表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
35/65

5-3

 数日後の放課後。

 闇寧喫茶店内にて。


 隠花とひがんはいつも通り、アルバイトをしていた。

 クラシカルなメイド服に着替えると、店の掃除を淡々と行っていく。


「ねえマスター」

「どうした? 隠花」

 そんな中、隠花は机の拭き掃除をする手を止めると、蝕美の方を向いた。


「このお店って儲かってます……?」

「そう見えるか?」

「ぜ、全然……」

 隠花の思っている内容はこうだ。

 彼女がアルバイトをしてから闇寧喫茶店は、ほとんど客が来ない。

 故に隠花はこのお店の経営状況を心配して話したのだった。


「普段は赤字だよ。けどたまにお茶会が開かれる。それでトントンってところだな」

「なるほど……」

「お前達が普段している格好のような女の子がいっぱい集まるぞ」

 ここで蝕美が言うお茶会とは、ロリータ服を着た少女達が集まるイベントの事である。

 ロリータ少女が集まり会話や料理を楽しんだりする。

 まるで中世ヨーロッパの貴族達がやっていたパーティを思わせるような内容となっている。


 勿論隠花も興味はあったし、調べて知識としてはあった。

 だが、人付き合いに苦手意識を感じる隠花が参加する事はなかった。


「確かに、ここのお店の雰囲気いいですからね」

 隠花がそう言うと、蝕美は何も言わずニヤリとした。

 この時、隠花はひがんの視線を感じてそちらを振り向いたが、ひがんと目が合うと思わず目線を逸らした。


 そんな中、喫茶店の入り口の扉が開く。


「こんちゃ」

「いらっしゃい」

 現れたのは探偵の八坂だ。

 以前出会った時と同じく、蝕美が居る近くのカウンター席へ座る。


「蝕さん、いつもの」

「あいよ」

 そして被っていた中折れ帽子を取ると、慣れた口調でそう告げた。


「こ、こんにちはっ!」

 八坂はホーリネスに関する情報提供をしてくれているだけではなく、闇寧喫茶店の常連客でもある事を知っていた隠花は、少し硬い笑顔で挨拶をした。


「こんにちは」

 八坂はそんな隠花を見ると、少しだけ口角をあげて挨拶を返した。


「そういえば、ロリータ服着ているんだって?」

「えっ? あ、はい。ひがんちゃんと遊ぶ時だけですけども……」

 突然ロリータ服の事を聞かれた隠花は、少しもじもじしながらそう答えた。


「近々、隣駅のカフェでロリータ女子のお茶会があるみたいだ。ひがんもゲストに呼ばれている」

「そ、そうなんですか?」

「その様子だと、初耳って感じだね?」

 隠花はひがんの方を向いた。


「私はお仕事で行くから、隠花ちゃんを誘わなかったの」

 ひがんの表情は相変わらず無表情だ。


「なるほど……」

 普段遊びに行く時はいつも隠花とひがんの二人だけだった。

 今回のお茶会はもっと人が集まるのは間違いなく、隠花が人見知りである事を配慮して、敢えて伝えなかったのを察して何度か頷いた。


「来る?」

「えっ」

 ひがんの誘いに、隠花はメイド服のエプロンの裾をぎゅっと握っていた。


「う、うーん。ひがんちゃんがいいなら……」

 この時、蝕美と八坂は少し驚いたような表情をしていた。

 だがもじもじとした隠花はその二人の様子に気づくわけもなく、ひがんは大人二人の方に視線を一瞬向けたが、すぐさま隠花の方へ戻した。


「じゃあ主催者に連絡するよ」

「あ、ありがとう。本当にいいの?」

「うん、来てくれると嬉しい」

「迷惑じゃない……かな?」

「うぅん、隠花ちゃんが一緒に居て迷惑なんて思った事一度も無いよ」

 ひがんがそう淡々と自らの思いを打ち上げていく。


「や、やだなあもう! 照れちゃうって~~」

 そんなひがんに対し、隠花の顔は真っ赤になっていた。


「ほう、ひがんが喜ぶなんて珍しいね」

「ああ、隠花と出会ってからひがんが随分明るくなったし口数も増えた」

「えっ、ひがんちゃん喜んでいるんですか?」

「ああ」

 隠花を喜ばす言葉を言ったひがんの表情は、いつも通り無味乾燥だ。

 隠花も、”私には普段と変わらないように見えます”と言いたげな表情をする。


「うぅん、そんな事ないよ」

 蝕美と八坂の発言に、ひがんは首を何度か振った後に止めていた掃除を再開した。

 それを見た隠花も、ひがんと同じ様に止めていた手を動かし始めた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