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4-4

 数日後の夜。

 某所繁華街にて。


 隠花の自宅から数駅先。

 そこから歩いて数分程度の距離にある広場には金塗りの大時計があり、地元に住む人なら知っている、待ち合わせの場所として有名な所である。

 現に、カップルや同性の友人らが次々と合流し、繁華街の中へ消えていく様子が見られた。


 そして隠花とひがんもまた、そこで待ち合わせをしていた。

 二人ともロリータ服を身に纏っているせいか、通りがかりの人と視線がよく合う。


 隠花は今回の作戦に不安を感じているせいか、そわそわとどこか落ち着かない様子だ。

 ひがんは、いつものストレートの銀髪ロングヘア―ではなく黒髪のボブカットのウィッグをつけており、濃い黒のアイシャドウと真っ赤な口紅でメイクしていて、黒のロリータ服もチェーンや革のベルトをあしらっているせいか、ゴシックかつパンクな印象が強い。

 また、紫色のカラコンをつけているせいもあって、まるで別人の様相だ。

 恐らくはモデルのひがんである事をばれない配慮だろうと隠花は思い、特にファッションに関して話す事をしなかった。


「ごめんねぇ! 待たせてしまってさー」

「あっ、はい。大丈夫です」

 待ち合わせの相手。

 それは今回のターゲットであるコスプレイヤーのぶたりくだ。

 今日の格好は白いシャツにレザーのスカートと、いつもの過激なコスチュームでは無かった。


 蝕美の作戦により、隠花とひがんがおとり役になった。

 過去にぶたりくから連絡先が書かれた名刺を貰っていた事を思い出した隠花は、彼女に連絡を取って仕事をしたい事を告げると、ぶたりくはすぐさま日時と場所を指定してきたのだ。


「嬉しいよ、仕事受けてくれるなんてさー」

「は、はい……」

 ぶたりくも本当に連絡が来るとは思っていなかったのか、じろじろと隠花とひがんを見ながらそう言った。


「どうしたの急にさ? だって君って真面目そうだしさ?」

「えっ? あ、その……」

 ぶたりくは意地の悪い笑みを見せてそう問いかけると、隠花はさらに挙動不審になってしまう。


「それにそっちの子は君のお友達? 前はモデルのひがんと一緒だったけど、意外と交友関係広いとか~?」

「いや、その、お、お金がやっぱ欲しくって! 服も買いたいですし……。この子も同じ理由で!」

「なーるほど! そっかそっか!」

 隠花は慌てつつ、どうにか嘘をついた。

 そしてお金という単語を聞いた瞬間、ぶたりくの表情がはっと明るくなると、隠花はほっと胸を撫でおろした。


「ささ、これに乗ってさ、あとはこれもつけてねー」

「はい」

 二人はぶたりくの言われるまま、近くに停めていた車体が白のセダンに乗っていく。

 窓が黒のスモークで覆われているのと、ルームミラーに反射した運転手の顔がいかにも強面だったので、隠花は自分でも気づかないうちにひがんの手を握っていた。


 車に乗ると、二人はぶたりくから渡されたアイマスクをする。

 直後、車は発進し繁華街から離れていった……。



 某所。


 繁華街を出てから数十分が経った後。


「目隠し外してねー」

 ぶたりくに言われるまま、隠花とひがんは目隠しを外していく。


「ここは……?」

 彼女らの視界にあった光景。

 そこは赤い絨毯が敷かれており、白磁の壁で覆われた窓の無い部屋だった。

 天井には金で出来たシャンデリアがあるが、光量をあげていないせいか明かりが乏しい。

 カウンターキッチンや、大家族が使うような冷蔵庫、映画観賞用のスクリーン、ワインセラーが置いてあっても窮屈さを感じさせない。

 奥にはダブルベッドが三つ並んでいて、ベッドの近くにある机には手錠や首輪や鞭、大人の玩具が置いてある 


「ぶたりくちゃん、今日も可愛い子連れてきてくれてありがとうねぇ」

「本当、ピュアプリに入って満足してますよ」

「いやはや、紹介されて初めて参加ですが、嬉しいですねぇ……ヒヒ」

 そんな高級な部屋には、既に三人の男が居た。

 一人目は胸毛の濃くて筋肉質な体格の男、二人目は体毛がほぼなく肌色の白いビール腹の男、三人目は他の二人と比べて小麦色に焼けた肌の中肉中背の男。

 全員が舞踏会でつけるような仮面をつけているせいで人相は分からない。

 また、仮面以外は何も身につけておらずほぼ全裸の状態だ。


「…………」

「…………」

「……ぅ……ぁ」

 また、隠花やひがんとは別の少女の三人居た。

 三人はそれぞれ水着、ベビードール、ボンテージ姿になっており、惜しげもなく白く綺麗な肌を露出させている。

 また、三人の表情はどこか虚ろで、隠花が顔を見てもまるで反応を示さなかった。


 それらの光景に隠花は顔を歪ませて酷く嫌悪し、ひがんは相変わらず無表情のままだ。


「いいって事さ! またいい子見つけたら連絡するさー」

 二人の様子なんてお構いなしに、ぶたりくは手を振ると部屋から出て行こうとする。


「あ、あのっ! 聞きたい事が!」

 その時、隠花は大きく息を吸うと、声高にぶたりくへそう問いかける。


「仕事の内容とお給料は、そこのおぢさんから聞いてね」

 だがぶたりくは部屋から出る行為を辞めず、まるであしらうかのようにそう告げた。


「ねえ聞きたい事があるんだけど、ピュアプリって何なの? 今この状況と関係あるの?」

 次にひがんはいつものトーンのあまりない喋り方でそう問いかける。


「……別にあんたには関係ないじゃん?」

 ぶたりくは思わず足と止めた。

 だが振り向こうとはせず、扉の方をむいたままいつもより低い声でそう告げた後に……。


「あたしが君達に大金貰えるチャンスをあげただけさー。じゃ、あとはごゆっくり~♪」

 急に振り返ると、満面の笑みを見せて言った。

 この時ぶたりくの瞳には、かつて紫陽花やG2にもあった星のような強い煌めきがあった。

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