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8-6

「ね、ねえ、どういう事……?」

 隠花はおどおどしながらひがんの手を借りて立ち上がりつつそう問いかける。


「あいつが私にいやらしい事をするのは分かっていた。だからやられるふりをして隙を待った」

 ひがんはいつも通りの無表情でそう答えた。


「それで、私の思惑通りになったから。これを突き刺したの」

 隠花が立ち上がり、涙が止まっているのを見たひがんは、片方の手に持っていた先が尖った黒い水晶のようなものを隠花に見せた。


「ひがんちゃん、鎌以外にも出せたんだ」

「うん」

 精神世界は思いの世界。

 本人の思いの力が強ければ、何だってなれるし何でも生み出せる。

 その事を思い出した隠花は、大きく頷きひがんに感心した。


「よ、よくも……、こんな事を……」

 不意打ちを受けた春先に、今までの圧倒的な余裕は無かった。

 彼はふらつきながら立ち上がるが、ひがんに刺されたみぞおちからは白いどろどろとしたものが流れ続けている。

 それは、傷口こそ大きくはないが、確実に急所を捉えている証だった。


「さあ、もう一回いくよ。カイカちゃん」

「うん!」

 魔女二人は春先の方を向き、再び武器を天高く掲げた。

 限界突破の力を使う二人の、武器を持つ力は強い。


「お父さんとお母さんの仇……!」

 ひがんはそう一言つぶやき、歯を食いしばった。

 すると、今まで以上に赤黒い霧のようなものが大鎌を飲み込んでいく。


「待て! 早まるな! 助けて――」

 春先は青ざめた。

 患部を当てていないもう片方の手を迫りくるひがんへかざし、どうにか攻撃を制止させようした。


「ジャッジメント!!」

 だがひがんに情けも容赦もない。

 赤黒い霧は、やがてローブのようにひがんを覆いつくし、大鎌はいつもの数倍の大きさへと変化を遂げる。

 さらに隠花から青白い援護の光を受けるのを確認すると、巨大な大鎌を何度も振り回し、春先を薙いだ!


「…………」

 春先を切り捨てたひがんの、赤黒い霧は消失する。

 そして無言無表情のまま、元のサイズに戻った大鎌を大きく動かして血振りをした。


「ば、ばかなッ……、こ、この……ぼく……が……」

 その瞬間、春先の体はバラバラとなり、閃光を伴う爆発を引き起こして粉々に砕け散った。


「……終わったよ。お父さん、お母さん」

 ひがんは振り返る。

 自身の家族、友人、人生を貶めた悪鬼の最後を見届けるため一切瞬きをせず、少しも視線を逸らすことなく消滅していく春先を見続けた。


「帰ろう」

「うん!」

 爆発が終わり、展開された精神世界は元の現実世界へ戻っていく。

 ひがんの表情を見た八坂と藤壺は、大きく頷くと持っていたスマホで電話をかけた。



 この事件は、芸能界を大きく揺るがせた。

 藤壺がこっそり録画、公開していた動画がSNSやネットで話題となり、海外のテレビ局では専用の特集を組まれる程となった。


 藤壺は責任を取り取締役を辞任する事を発表。

 他の取締役も同様に辞任を発表し、これによりテレビ局の取締役は全員総入れ替えとなった。


 新たに任命されたテレビ局の幹部達は、それでも沈黙を保ち事件に関する事を一切口にしなかったが、逆にそれが火に油を注ぐ結果となってしまう。

 結果、ネットは連日炎上し続け、テレビ局の幹部が何者かに爆弾テロをされて重傷を負い、春先プロデュースのアイドルユニットやお笑い芸人コンビへの度重なる嫌がらせが続き、挙句の果てには被害者を中心とした数千人規模のデモ活動にまで至ってしまったのだ。


 事態を重く見たテレビ局は第三委員会を設けてこの一連の事件を調査を依頼した。

 調査の結果が分かると同時に、この悪行の首謀者である春先は被害者から告訴されてしまい、裁判沙汰に発展。

 幾度かの裁判を経て、春先は悪質な婦女暴行罪と強制わいせつ罪、それらのほう助で執行猶予なしの懲役十五年と重い求刑を受けた。

 彼の年齢を考えると、二度とキラキラした世界へ戻る事は無い……。

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