる。


「そうですね。マッシュ殿とコンセプトは同じですね。正面から受けるか、しっかりと攻撃を躱すかの違いはありますが、カウンター狙いでしょうね」


ここでキアラ王女が会話に入って来た。


「みんなレナード先輩に驚くことになると思いますよ。この日の為に必死で訓練してきたんですからね」


キアラ王女の話だとレナードは何か奥の手を隠し持っているのだろう。


しばらくはアイリスが一方的に攻撃し、レナードが攻撃を躱すという予想通りの展開だったのだが、ここで試合が動く。レナードの棒が三つに分かれた。


「三節棍です。レナード先輩は最近珍しい武器を収集するのに凝っていて、それでアイリス王女も見たこともない武器を使うことにしたんです」


それが功を奏したのか、アイリスは攻めづらそうにしている。徐々にレナードが押し始めた。しかし、流石はアイリスで、しばらくすると、三節棍の攻撃に対応していた。


これで、もうアイリスの勝ちね。


そうみんなが思ったところで、アイリスは木剣を取り落した。

会場は騒然となる。

アイリスの手から木剣を落としたのは、レナードが投げたブーメランだった。三節棍も囮で本命はこちらのブーメランだったのだ。レナードは三節棍で攻撃を始めたときに気付かれないように投げていたのだ。アイリスも普通の状態なら気付くところではあるが、急に三節棍で攻撃して来たことに驚いて、見落としてしまったようだ。それに上手くカーブさせて死角からの攻撃だったしね。


木剣を落とされたアイリスは、すぐに間合いを取った。木剣を失ったアイリスだが、体術もなかなかのもので、まだ勝負は分からない。


そう思っていたが、レナードは追撃せずに落とした木剣に三節棍で渾身の突きを繰り出した。木剣は粉々に砕け散ってしまった。


「勝者レナード!!」


観客席から大歓声が上がる。

レナードはアイリスではなく、武器破壊による決着を決断したのだ。


試合会場の中央では、レナードとアイリスが握手をしていた。


「完敗です。しっかり修行をやり直すので、リベンジマッチをさせてくださいね」


「そ、そんな・・・普通にやっては勝てないから、模擬戦のルールを最大限生かしただけで、決して強いから勝ったわけでは・・・」


レナードは相変わらず自己評価は低かった。


驚いたのは、アイリスが凄く悔しそうなところだ。戦闘は嫌いと言っておきながら負けるのはどうも嫌いのようだ。そして、今後レナードの人生は過酷なものとなるだろう。

試合に出られなかったギーガやドーラ、レナードと対戦しなかったガンテスとロルゾーも「レナードと試合がしたい」と言っているし、リベンジに燃えるアイリスにも挑戦されると思う。


可哀そうだが、レナードも運命に翻弄されているのだろう。

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