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姫魔女と二等星ホーリネス・ぶたりくとの戦いが始まった。
「はぁっ」
ひがんは息を深く吸い口を閉じると、ぶたりくへ一気に駆け寄り大鎌で両断しようとする。
だがぶたりくは身を翻して避け、後方へ跳躍して間合いを取った後に鞭をひがんめがけて振るった。
「ほらホラどうしたッ!」
ひがんはぶたりくの鞭を持っていた大鎌の柄や刃の部分で払いのけると、地面を踏みしめて再び距離を詰めて大鎌で断ち切ろうとする。
ぶたりくは上へと大きく飛んで回避し、落下と同時に鞭でひがんを打ち付けようとしたが、ひがんも後方へ飛んで間合いを開けて回避した。
こうした攻防が目まぐるしく続き、お互いの一進一退の攻防を繰り返し続けていた……。
「リコリスちゃんを守らなきゃ……!」
そんな中、隠花は杖を両手で持って目を閉じて強く祈ると、ひがんの体が青く光り輝きだす。
ひがんは隠花の方を振り向いて一つ頷くとぶたりくへ再び駆けて近寄り、大鎌で横に薙ぎ払った。
すると、今まで避けられていたひがんの大鎌は、ぶたりくの眼前をかすめたのだ。
結果、ぶたりくの前髪はほんの数本だけだが、はらはらと地面に落ちた。
隠花が使ったのは、ひがんを補助する力だ。
その内容は一時的に筋力を増強させるもので、その結果大鎌を速く力強く振り払う事が出来た。
「ギギャ、アイツが邪魔か……」
その事はぶたりくも気づき、補佐に徹している隠花を先に排除するべく、人差し指をくいっと折り曲げた。
「うぁあああっっ!!」
すると、今まで呆然と立っていた三人の少女のうち一人が、隠花の方へと口を開けて両手を出しながら走ってきて襲い掛かったのだ。
口からは白い唾液がこぼれおち、白目を向いていて尋常ではない様子だ。
その様は、まるで海外の映画でよくあるゾンビのような感じだったので、隠花は思わず高い声をあげた。
「カイカちゃん!」
ひがんは隠花の方を向き閉じていた口を開いた。
表情こそ出さないが、いつもよりも強い口調が彼女の焦りを表していた。
「なんダと……?」
少女の両手が隠花を体を鷲掴みにしようとした手前。
手は何か壁にぶつかるようにほんの少しの合間を開けて止まってしまった。
「ご、ごめん、驚いただけだよ! 私はいいから、リコリスちゃんはぶたりくを!」
隠花の言葉に呼応するかのように、隠花の周囲にうっすらとドーム状の青白い光の輪郭が見える。
この時隠花は、自らの身を防ぐ結界を展開しており、少女はその結界に阻まれてしまったのだ。
「ギギ……、これでサポートはもうナい……」
ぶたりくの言う通りだった。
隠花が結界を展開すると、ひがんを包んでいた光がみるみると消えていった。
つまり、ひがんへのサポートは解けたという事であり、ぶたりくはそれを見逃さなかった。
「あなただけなら、私一人で十分だよ」
「じゃア無理だなッ!」
ぶたりくは、再び人差し指を折った。
すると、今まで呆然としていた二人の少女のうち一人がひがんの方へと駆け寄り、両手で体を掴もうと飛び込んできた。
「…………」
ひがんは再び大きく息を吸って口を閉じると、横に跳躍して少女を避けた。
少女は勢いがつきすぎたせいか、そのまま顔から地面へ前のめりになって転倒してしまう。
「貰っタッッ!」
ゾンビのように襲い掛かる少女に一瞬気をとらせた隙を、ぶたりくは逃さなかった。
ぶたりくは手首を器用に上下左右に動かして鞭を振るう。
すると今まで直線の動きだけだった鞭は、まるで獲物に襲い掛かる毒蛇のように素早くうねりながらひがんに迫り……。
「くっ……」
ぶたりくの鞭はついにひがんの体を打ったのだ。
ひがんは息を大きく吐くと同時にバランスを崩して倒れてしまった。
「ギャハハッ! お仕置きダよ覚悟しナッッ!」
ぶたりくは鞭で倒れたひがんを何度も打ちつける。
ひがんは倒れながらも上半身の動きと大鎌で防ごうとしたが、全ての攻撃を防ぐ事は出来ず何度か受けてしまった。
立ち上がろうとも試みるが、先ほど避けたゾンビ少女が下半身にまとわりついているせいでそれもままならない。
「リコリスちゃん!」
結界を展開すれば隠花は守れるが、ひがんが危うい。
ひがんを補佐すればぶたりくを倒せる可能性があるが、隠花が危うい。
「どうしよう……、どうしよう……」
隠花は自分に迫る少女の必死で決死な形相と、窮地に陥ったひがんを何度か見返した。
「……ううん。悩んでる場合じゃない。私は決めたんだ、リコリスちゃんを守るんだって!」
そして隠花は目を何度か擦り、歯をぐっと食いしばりそう言い放つと……。
「カイカちゃん!」
なんと自らに張っていた結界を解除し、ひがんの強化へと力を注いだのだ。
今まで結界に阻まれていたゾンビ少女の手は隠花の体を掴むと、たちまちまとわりついて隠花を押し倒そうとしてくる。
「私はいいから! 早くっ!」
ゾンビ少女の指は、隠花の体に食い込んでいく。
だが隠花は、杖を手放さないよう両手で握ると共に、ぐっと強く踏みしめて転ばないようにした。
「ありがとうカイカちゃん。……ならとっておきを見せてあげるよ」
そんな隠花の強い意思を感じたひがんは、目を閉じて一言告げる。
すると今まで防戦一方だったひがんは、ひがんにまとわりつくゾンビ少女をふり払い、今までにない素早さで立ち上がってぶたりくとの間合いを開けた。
「夢喰いの大鎌、精神限界突破」
そして、大鎌を頭上高らかに掲げた。
すると刃先から柄へと瞬く間に赤黒い光に覆われていく。
やがて大鎌に宿っていた赤黒色の光はやがてひがんの手を伝い、全身を覆い尽くしていく。
「ジャッジメントッ!」
ひがんがそう言い放った瞬間だった。
赤黒色の光が全身に満ちると、ひがんは大鎌を幾度も振り落としぶたりくを斬った。
まさに一瞬の出来事で、ぶたりくが反応する事も、反撃する事も出来なかった。
その様はまるで、生者の魂を刈り取る死神のようだった……。
斬られたぶたりくは後方へ大きく吹き飛ばされ、全身を打ちつけた。
震えながらも何度か立とうとするが、その度に地面を舐めている様子から、もう戦えない状態である事は明白だった。
勝負は決した。
隠花とひがんは、ついに二等星クラスとの戦いに勝ったのだ!




