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3-3

 時間は、隠花がロリータデビューする少し前に遡る。

 とある繁華街にあるコーヒーチェーン店内にて。


「はぁー⁉ またランキング五十位台じゃん!」

 一人のロリータ服を着た少女が、スマホを見ながらそう言った。


 彼女の名前は犬飼修実(いぬかいおさみ)

 アンズという名前で活動しているコスプレイヤー兼モデルだ。


 アンズは、毎週発表されるロリータ雑誌の人気レイヤーランキングを確認し、肩を落として落胆していた。


 ランキングは読者の投票によって、投票数の多い上位百名が選ばれる。

 ランキングが高いレイヤー程、注目されやすいしモデルとしての仕事も多く来る。

 特に上位十名は、雑誌の表紙を飾る事もあったり、ロリータブランドの専属モデルの誘いがあったり、中には大手芸能事務所への移籍もあったりで高待遇が約束されてきた。


 だがアンズのランクは五十位台。

 数多くいる読者モデルで、おおよそ五十人の一人に選ばれていると言えば聞こえはいいが、五十位台の読者モデルは精々小遣いが毎月一万から二万増える程度の仕事しか貰えない。


「一位のひがんとか反則だろこれ、こんな美人とか人生イージーゲームなんだろうなー。はぁー、私も一度でいいからランキング上位に行きたい……」

 アンズはため息をつき、窓から見える景色を眺めながらそうつぶやいた。



 数日後。

 とある街角にて。


「はーいアンズちゃんお疲れ~」

「お疲れ様です!」

 今日はアンズがモデルとして仕事をした日だった。

 アンズに来た久しぶりの仕事は、ロリータを愛する人に街頭インタビューを行うという内容だ。

 アンズはいくつか簡単な質問を受けた後、撮影をして終わる。

 他にもモデルが居たせいで、実際の撮影時間は十分程度だが待ち時間のせいで一日潰れてしまった。


「アンズちゃん」

「はい?」

「その服好きだよね、前もそれだったじゃない?」

「えっ? えぇ、このブランド好きなんです」

 実はアンズはお金が無かった。

 元々家は裕福ではなく、親から貰える小遣いでは当然高額なロリータ服は買えない。

 小遣いとモデル業で稼ぐ収入と、モデル業とは全然関係のない短期アルバイトの収入の何か月分かを合わせてようやく買えるくらいだった。


 だから今日の撮影も、以前の撮影に着ていった服と同じものを着ていったわけだが……。

 撮影スタッフにその事を言われたアンズは、固い笑顔を見せて返答をした。


「新作出たの知ってる? あれもかなりデザイン良いよ」

「は、はぁ……、そうですね」

「今予約しないと、プレミアついて値段あがるかもね」

「そうですね……」

 撮影スタッフはそう言うと、手際よくしまった機材を持って行きアンズと別れた。

 アンズは、そんな素っ気無い態度を取られたスタッフの人に軽く頭を下げた。


「新作かー」

 その事はアンズも知っており、当然欲しいと思っていた。

 だが、本業である学業を怠るわけもいかず、ちょうど試験の期間も重なってアルバイトが出来なかったせいで、お金を貯める事が出来なかったのだ。


「やっぱお金だよね……。人気になれば仕事も増えてお金も貰える、それで服もたくさん買える」

 幸い小声で周りには聞こえなかったものの、アンズは心に思ってた事を自然と口に出していた。


「君、読者モデルのアンズだよね?」

「え、はい。そうです」

 そんな中、同じ現場で働いていた別のレイヤーから話しかけられる。


「いやー、実物見たけど可愛いね!」

「ありがとうございます」

 本来ならそう言われて喜ばしいが、明らかに言ってきた側の方の顔立ちが良かったので、アンズは素直に喜べず軽く頭を下げるだけだった。


「あたしさ、ぶたりくって言うんだけど知ってる?」

「あーはい。レイヤーの方ですよね」

「そうそう! あたしに事知っててくれて嬉しいなあ!」

「は、はぁ……」

 この時アンズはこう思っていた。

 問題行動は多いが、この人は私より稼いでいる。

 少なくともこんな場末で収入の少ない現場へ来るような人物ではない。

 なのに来た理由は何故か?

 当てつけ……なのだろうかと。


「でさ、可愛いアンズちゃんにちょっとお願いに来たんだけどさー」

「はぁ、なんでしょう?」

「今さ、モデル集めててさ。こっちが用意した衣装に着替えて写真撮らせてくれればいいからさー、アンズちゃん可愛いからギャラ弾むからさ!」

 そう思っていた時、ぶたりくは目を輝かせて間髪入れずに話を進めてきた。


「うーん……」

 この仕事の胡散臭さが分からない程、アンズは馬鹿ではない。

 アンズは視線を落とし、一瞬は断ろうとも考えた。


 だが、先ほどスタッフに言われた一言と、現状の自身のランキングを思い出すと……。


「ねね、お願い?」

「分かりました。その仕事やります」

「わー! ありがとー! じゃ早速行こう!」

 アンズはぶたりくの誘いに対し、まっすぐ向いてそう返答をした。

 その回答に対してぶたりくの表情を明るくさせると、二人は近くに停車していた黒塗りで窓がフルスモークのバンへ乗り現場から離れていった……。

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