表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【完結】絶対に私は勇者パーティーに入りません!!~勇者パーティーに入ればバッドエンド確定の不遇なサブキャラに転生したOLの生き残りを賭けた戦いが、今ここに始まる  作者: 楊楊
第六章 勇者と魔王

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

103/137

103 元カレの結婚

「クリス、本当にすまない。俺はリンダと結婚する。リンダのお腹にはもう子供がいるんだ」


ダグラス王子にそう言われたが、正直な感想は「どうぞ、ご自由に」といったところだ。デートと呼べるものも2~3回しかなかったし、そもそも現代の日本人の感覚だと、2~3回デートしただけで、結婚を申し込むなんてありえない。


まあ、私もここに来た当初は必死で勇者パーティーに入らないように頑張っていたし、そのために、ダグラス王子を慕っているキャラ作りをしていたから、ダグラス王子も私が好きだと勘違いしても仕方ないだろう。


結局、私はどうするればいいのだろうか?


私は考え込んでいると、更にダグラス王子は話を進める。内容的には私のことを真剣に考えてはいたが、魔が差してしまったそうだ。まあ、あんな格好をした女に言い寄られれば、仕方ない面もあるだろう。リンダだってネームドキャラだから、決して不細工ではないのだ。


「本当にすまない。魔が差してしまって・・・・」


これに普段は大人しいムリエル王女がキレた。


「お兄様!!今度のことで見損ないました。魔が差しただなんて、そんな言い方はリンダさんにも失礼です。子供ができたから仕方なく結婚するという風にも聞こえます」


「そ、そんなことはない!!最初は成り行きだったが、今ではリンダのことを愛している。ここまで献身的に俺のことを支えてくれる女性はいない」


リンダは凄く嬉しそうだ。


「だったら、クリスお姉様はどうなるのですか?お兄様のことを誰よりも思い、待ち続けていたのに・・・」


私はムリエル王女を遮って言った。


「私は誰よりもダグラス王子の幸せを願っております。ダグラス王子がリンダ様を選ばれたのであれば、私から言うことは何もありません。それに罪滅ぼしとしての陞爵であればお断りします。今日は少し体調が優れませんので、これで失礼させていただきます。

最後に王妃となられるリンダ様、これまでの非礼をお詫びいたします」


そう言うと私は、会議室を出た。


ここであれこれ決めてしまうよりは、一端引いて態勢を立て直すことが大事だ。というのもダグラス王子に深い思い入れはないので、結婚したいわけではない。問題は私の最適な対応は何かということだ。

自分で言うのも何だが、私はそれなりにムリエリアやバーバリアの人間からも人気があるし、ダグラス王子を影で支えて来た人物だとロトリア王国の国民の多くが思っている。


そんな中で、いくら勇者パーティーといえども、私からダグラス王子を寝取った形になるリンダは国民感情的に憎悪の対象となるかもしれない。魔王軍とも和平が成立した今、ほっとけばいいと思うのだが、そうできない理由がある。ダグラス王子だけは闇落ちイベントがあるのだ。

ゲームでは、ダグラス王子が勇者に選ばれなかった場合のみ発生する。

ある条件が揃うと、国王となるのは自分ではなく、勇者として活動しているムリエル王女又はサマリス王子のほうが相応しいという思いが強くなり、そこを魔族に利用されて闇落ちするという感じだ。


状況的に後はエジルを倒せば、私のバッドエンドを回避できると予想しているので、余計な波風は立てたくない。現在、勇者はダグラス王子なのだが、システムの修正力的にはサマリス王子かムリエル王女が勇者として認定してもおかしくはない。

そう考えるとダグラス王子の闇落ちの可能性がある以上は、それを防ぐことが得策だ。ゲームでは、「希望の丘」で兄弟イベントを再び発生させると闇落ちが回避できる。この兄弟イベントは、ダグラス王子達の母親の墓に母親の残した手紙とミスリルのインゴットを三人で発見するというものだ。まあ、ミスリルの鞭を作成するために私はこのミスリルのインゴットを拝借したのだが、リルリランドでミスリルのインゴットを作れるようになったので、母親が残したインゴットの3倍の量を既にお墓に戻している。これなら三人分の武器が作れるし、利子をつけて返した形にもなるので、彼らの母親から祟られたりしないだろうと思う。


