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2-6

 今まで立ち上がるのもやっとだったひがんは、いとも簡単に立ち上がり大鎌を持ち構えた。


「あの女、ナカマをカイフクするのか!」

 先ほどの光は攻撃を防ぐためだけではなかった。

 実は体力を元に戻す効果もあったのだ。


 攻撃を防ぐために願った力の副次的な効果に気づいた隠花は、少し戸惑いながらも意識を集中してひがんの治療に専念する。

 青白い光はより強く輝きを増していき、ひがんの表情は相変わらず無表情ではあるが呼吸の乱れや顔色の悪さは消えていく。


「あっちからヤれ!」

「シんでしまえッ!」

 当然、敵側も黙って見過ごす気はなく、女子高生は強く地面を蹴ると、右手の爪を突き立てながら隠花の方へまっすぐ突っ込んできたのだ。

 この時、今までG2と呼吸の合っていた動きに微妙なタイムラグが生じた。


「ぎゃあああッッ!」

 ひがんはその僅かな隙を逃さなかった。

 隠花に真正面から突っ込む女子高生の側面に素早く駆け込むと、全身を使って大鎌を振るい彼女の体を真っ二つにしたのだ。

 女子高生は上半身と下半身が分かれた直後、光の粒となって消滅してしまった。


 相方の女子高生がやられ、G2は後ずさりをしてただ狼狽するだけだった。


「形勢逆転ね」

 そんな彼に対して、ひがんはゆっくりと歩いて行き、彼の喉元に大鎌の切っ先を当てた。


「クソッ、ナゼだ! どうしてジャマをするのだッ!」

「…………」

「どうせおマエらはダレからもみとめられない……」

「…………」

「そしてッ! オレはちがうッ! オレらはちがうッッ!」

「…………」

 G2は必死に叫んだ。

 強い口調で話す度に、口から白く輝く体液がまき散らされた。


「……気が済んだ?」

「はぁっ? うぎゃあッ!」

 だがひがんは彼の言葉に一切耳を傾けず、そう冷徹に告げた後に大鎌を引いてG2の首を跳ね飛ばした。

 G2は瞬く間に光の粒となって消滅した……。


 この戦いが終わると、景色は再び色を取り戻していく。

 隠花もひがんも元々の見た目に戻り、地面にはG2と共謀していた女子高生が力なく横たわっていた。


「ひがんちゃん!」

「マスターの所へ戻ろう」

「う、うん」

 初めて姫魔女として一緒に戦ったにも関わらず、ひがんはいつも通り無表情だった。

 隠花はその様子に少し戸惑いつつ、ひがんと一緒に闇寧喫茶店へと向かった。



 闇寧喫茶店、店内バックヤードにて。


「ひがん、お疲れさん」

「うん」

 蝕美はいつも通り、簡素にねぎらいの気持ちを伝え、ひがんもまた無味乾燥な返事をする。


「じー」

「……なんだよ」

 いつもならこのままメイド服に着替えて喫茶店の手伝いをするはずだった。

 だがひがんは何も言わず、目で何かを訴えている。

 蝕美はそんなひがんを、目を細めて見返すと……。


「はいはい分かったよ。隠花、お前と正式に契約したい。勿論、姫魔女としてホーリネスと戦う契約だ」

 ため息を一つついた後に隠花の方を向き、そう告げたのだ。


「えっ……」

「なんだ嬉しくないのか? 念願のお姫様だぞ?」

「う、うーん……。私、ひがんちゃんを守りたい一心だったから、なんかよく分かんなくって」

 蝕美の厳しい表情で言われた問いかけに、隠花は指をもじもじしつつ頬を赤くさせてそう答えた。


「なるほどな」

 その言動を見た蝕美は、今までの厳しい表情を少しだけ緩めた。


「これからもひがんを守ってくれ。頼む」

「は、はい! 頑張ります! よろしくお願いします!」

 そして真っすぐな眼差しで、隠花にそう告げた。

 隠花は、おさげが縦に揺れるくらい大きく頭を下げた。


 こうして、隠花は正式な姫魔女となった。



 数日後。


 ”私人逮捕系動画配信者、名誉棄損罪、暴行罪により逮捕”

 ニュースサイトのトップにはそう書かれていた。


 隠花とひがんに成敗(ざまぁ)された動画配信者G2は、あの戦いの後警察に見つかり連行。

 被害者の証言や、蝕美が収集し秘密裏に警察へ送った痴漢冤罪が証拠となり有罪が決まった。

 悪意を持ち、故意にやっていた事から彼に課せられた罰は執行猶予無しで懲役十二年と、普通より重いものとなった。


 とりまきの女子高生は、未成年であるが故にニュース記事には主だって書かれる事は無かったが、通っていた学校は退学となり、更生施設に入寮する事となった。

 いつか施設を出て成人になった時、G2と共に被害者への償いを生涯かけて行うのは自明の理だ。


 被害者となった人々は無実である事が決まった。

 今まで拘留されていた者、服役していた者は釈放が決まり、名誉を回復する事が出来た。


 G2の手によって罪を着せられた真田誠二も、無実を証明されて自由の身となった。


「ただいま!」

「おかえりなさい。戻ってきてくれて本当によかった」

「パパー! 寂しかったよー!」

「そうかそうか、もうどこにも行かないからな」

 彼はようやく自分の家で家族に出会う事が出来た。

 三人は抱き合い、お互いの無事と温もりを確かめ合ったのだ。

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