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5-1

 ぶたりくを成敗してからしばらく経ったある日。

 駅近くのアニメグッズ販売店、入り口前の道路にて。


「わくわく……」

 シャツとマキシ丈のスカートを着た女性や、大手ブランドのパーカーとジーンズのズボンを穿いた女性、ピンク色で裾にフリルがついたワンピースを着た地雷系少女が並んでいる。

 その中に、ロリータ姿の隠花とひがんの姿がった。


「隠花ちゃん、楽しそう」

「そりゃ楽しいよ! だってずっと楽しみにしてた推しキャラのグッズだからねっ!」

 今日はアニメグッズ販売店で、隠花のお気に入りのキャラクターが出ているアニメのグッズが販売される。

 しかもそこの販売店限定で、今後再販の予定はない代物だ。


「あっ、でも、ひがんちゃんついてこなくてもよかったのに……」

「気にしないで」

 最初は隠花だけで行く予定だったが、ひがんに今日の事を告げると彼女もついていくと言ったのだ。


「ひがんちゃんはそういうのとか興味なさそうだよね?」

「うん」

 当然、ひがんはそういったグッズに興味は無い。


「やっぱり帰った方が……、並ぶのも大変だよ……?」

 事実、隠花はショップ開店の二時間前に並び、ひがんもそれに付き合っている。

 これから過ごす二時間は途方もなく長く、決して楽なものではない。

 だから隠花は申し訳なさそうにもじもじしながらも、ひがんにそう告げたのだが……。


「うぅん」

「そ、そう」

 ひがんはいつも通りの無表情のまま、首を横に振った。


「隠花ちゃんは私の大切なお友達。だからついていく」

 そして、首を振り終えた直後にそう一言告げたのだ。


「えっ」

 隠花はその言葉に、思わずびくりと体を大きく振るわせた。


「じー」

 それらの反応を、ひがんはただじっと凝視していた。


「や、やだなぁ! 照れちゃうよー! もー! 恥ずかしいなあ~!」

 隠花は顔を真っ赤にさせながら、両手を振った。

 そんな隠花に対してひがんは、軽く一つ頷いた。


 それから二時間後……。

 ショップ前の列は長蛇となっており、店の敷地を囲むくらいになっていた。

 隠花とひがんは早めに並んでいた甲斐もあって、二人の先に居るのは十人程度くらいだった。


「はーい! それではネコミミフェイバリットの限定ラバーストラップ販売を開始しまーす! おひとり様一点まででお願いしまーす!」

 ショップの扉が開くと、一人の小太りな男性店員が現れて高い声でそう言い放つ。


 隠花は確信した。

 これなら確実に限定品を購入できると。

 そう思うと、胸がさらに高鳴るのを自覚し、スカートの裾をぎゅっと握りしめていた。


「な、なにこれ!」

 だがしかし、店員の声と共に近くに止まっていた車から次々と人が出てくると、なんと列の先頭に割りこんできたのだ。

 割り込みを行う人は、顔立ちこそ国内の人と変わらないものの男女共にくたびれたシャツを着ており、どこか嗅ぎなれないにおいを纏っていた。


「ちょっと何なの」

「勝手に割り込んでるよ!」

「店員! おい店員なんとかしろ!」

 当然、隠花の前に並んでいた女性達は黙っているわけもなく、それに対して不満を訴えたが……。


「〇△×□※……」

「◆●×▼……」

「●×! □◇△!」

 割りこんできた人らは聞きなれない言語で話しており、それを聞いた女性達は閉口してしまったのだ。


「すみません、ちょっと割込みは……」

 列の割り込みは当然ご法度であり、マナー違反である。

 この店でもそれは同様であり、小太りな男性店員は注意をしようと話しかけた。


「※×●△!!」

「●〇◇!!」

 だが先ほどと同じく聞きなれない言語でまくしたてられてしまった。

 言葉のイントネーションから、怒っているようにも聞こえなくはないが、この場に居る全員が彼らの言葉を理解する事は出来ず……。


「あ、ちょっとお客さん!」

「〇×〇×!」

「◇◆△▽!!」

「……※×◎〇!」

 聞きなれない言葉を話す彼らは、小太りな男性店員を押しのけて半ば強引に我先にと店の中へ入っていってしまった。



 それから数分後。


「結局買えなかったや……」

 隠花は限定品を購入する事は出来なかった。

 結局、先ほど割り込んできた聞きなれない言葉を話す輩が個数限定も無視して、全て買っていってしまったからだ。


「ちょっと何あれありえなくない?」

「酷いよね……」

「レジの人も一限なんだから止めろってのに」

「いや、無理矢理お金置いていったんだってさ……」

「はぁ信じられない」

 同じく限定品を買えなかった人らの話を横耳で聞いた隠花は、肩をすくめてしかめっ面をした。


 その後、長い間一緒に待ってくれたひがんの方を見た。

 ひがんはいつも通りの無表情だったが、隠花は少し申し訳なさそうにもじもじすると……。


「ま、まあここまで酷いのは稀だけど、似たようなことは結構あるから!」

「そうなの?」

「うん、こういう限定品ってフリマサイトで高く売れるからね。仕方ないよ」

「ふむ……」

「ひがんちゃん、お茶しよ! 折角来たからね!」

「うん」

 隠花は大きく息を吸いこむと、ひがんの手を握って誘った。

 隠花の誘いにひがんは迷わず首を縦に一つ振った。

 この時、無味乾燥なひがんの表情が少しだけ温かになったように見えた。

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