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「ひがんさんとはどのように知り合ったのでしょうか?」
「ロリータ一年目とお聞きしましたが、どうしてロリータ服を着るようになったのでしょう?」
「隠花さん、とても可愛らしい~」
ロリータお茶会初参加であり、トップモデルのひがん本人から大切な友人である事が公言された隠花は、他のロリータ女子から質問攻めにあっていた。
「えっ、あ、その……、元々ろ、ロリータは好きで……」
「あら! そうだったんですね!」
「うふふ、隠花さん、可愛いですね~」
隠花は赤面していたが、不快な気分ではなかった。
それはひがんに公然と友人である事を認めてくれたのと、同じ趣向の人達からの問いかけだからだ。
だから隠花は、ところどころ不慣れで言葉に詰まる部分はあったが、質問に答えていった。
「ひ、ひがんちゃんとは、お、同じクラスで……」
「まあ! 同じ学校だったのですね!」
「クラスメイトにひがんさんが居るなんて羨ましい~」
「きっと学生姿のひがんさんもお綺麗なんでしょうね~」
「う、うん、そ、そうですね……あはは……」
だがやはり人付き合いに慣れていないせいか、どこかぎこちない感じは否めなかった。
それから他のロリータ女子に誘われる形で、隠花も個人撮影をする事となった。
隠花は写真を撮られるのもあまり慣れていなかったせいで、アドバイスされたポーズくらいしか取れず、基本的にはもじもじしたままだった。
こうして時間は過ぎていき……。
「はーい、そろそろお時間ですので、最後に皆様で集合写真を撮りましょう」
ロリータお茶会の〆として、参加者全員の集合写真を撮ることがある。
お茶会の風景と集合写真をネットに掲載して、雰囲気を他の人に知ってもらうためだ。
他の女子達は慣れた様子で家具のない広がった場所へ集まっていく。
隠花もそちらへ集まり、隅っこの一番奥の列へ立ったが……。
「隠花ちゃんこっち」
ひがんは隠花の方を向き、そう告げた。
「えっ⁉ 私が一番前……」
隠花は思わず目を丸くしてしまった。
集合写真では目立たないように隅でかつ後ろの列が、彼女の定位置だったからだ。
一番前で撮影した事は、生涯一度も無い。
「折角の初めてのお茶会ですし、ひがんさんのご友人ですし、よろしければ是非~」
主催者のまりあも両手を合わせ、笑顔で誘う。
他の参加者も笑顔で隠花を見守っており、とても断れる状況ではない。
「は、はい」
その事を察した隠花は、中央前列にいたひがんの横に座った。
そして生まれて初めて、一番目立つ位置で集合写真を撮った。
こうして、隠花の初体験は終わった。
お茶会が終わると次々とロリータ女子はカフェから出ていった。
最後に残った隠花とひがんは主催者まりあへ個別にお礼を告げた後、帰路へついた。
会場だったカフェを抜けて少し歩いた街道にて。
「隠花ちゃん」
「は、はいっ!」
「どうだったかな?」
「う、うん。緊張すごくした」
「うん」
「でも、来てよかった。えへへ……」
お茶会が終了しても、隠花の胸の高鳴りはまだ止まなかった。
だから隠花は胸に手を当てたまま、笑顔でそう答えた。
「ひがんちゃん、誘ってくれてありがとう」
「うぅん、私も隠花ちゃんが来てくれて嬉しい」
「えへへ……」
胸の高鳴りの原因はひがんである事を察したのか、ひがんは無表情ながらもそう答えた。
そしてその事を聞いた隠花は、家に帰るまで終始笑顔だった。
お茶会から数日後。
闇寧喫茶店にて。
放課後、隠花とひがんは闇寧喫茶店でいつも通りアルバイトをしていた。
そんな最中。
「ひがん、隠花。次のターゲットが決まったぞ」
「はいっ!」
「うん。だぁれ?」
「海外マフィア、泰我亞に所属する金下という男だ。こいつの詳細は今二人のスマホに送ったから後で見ておいてくれ」
「わかりました。ちなみにどの程度の強さなんでしょう?」
「三等星だな。前に戦ったぶたりくよりは格下の相手だ」
ぶたりくより弱い事を聞いた隠花は、少し安心した様子だった。
「ただ、いつも通りのやり方では精神世界へ引きずりだせない」
「マフィアだから……ですか?」
「それもあるが、こいつは元々失うものがない。そういう奴は絶望感を与えられにくいからな」
「なるほど……」
隠花は今までを振り返った。
アイドルの紫陽花は、人気が失墜してアイドル活動が出来なくなった。
動画配信者のG2は、信用が失墜して動画の評価が悪くなった。
コスプレイヤーのぶたりくは、強力な後ろ盾を失った。
全員、自分らの欲望を叶えてキラキラしていたのが、魔女の手で出来なくなっていた。
今回の相手は、失うものがない相手。
だけどキラキラしている。
隠花は、そんな相手をどうすればいいのか、頬に手を当てて考えた。
「だから今回も二人と探偵の八坂も合流する」
「ほおほお……」
「三人で成敗してくれ。ひがんと隠花は八坂の指示で動いてくれ」
どうやら作戦はすでに決まっている事が分かった隠花は、何度か頷いた。
ひがんはその様子をいつもの無表情で見守っていた。




