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【完結】絶対に私は勇者パーティーに入りません!!~勇者パーティーに入ればバッドエンド確定の不遇なサブキャラに転生したOLの生き残りを賭けた戦いが、今ここに始まる  作者: 楊楊
第六章 勇者と魔王

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102 平和条約 2 

王都アリレシアで緊急の国際会議が開催された。

主な参加国は三大国のサンクランド魔法国、マリシア神聖国、ランカシア帝国、勇者パーティーを出しているモンダリア騎馬王国、ザーフトラ共和国、レートランド王国、獣人の代表として獣人国ビースタリアだ。これにホスト国のロトリア王国と旧転職神殿に出資してくれている小国や独立都市の代表が続く。


会議参加者でこの件を知っているのは、三大国と獣人国ビースタリアだけだ。この四ヶ国の代表は複雑な表情をしていたが、事情を知らない他の代表者達は呑気な会話をしていた。


「帰りはちょっと旧転職神殿で遊んで帰ろうと思います」

「いいですね。私はバーバリアを中心に考えてますよ」


多分、ここに集められた経緯を知ると表情が一変することだろう。


会議が始まると、ロトリア王の挨拶が始まる。


「今日は緊急に集まってもらい感謝する。早速本題に入る。実は魔王及び魔王軍と和平の話が持ち上がっている」


会場がざわつく。


「ピエール殿、ミザリー殿、こちらへ」


ロトリア王の合図で会場に入った二人を各国の代表が見詰めている。ひそひそと話し声が聞こえる。


「あれが使者か・・・なかなかの強者と見た」

「魔王軍はダークエルフも重用しておるのか・・・侮れんな」


まあ、そう思うのも無理はないだろう。いきなり先代魔王と現魔王が来るなんて思わないしね。


ピエールは言う。


「我は第33代魔王、ピエール・ド・ミーラである」


会場は騒然となった。

少し治まったところでピエールは話始める。


「実は貴殿らに謝罪せねばならんことがある。実は我が部下の一人であるエジルが謀反を起こし・・・」


エジルが村や町を襲撃したことを話す。人体実験や戦争を起こさせ、大量の魂を集めて悪魔召喚を画策していることも包み隠さず話した。そして、自分もエジルに騙され、呪いを掛けられたことも。

そうしたのも思惑があってのことだ。エジルは今だ行方不明だ。エジルが姿を現したときに魔王軍と共同で討伐する流れを作りたい。つまり、魔王軍も人族の連合もみんながエジルの被害者ですよという話にする。


同情の声も上がる。しかし、町や村を襲撃された国の関係者は怒りを露わにする。特にキアラ王女の父親のビースタリア王は怒りが収まらないようだった。


「キエフ村の襲撃はそのエジルとかいう奴の仕業というのか!!キエフ村は多種族が共存するいい村だったのだぞ。それを・・・」


これに別の代表者も加わる。


「そうです。奪われた命は返ってきません。だったらどう落とし前をつけるのですか?」


ピエールは言う。


「タダで許してくれとは言わん。我も心を痛めておる。魔族領でも他種族が共存している町が被害に遭っておる。エジルの狙いは種族間の分断を図り、対立を起こさせることにある。どうか冷静になってもらいたい。我がいくら頭を下げたところで、納得がいかん者もおるだろう。

そこで宣言する。我は魔王をこちらのミザリーに譲って、退位する。そしてこのロトリア王国で人質となろう。こちらのミザリーは我が妹だ。魔王の兄を人質とすればそれなりに効果があると思うが・・・」


一同が押し黙る。

これもよくある古典的な手だ。商社でも、予め辞めたり、異動することが決まっていた者を責任を取らせて退職させましたと取引先に言って謝る方法があった。定年前の上司は最後の御奉公とばかりに3つの案件で責任を取って辞めたことにしていた。

