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4-7

 ひがんの大技で、この戦いに決着がついた。


 ……はずだった。


「……やってくれるじゃないさ」

 なんとぶたりくはまだ動こうとしていた。

 ぶたりくは顔だけあげてひがんの方を向きながらそう言うと……。


「だがネ! お前らはモウ終わりなんだヨッッ!」

 震わせながらも手を伸ばし、指をくいっと曲げる。


「オオオォオオォォオオ!!!!」

 すると三人のゾンビ少女が断末魔の叫びをあげると共に、口から白く輝く液体をまき散らして苦しみ出した。

 それらの様子は、過去にアンズが爆散した時の同じ状況だった。


「全員吹っ飛べッッ!」

 アンズ一人でも、ひがんに大きなダメージを負わせられた。

 それが三人だとしたら、隠花もひがんもタダでは済まない。


 ひがんは腰を落として構えた。

 爆発に備えて、少しでもダメージを軽減するためだった。


「カイカちゃん?」

 だが隠花は違った。

 普段はおろおろするだけの隠花は、どういうわけか目を閉じ杖を両手で持って意識を集中させている。


花姫の王杖(クラウンハート)、精神限界突破」

 青色の光と金色の光は、隠花の体から腕を伝って昇っていく。

 やがて杖には二色の光が満ちていき、杖の先端についている王冠飾りが強く輝きだすと……。


「リリースアンドサディッション!」

 隠花がそう言い放った瞬間、杖に蓄えられた光はカメラのフラッシュのように周囲を青色と金色に染めていく……。


 そしてなんと、今にも爆発しそうだったゾンビ少女はその場で力なく倒れて動かなくなったのだ。


「な、なんダとッ!」

「今だとリコリスちゃんっ!」

 隠花の言葉に反応し、ひがんは倒れたぶたりくへ一気に距離を詰めていく。

 そして大鎌を振りかざして、ぶたりくを両断した。


「そ、そんな……、ばか……な」

 ぶたりくは顔をゆがめたまま、光の粒となって消滅した。

 その直後、景色は元の色へと戻った……。


 ひがんと隠花は早々にこの場を去った。

 幸い、連れてこられた場所は二駅先のホテル街で、最寄りにバス停もあったので無事に闇寧喫茶店へと戻る事が出来た。



 闇寧喫茶店にて。


「お疲れさん。よくやったな」

 帰ってきた二人に、蝕美は笑みを見せながらねぎらいの言葉をかけた。

 それに対して隠花は照れながらもじもじし、ひがんは無表情のまま一つ頷いた。


 隠花は蝕美に今回の事を報告した。

 そして、二人が精神限界突破した事を聞くと、蝕美はグラスを磨く手を止めた。


「ほお、隠花も出来るようになったのか? あれは高等テクニックなんだぞ?」

「あっ、えっと、ひがんちゃんがやってたのを見てて、私にも出来るかなって思って」

「うん。私も驚いた」

「初めてだし見様見真似だったけど、ひがんちゃんを助けたかったし……」

「……なるほど。ひがんを助けたいって強い思いがあったからこそ成せたってわけだな」

「は、はい……」

「隠花ちゃん、ありがとう」

「えへへ……嬉しい」

「だが、あまり使うなよ。負荷が大きすぎるからな」

 蝕美は隠花を強く睨みながら、少し厳しい口調でそう告げた。

「分かりました」

 彼の態度がどういう意味なのかを察した隠花は、ロリータ服のスカートの裾をぎゅっと握りながら、彼の目を見返し言った。



 数日後、ぶたりくの逮捕がニュースに流れた。

 隠花とひがんのもつタリスマンは発信機とボイスレコーダーの役割も兼ねており、ひがんが蝕美に戦いの終結を告げると彼から警察へ通報したからだ。


 蝕美の通報が決定的な証拠になった事と、闇風俗の顧客への失態が効いたのか、誰も彼女を守ろうとはしなかった。

 有罪確定は時間の問題であり、強力な後ろ盾も無くなった彼女がコスプレイヤーとして活躍する事が無いのは確定だった。



 同時期、別の場所では……。

 警察による取り調べや調査、匿名のタレコミによって闇風俗の拠点の一部が発覚した。

 その結果、ぶたりくの手によって闇風俗へ売られ、ホーリネスになってしまった少女達は救出された。

 全員が心に深い傷を負っており、治療には時間はかかるだろう……。


 モデルのアンズも救出された一人だ。

 救出当初は食事もろくに口につける事が出来なかったが、次第に僅かな時間だが会話出来るようになっており、周囲からは回復と社会復帰が期待されている。



 それらの出来事は、当然ぶたりくの飼い主である春先にも伝わっていた……。


 国内某所、商業用ビルの会員制高級サロンにて。


「春先様、お伝えしたい内容がございまして……」

 スーツを着た、春先の部下と思わしき人物は落ち着きがない。

 そんな部下の様子を春先は、胸の形がはっきりと分かるドレスを着た美少女を(はべ)らせながら、不機嫌な様子でちらりと見つめると……。


「ぶたりくちゃんの事でしょ? 知ってるからいい、持ち場に戻って」

「は、はい」

 右手を振り、素っ気無い態度で部下を追い返そうとする。

 部下は落ち着きのないまま、深く一つだけ頭を下げると春先から離れて行った。


「……魔女ねぇ。そろそろかな」

 この時も、照明の角度のせいで春先の表情はうかがえない。

 だが明らかに不快感を表しているのは明白であり、両脇に居た美少女はそれを解消しようとするべく春先との距離を限りなく無くそうとした。

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