105 ドラゴン来襲!!
ドラゴンが現れたのは、丁度ムリエリアの城壁の外だった。ドラゴンは体長10メートルは超えている。
既に警備隊が対応しているようで、レナードとキアラ王女が現場で警備隊を指揮している。
レナードが指示を出す。
「重戦士隊は前へ、ブレス攻撃に注意しろ!!弓兵隊はいつでも狙撃できるように準備!!」
相手が敵対行動を取るかどうか分からない状況で、とりあえず守備を重視した部隊配置だった。
「ここはムリエリアだ。用がなければ立ち去れ!!」
すると緑色の髪が特徴的な少女がドラゴンと警備隊の前に出て来た。
「私はプーランと申します。ここに魔王ピエール様はいらっしゃるでしょうか?こちらの古龍であるタツメ様が面会を求めています」
間違いない。
あのドラゴンが魔王軍四天王のタツメで、あの少女がネームドキャラで、「竜騎士」となるプーランだ。
ゲームでは、邪龍となったタツメをクリスの犠牲で、元の姿に戻すことに成功するとプーランが仲間になり、タツメも召喚に応じるようになるのだ。
私はプーランに歩みよる。
「私はこの町でヤマダ商会を経営するクリスと申します。ピエール様は現在研究室で作業中です。ピエール様をこちらにお連れするか、一緒に来られるかになりますが、その大きさでは・・・」
するとタツメはプーランに何か耳打ちをしている。
「タツメ様が仰るには、体を小型化して町の中に入るとのことです。それで構いませんか?」
「はい、大丈夫です」
すぐにタツメはみるみる縮んでいき、子犬サイズになってしまった。
なんか可愛い。
私とアイリスはタツメを胸に抱いたプーランを案内する。
★★★
ヤマダ商会に戻ると先代魔王のピエール、魔王ミザリー、四天王のギーガが勢揃いしていた。
ピエール達を見付けたタツメはプーランの腕からジャンプして、ピエールの胸に飛び込んだ。
「ピエール!!ミザリー!!会いたかったよ!!見捨てられたと思って辛かったんだ!!ウッウッウッ・・・」
タツメは泣き出してしまった。ピエールとミザリーが宥めて話を聞く。タツメが言うには、ピエールが魔王を引退してミザリーが魔王になったという通知が届き、魔王城に行った。丁度そのころはエジルが魔王城を支配していた時期で、衛兵に追い返されたそうだ。
そして、新たにエジルを魔王軍四天王から解任したという通知が来たので、もう一度魔王城に行ってみたら、セバスがムリエリアを教示してくれたそうだ。
「そうか、それは迷惑を掛けたな。それでこれからも四天王としてミザリーを支えてくれるな?」
「もちろんさ!!」
「ところで、そちらの女性はどういった方なのだ?」
「ああ、プーランだね。えっとね。話せば長くなるんだけど・・・・」
タツメの棲み処の付近の村は、若い女性を生贄に捧げる風習があるらしい。まあ、これはゲームの知識があるので、知っていたことだが、実際は、生贄の女性を遠く離れた土地まで運んで、解放しているようだ。
「最初は、村でいじめられている少女を助けたことが始まりなんだ。もう何百年も前の話なんだけどね。それから時が経って、何がどうなったのか分からないんだけど、何年かに一度生贄が捧げられるようになったんだ。『もう必要がないから帰れ』って生贄の娘に言っても、村に戻ったら酷い目に遭うから、それはできないって言うし・・・・・。仕方がないから希望を聞いて、遠くの町に運んでいってあげてるのさ。
それでこっちのプーランなんだけど、僕と一緒に居たいと言って聞かないから、一緒に行動してるんだよ」
ゲームでは、問答無用で生贄を食い殺す邪龍として描かれていたが、ここまでタツメと話してみて、そんなイメージは全くない。体のサイズも子犬位だし、なんだかペットみたいだ。
「そうなのです。なぜかタツメ様との出会いが運命と思うようになってしまって・・・・」
そうなるよね。ストーリー的には・・・・。
ゲームでは、エジルに呪いを掛けられて、邪龍になったのを助けるんだけど、エジルは行方不明だし、呪いを掛けられるイベントが発生しないので、無理やり辻褄を合わせにきたのだろう。
「事情は分かった。それでこれからどうするのだ?」
「うーん、どうしようか?特に行く宛てもないし・・・ミザリーと一緒に居たほうがいいのかな?」
ミザリーとピエールが私を見て来る。多分そういうことだろう。
「えっと、ヤマダ商会で働く気がありましたら、仕事は用意しますよ。お給料も出ますし。たちまち、お二人で配達業務をしてもらえるだけで、かなり助かります」
「じゃあ、お願いしようかな」
ということで、なぜか、古龍と「竜騎士」を雇用することになってしまった。
★★★
タツメとプーランを雇用して2週間が経った。
急ぎの配達をメイン業務としていたのだが、意外なことに新型の乗物開発の業務に携わるようになってしまった。
雇用して1週間が経過したとき、ヤマダ商会の各部署を研修として見て回ってもらっていたのだが、トルデコさんの工房を訪れたときに奇跡の再会を果たしてしまった。
「ディート!!ディートだよね?なんでこんなところに?」
「その声にその小さなドラゴンの体はタツメかな?300年ぶりかな?」
同じ長命種なので、面識があったようだ。そこから、ディートに今している仕事の自慢をされていた。
「タツメ、僕は今、世界を変えるような乗り物を開発しているんだよ。これはハイエルフにもハイドワーフにも思い付かない理論で・・・・」
もうディートは一端の研究者になったような口ぶりだった。
「なるほど、地面の魔力を利用して、反発させるのか・・・・僕達が飛ぶときには、大気中の魔力の流れを上手く利用しているから必要ない技術だな。僕だったら地面の魔力だけじゃなく、大気中の魔力を利用する方法を考えるけどね」
「おいおい、それは無理だろう。大気中の魔力の流れが分かる奴なんているわけ・・・・そうか!!タツメに手伝ってもらえれば、開発が上手くいくのかもしれないぞ。クリス会長!!しばらくタツメをこっちに派遣してもらえないかな?」
「いいわよ。緊急の配達以外はこっちで勤務してもらう様にするから」
「「やったあ!!」」
二人は大喜びだった。
そして、1カ月後にはタツメの理論を応用した異世界リニアモーターカーの小型の試作品が完成したのであった。
コストを考えるとやっぱり多くの人に出資してもらわなければならない。また、挨拶回りや発表イベントを開催しなければならないと思うと、魔王軍と平和条約を結んだからと言ってもゆっくりはできないな。
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