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3-4

 隠花のロリータデビュー当日。

 服を購入した後、二人は闇寧喫茶店へと向かった。



 闇寧喫茶店内にて。


「ごきげんよう」

「ご、ごきげんよぅ……」

 喫茶店の扉を開けるとマスターの蝕美と目が合った二人は、スカートを軽くたくし上げてお辞儀をした。

 ひがんは慣れた様子だが、隠花はどこかぎこちない。


「ひがんか、……ん?」

「あっ、えっと……」

 そして隠花のロリータ姿に気づいた蝕美は、皿を拭いてた手を止めてじっと彼女を見つめると……。


「ほー、見違えたな。結構似合ってるじゃないか」

「えへへ……、ありがとうございます」

 笑顔でそう告げ、隠花は顔を赤くさせた。


「ま、折角のオフだ。客も居ないしコーヒー驕るからゆっくりしていけ」

 蝕美はそう言うと、近くにあるサイフォンに水を入れて火をつける。


「ありがとうございます」

 隠花はもじもじさせている最中、ひがんはカーテシーをして一言だけそう告げた。


 二人は店内の一番奥の席へと座った。

 特に会話も無く、隠花はひがんの相変わらず美しいロリータ姿に見とれていると、蝕美が温かいコーヒーを持ってきた。

 隠花はこぼさないようにカップを両手に持ちながら飲み、ひがんはソーサーとカップの両方を持って飲んだ。


「ひがんちゃん」

「なぁに?」

 静かな時間が続く中、隠花はコーヒーを二口飲んだ後にひがんへ話しかけた。

 ひがんはソーサーとカップを机に置くと、いつもの無表情のまま問いかけた。


「今日は……、ありがと」

「うぅん」

「私、本当に嬉しいよ。好きなフリフリ着れた」

 隠花は顔を赤くし、ひがんから目線を逸らせながらそう告げた。


「あ、あとっ、ひがんちゃん、私に付き合ってくれてありがとう……」

 ひがんは相変わらず表情は変わらないが、温かいコーヒーを飲んだせいか白い頬にうっすらと赤みが帯びている。


「あ、あのさ、やっぱ私に良くしてくれるのって……、私が姫魔女だから……だよね?」

「…………」

 隠花は相変わらずひがんから目をそらしていた。


 何故なら、優しくしてくれたひがんの事を隠花は好きになっていた。

 だが、ひがんが隠花に好意的な理由は魔女という接点があるためで、隠花自身の人格に惹かれたわけではない事を分かっていたからだった。

 それでも隠花は、ひょっとしたらひがんが少しでも自分の事を好きでいてくれるという淡い期待を持っており、二つの相反する感情が胸の中でぐるぐると渦巻いていたのだ。


「私、隠花ちゃんの事好きだよ」

「えっ」

「魔女だからとかじゃない。私に出来た初めてのお友達だから」

 隠花は顔を赤くさせるだけではなく、目を丸くさせた。


「……私、お友達居ないから」

「そ、そんな事ないんじゃないかな? ひがんちゃん可愛いし」

 この時隠花は、ひがんの無味乾燥な表情がどこか寂し気なような雰囲気を感じた。


「横やり悪いが、ひがんは気をつかって嘘ついてるわけじゃないぞ。こいつ無口だし、その癖強引なところあるだろ? だから最初は好意的に接してきても大抵は離れていく」

「う、うーん」

 蝕美の言葉で、隠花はふと思い出した。

 ひがんは学校でもいつも一人で本を読んでいる。

 声をかける生徒がいても、相変わらず無表情で喜怒哀楽が乏しい返答をするだけで会話が続かない。


 強引さという所も心当たりがある。

 結果的には良かったが、隠花をロリータショップへ連れて行った事がそうだ。


 結論、ひがんの言う事を真実である事を隠花は確信したのだ。


「ありがとう。隠花ちゃん」

 そうやって脳内で過去回想している中、ひがんは一言お礼を告げた。


「えっ」

 この時、普段は一切表情を変えないひがんの口角が少しだけ上向きになった事に、隠花は驚くが……。


「い、いやあ~とんでもないよ! 私こそありがとうだよ! これからもよろしくね!」

 隠花は慌ててお礼の返事をすると、ひがんは軽く頷いた。


「お二人さん、申し訳ないがオフは終わりだ。仕事だ」

「あ、はいっ」

「うん」

 蝕美はいつの間にか出していたスマホを確認しつつ、二人にそう告げた。

 その頃にはひがんはいつもの無表情に戻っていた。


「相手はモデル。本名は犬飼修実、アンズという名前で活動している。ひがん知ってるか?」

「うぅん。知らない」

「そうか」

 アンズ本人が聞いたら激怒しそうなくらい、あまりにも素っ気無い態度でそう返答する。


 実は、これはアンズだからという理由ではない。

 ひがんはそもそも、身近の人以外の他人にあまり興味が無いのだ。

 さらにランキングに関しても同様で、仮にひがんがランキング圏外であったとしても同じ反応を取っただろう。


「そいつから光の因子が増大する反応を感知したとの連絡があった」

「分かった」

「場所は……、ここから二駅先にあるコーヒーチェーンだな。詳細はスマホに送ったから頼む」

 蝕美がそういうと、隠花とひがんのスマホも音がなる。

 事前にチャットツールで、光の寄生体打倒を目指す三人のみのチャットルームを作成しており、そこに蝕美からのメッセージが届いた音だ。

 二人は自分のスマホを取り出し、内容を確認する。


「今回はまだ被害が出ていないから、穏便に済みそうだな」

 被害というのは、以前に成敗した私人逮捕系動画配信者がやっていた、一般人への冤罪被害の事だ。

 これがまだ無い内は、直接対決して光の寄生体に犯された人物を成敗するだけでいい。


「ただ気になるのが、これだけ強い反応のに被害が出ていないって事なんだよな……。どういう事だ?」

 蝕美は独自の情報網やツールを駆使して、光の精神寄生体に犯された人物を探している。

 基本的には強い反応=より寄生度合いが進んでいる=一般人にも影響が及ぶという認識なのだが、その理論に当てはまらず渋い表情のまま首をかしげている。


「行ってくる」

「い、いってきます!」

 ひがんは一言だけそういうと店を出て行き、隠花は蝕みに頭を大きく下げた後、ひがんの後を追った。

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