そんなことを考えながら廊下を歩いていると、ムリエル王女が追いかけて来た。


「クリスお姉様、お待ちください」


ここで私はある考えが浮かんだ。どうせなら、このまま兄弟イベントを発生させればいいのではないのかと。


「大丈夫よ。そんなに気にしてないから・・・もしよかったら、希望の丘に案内してもらえないかしら?」


「一体どうされたのですか?」


「ロトリア王とはお話をしたけど、お母様と話をしたことがなかったから、最後にお墓でご挨拶だけでもと思ってね。ダグラス王子とリンダが結婚すれば、そういった機会もないだろうし」


「だったら、お兄様達も連れて行きましょう。ダグラスお兄様にお母様にも恥ずかしくない行動をしてもらわなければなりませんからね」


こうして、私と主人公の三兄弟とリンダは主人公達の母親が眠る希望の丘に向かうことになった。母親の立場からすると久しぶりに訪れた息子が元カノと妊娠させてしまった女を連れて挨拶に行くなんて、複雑な心境だろうな。



★★★


私達のほかにロトリア王と狸宰相も立ち会うことになった。希望の丘に着くと私はムリエル王女達の母親の墓の前に立ち挨拶をする。


「クリスティーナ・ロレーヌと申します」


リンダも続く。


「リンダ・ドナルドでございます。この度ダグラス王子との結婚のご報告に参りました」


この場でもコイツは空気が読めないのだろうか?

ムリエル王女やサマリス王子の顔が引き攣っている。


まあ、そんなことはどうでもいいのだが、強制的に兄弟イベントを発生させるために私は行動に移る。少々強引だが、やるしかない。


「あれ?墓石が何かズレていますね。どうしたんでしょうか?」


そう言うと私は墓石の隠された細工を解除して、中から手紙とミスリルのインゴットを取り出した。


「なんと!!手紙とインゴットがあります。ムリエル王女!!これはお母様が残されたものではありませんか?」


ムリエル王女に手紙を渡すと、ダグラス王子、サマリス王子、ロトリア王も頭を寄せ合ってその手紙を読んでいた。ゲームでは、夫であったロトリア王への感謝の気持ちと子供達に対してメッセージがも残されていた。

ムリエル王女は引っ込み思案な性格なので、自分のやりたいことをしっかり主張するように、サマリス王子には何でも器用にこなせるけど、何か打ち込めるものを見付けてそれを全力で頑張りなさいとのアドバイスが書かれてあったと思う。

肝心のダグラス王子には、与えられた役割や仕事をやり遂げようという責任感が強いので、将来悩む時期が来るのではないか?との心配する内容が書かれていたと思う。

そして、これはよく覚えているのだが、アドバイスはこう書かれていたと思う。


「ダグラス、もっと自由に生きてもいいのよ。将来の王やサマリスやムリエルの兄としてではなくね。好きなことをやりなさい」



ムリエル達親子は、涙を浮かべながら手紙を読んでいる。FFQシリーズのファンとしては、このような貴重な光景が見られたことは本当に幸運だ。


しばらくして、ダグラス王子が口を開く。


「父上、私はリンダとともに「勇者の町」で暮らそうと思います。私は、与えられた国王ではなく、自らの手で新しい国を作ってみたいと思います。どうかお許しください」


「それがお前が決めたことなら何も言わん。しっかりやれ。それにロトリア王国の初代国王もどこかの国の王子で、この地にやって来て国を興したそうだ。お前も1000年続く国家の礎を築いてみよ。こっちのことは心配しなくてもいい。サマリスもムリエルもおるしな」


何とかダグラス王子の闇落ちは防げそうだ。


しかし、予想通りというか、ダグラス王子は主人公の勇者としてシステムの修正力に認定されなかったのかもしれない。実際はサマリス王子かムリエル王女を勇者として認定しているのだろう。それに私も闇落ち判定をしてくれれば、バッドエンドが回避できたことになるのだが・・・・


まあ、あまり期待せずにおこう。

システムの修正力は本当にしつこく私をバッドエンドに追い込もうとする。男なら絶対嫌われるだろう。

気が向きましたら、ブックマークと高評価をお願い致します!!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