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【完結】絶対に私は勇者パーティーに入りません!!~勇者パーティーに入ればバッドエンド確定の不遇なサブキャラに転生したOLの生き残りを賭けた戦いが、今ここに始まる  作者: 楊楊
第六章 勇者と魔王

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107 オーガスティン領開発計画 2

ギーガとリルとリラが準備していたのは料理だ。オーガスティン領で好んで食べられている食材にビッグホーンブルという牛型の魔物がある。ステーキにしても美味しい部位がある反面、堅かったり、臭かったりして好まれない部位もある。

今回はあまり好まれない部位を美味しく調理するのがコンセプトだ。


領主館に入ると大歓迎され、宴が始まってしまった。

しばらくは、一通り料理を食べ、お決まりの棍棒トークをしていた。


「クリスお姉様、他種族でも気に入る棍棒ってありませんか?普通の棍棒だとあまりプレゼントしても喜ばれないので・・・」


「これはどうでしょうか?スラッパーというのですが、革製の棍棒ですね。小型で少ない力でもある程度の威力が出せるのです。魔法付与済みの物は少しお高くなっていますが、ファッション性にも力を入れているんですよ」


ギーガの妹であるグーゴとゲーゴは興味深そうにスラッパーを手に取って見ている。


「じゃあ、ノーマルの物と魔法付与の物を一つずつもらおうかしら。これなら力の弱い女性でも使えますしね」



周囲を見回すとみんな酔いが回ってきているようだった。このままだと、また何のために来たか分からなくなる。

私はギーガ達に合図を出した。ギーガとリルとリラが料理を持ってくる。最初に出したのは、ビッグホーンブルのステーキだ。ビッグホーンブルは討伐するにはかなりの猛者でないと難しい。ゲームのレベルで言うとレベル35は必要だ。なので、オーガスティン領ではビッグホーンブルのステーキを出すだけでも、かなり喜ばれるのだ。みんな美味しそうに食べている。


「父上、今日はこれだけではありませんぞ。まずはこれを食べてください」


ギーガが出したのはホルモンカレーだ。ビッグホーンブルの内臓はかなり匂いがきつい。なのでアイリスのスキル「高速解体」で一気に下処理をしてしまうと臭味が抑えられ、更にカレーのスパイスで独特の風味と味わいをプラスしたのだ。ネックとすれば、「高速解体」のスキルを使えるのがアイリスくらいしかいないということだ。コンビネーションスキルとしてキアラ王女とレナードが使えるが、そのほかのメンバーは使えない。まあ、討伐自体が難しいんだけどね。


「これは旨い。独特の香りがいい・・・臭味も全くない」


「貴方、これは凄いわ。残った内臓でこんなことができるなんて・・・」


絶賛してくれた。

更にギーガはスジ肉の煮込みを出した。今度は私がプレゼンを兼ねて説明する。


「この料理はギーガさんの皆さんに対する愛情が詰まった料理です。普通なら捨てるような部位ですが、根気強く3日間煮込めば、ここまで美味しく、そして柔らかくなるのです。特別な技術は必要ありません。相手を思いやる気持ちと根気があれば・・・。

今回のオーガスティン領の開発にしても私は同じ気持ちです。全く新しいことを提案するのではなく、皆さんでも気付かないようなオーガスティン領の魅力を伝えていきたいと考えているのです。ビッグホーンブルをとってみてもこうですから、ここにはもっともっと魅力があると思いますよ」


私の説明を聞いてくれているのかどうかは分からないが、スジ肉の煮込みはみんな一心不乱に食べてくれている。


「ここまで、ギーガや我々のことを思ってくれていたとは・・・クリス殿、貴殿を我が領の開発担当官に任命する。好きに開発をするがよい。ギーガを、そして我が領を頼むぞ」


「クリスさん、美味しかったわ!!それにギーガやオーガスティン領への愛情が凄く感じられたわ!!これからもよろしくね」


なんと私はオーガスティン領の役職まで得てしまった。まあ、開発がやりやすくなったので、いいことではあるが。

場はかなり盛り上がってきたので、バーバラに合図をして歌とダンスを始めてもらった。今回はリルとリラもバックダンサーとしてステージに立ち、ダンスもミニ棍棒を持ったダンスだ。日本でも新体操で棍棒の演技があるし、バーバラにイメージを伝えるとすぐに振付を考えてくれた。

これもかなり盛況だった。


「可愛い子が可愛い棍棒を持って歌って踊っているわ!!」

「そうね、いい曲だし、棍棒に合っているわ」


その後は又、皆が酔いつぶれるまで飲んでいた。



★★★


次の日、細かい打ち合わせをしようと思い、領主館に行ったが、ギーガの父である領主様は二日酔いとのことで欠席だった。伝言で「好きにやってくれ」とのことだった。


なんて適当なんだ!!


と思ったが、ある意味やりやすい。文官達とともに計画を練っていく。難しいことは特になく、ヤマダ商会の支店と冒険者ギルドの支部を建設することになった。更に詳細を詰めていく。


「リサーチしたところ、ビッグホーンブルの加工食品はかなり収益が見込めると思います。安売りするのではなく、高めの価格に設定して、ブランド力を高めようと考えています」


「なるほど・・・そういうものなのですね。あえて値段を高く設定するとか思いもよりませんでした」


「後は、棍棒以外の武器の販売も考えています。人族は満遍なく武器を使いますが、強いて言えば剣や槍に思い入れがあります。棍棒はそこまでメジャーではないので・・・」


「オーガ族は武器と言えば棍棒ですからね。その辺の意識に大きなギャップがあるんでしょうね・・・」


話した感じ、この文官は話が分かる。魔王軍から派遣された者でオーガ族ではなかった。


「ピエール様からの指示で、オーガ族だけでは領地経営が破綻するとのことで、私が派遣されているのですよ」


まあ、納得の理由だ。


「それで、今後の予定ですが、「勇者の町」から勇者パーティーが出発し、四つのクリスタルの力で山を崩してこちらにやって来るのが3ケ月後です。それまでにやることは山のようにあります。先程言いました特産品を用意するのはもちろんですが、式典も開かなければなりませんし、勇者パーティーと一緒にこちらに入って来る王族や貴族も多くいます。その方達をもてなす宿なんかも必要ですね」


「ああ、頭の痛いところですね。救いはミザリー様から多額の資金援助をしていただいたことですね。ただ、クリス殿も分かっていると思うのですが、問題はオーガ族の気質です。領主様の行動がすべて表しています」


「そ、そうですね・・・」


大事な会議を二日酔いで来ないとか、本当にあり得ない。領主からしてこうなのだから、領民なんてもっと酷いだろう。それを考えると真面目で頑張り屋のギーガは稀有な存在かもしれない。


まあでも、ギーガが最初は酷かったことを考えると成長するきっかけさえあれば、ちゃんと成長するのではないかと思う。

気が向きましたら、ブックマークと高評価をお願い致します!!

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