今回は、もうミザリーが魔王だし、ピエールも本調子になるまでムリエリアに居るし、それにライラともなんかいい感じだしね。


ここでロトリア王が提案する。


「ピエール殿もこう言っておられる。ビースタリア王よ、貴殿の気持ちも十分分かる。しかし、対立するばかりでは前に進まん。それにこちらに控えておるヤマダ商会のクリス会長は自身もエジルの手の者に呪いを掛けられている。しかし、それでもピエール殿を許すと言っている。どうか、怒りをピエール殿に向けるのではなく、エジルの討伐に向けてはもえんだろうか?」


「むう・・・フィリップ殿がそう言われるのなら、我は矛を収めよう」


何とかなった。

ここでランカシア皇帝が思いもよらないことを言った。


「だったら我が帝国が総力を上げて、行方不明となっているエジルを探し出し、討ち取ってやろう。サンクランド魔法国に先を越されてはならんからな」


サンクランド王も答える。


「それはこっちのセリフだ。索敵に関しては我々のほうが確実に上だからな」


これにロトリア王が仲裁をする。


「お二方とも、今回だけは協力してもらえんだろうか?ランカシア帝国の武力とサンクランド魔法国の魔法技術があれば、いくらエジルといえども太刀打ちできないだろう」


「フィリップ殿が言うのであれば我が帝国は協力することもやぶさかではない」

「帝国が足を引っ張らなければ、こちらとしても非常事態だから協力はする」


更にビースタリア王も続く。


「この際、種族は関係なく共闘することをここに誓う。獣人は鼻がきく奴が多いからな」


更に他の代表者も続いて声を上げる。


なるほど、読めた。

ロトリア王もランカシア皇帝もサンクランド王もビースタリア王もグルだ。エジル討伐でまとまれるように芝居をしていたのだ。獣人と人族の対立、ランカシア帝国とサンクランド魔法国の対立をこの事件をきっかけに解消していこうという意図も見え隠れする。まあ、みんな王というだけあって強かなもんだ。


それからは会議は順調に進んだ。

基本的な事項は合意し、後は実務者レベルの打ち合わせとなった。今頃、代表者達はドラゴンステーキに舌鼓を打っていることだろう。会合の度にドラゴンステーキを用意するのは正直しんどい。それに会合の人数も毎回増えるし・・・・まあ、レベルが上がるからいいとしておこう。



★★★


次の日、各国の代表達はこぞって、ムリエリアや旧転職神殿に遊びに行ってしまっていた。私も一段落したので、ムリエリアに戻ろうと思ったのだが、ロトリア王から呼び出された。

指定されたのは、謁見の間ではなく、会議室のような場所だった。

そこにはロトリア王、宰相、サマリス王子、ムリエル王女、それに勇者パーティーのダグラス王子、マッシュ、リンダが居た。


ロトリア王が立ち上がって言う。


「クリス殿、いや、クリスティーナ・ロレーヌ騎士爵、貴殿を伯爵位に陞爵させる。これまでの多大な貢献、心より感謝する。領地が欲しければ、協議の上、伯爵家に相応しい領地を与えよう」


あれ?

まあ、評価されたことは嬉しんだけど、急にどうしたのだろうか?


「話はそれだけではない、この馬鹿息子のことだ。王としてではなく、父として謝罪をしよう。ダグラス、話せ」


狸宰相はさておき、ロトリア王に謝られることなんてないし、ダグラス王子にも当然ない。


しばらくして、ダグラス王子が言った。


「クリス、本当にすまない。俺はリンダと結婚する。リンダのお腹にはもう子供がいるんだ」


「はい?」


思考が追い付かない。少し冷静に考えよう。

気が向きましたら、ブックマークと高評価をお願い致します!!

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― 新着の感想 ―
[良い点] 今回の政治的な話は落としどころが巧みでしたね。 先に裏で話を付けておいて会議の場でさも今決まりましたよ、という風に見せかければ他の国々も納得せざるを得ないでしょうし、魔王も責任を取って引退…
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