プロローグ
某県立の某学園。
在籍生徒数は600人程度。
各学年約200人位の割合で、マンモス校でもなければ廃校危機に怯える必要もない至って普通の高校。
生徒会が無駄に権力を持っていたり、奇天烈な部活や同好会や、学校のアイドルグループ等も勿論存在はしていない。
そんな平凡でどこにでもある学園は、秋をあまり満喫することなく冬を迎えようとしていた。
例年通りなら、もう半月後に本格的な冬が訪れる時期だが、早めの冬のせいか今年に限っては既に生徒たちは衣替えを済ませていた。
男子生徒は藍色のブレザーか黒のセーター姿が多く、女子生徒も同じく黒セーラーか黒セーターの服装で占めている。
日中は生徒で溢れかえっていた学園も帰りのHRが終わると生徒の数は徐々に減っていった。
そんな中、学園の視聴覚室に6人の藍色ブレザーを着た男子学生達が集まっていた。
ひとりは見るからに好青年な印象を与える容姿で、不思議そうに残りの5人を見つめている。
二人目は飛び抜けて背が高くてガタイも良く、5人を睨み付けるような視線を放っている。
三人目は背が一番小さくとても中性的な見た目で、自分に集まる視線に怯えるよう身体を縮め込ませてびくびくしている。
四人目は中肉中背で特にこれといった特徴ない男子だが、何かを思考しながら5人を眼鏡を通してじっくり観察している。
五人目は絵に描いたような典型的なオタク男子であり、他の人を無視して手元のスマートフォンをいじっている。
最後の六人目は爽やかな雰囲気でとても女性受けが良さそうな容姿をしており、その爽やか笑顔を浮かべながら周りの様子を窺っている。
それぞれ名前は知っている人がいても特段と仲が良いわけでもなく、共通するグループに所属している訳でもない。
しかし、そんな6人が何故か放課後の視聴覚室に集まる。
誰も口を開かず10分程度が経過しようとしたところ、重い空気に耐えきれなかったのか、一人の男子生徒が口を開いた。
赤のネクタイをしているところ一年生だと他の男子達が認識する。
「あのー、この集まりって何の集まりなんですか?」
「わからないな。むしろ俺が聞きたいところだ」
背が高くガタイ良い男子生徒が問いかけに高圧的な態度で最初に答えた。
ネクタイの色が緑であり、この中で唯一の三年生の男子学生であった。
高圧的に答えた後は、そこから新たに会話が生まれることがなかったので、一年生の男子生徒は残りの人にも話を振り続ける。
「他の皆さんはどうですか?」
「あの…ごめんなさい、僕も何もわかりません」
次に弱々しく答えたのは赤ネクタイをした一年生の男子学生だった。
「拙者も存じませぬぞ」
続いてスマートフォンをいじっていた男子がやっと顔を上げて答える。
彼は二年生であるため青ネクタイをしていた。
「ごめんなさい、私もただ呼ばれたからここに来ただけです」
最後にずっと笑顔を保っている男子も他の二人同様この場所にいる理由はよく分からないと答えた。
こちらの男子も青ネクタイをしている。
これで眼鏡をかけた男子以外が一年生の質問に答えた。
それを見計らったタイミングで、今まで口を開かなかった眼鏡をかけた一人が、皆の意見を聞き終わると同時にゆっくりと口を開いた。
ネクタイは青ネクタイをしているので二年生のようだ。
「この様子だと誰もここに集まった理由を知る人はいないな。とりあえず皆さんはどういった経緯でここに来たのか話さないか?」
「わかりました。あっ、先に自己紹介します。俺は大和 大って言います。ご覧のとおり一年生です」
一番最初に会話のきっかけを作った男子である大和はネクタイをぺろんと前に出しながら自己紹介を始めた。
「俺はですけど、部活の先輩にこの視聴覚室に放課後来いって言われたので来ました」
「俺と理由が似てるな。俺は二年の楠 正樹。昼休みに生徒会の先輩が来て放課後ここに来るよう言われたからだな」
次に眼鏡を掛けた二年生の楠が自己紹介をする。
「えーと…一年の仏間 聖人です。僕は先生に来るよう言われて来ました」
「おー、なら拙者と同じですな、なんたる奇遇。おっと、名乗り忘れてましたが拙者は二年の熊鳥 千重と申します。以後お見知りおきを…」
おどおどとした態度を取っている一年生の仏間 聖人が答えた後に続けて、自分も来た理由が同じだと乗っかるように熊鳥 千重も答えた。
「私、改め僕は二年の黒田 空です。ここに来た理由は、クラスメイトに先生が放課後に視聴覚室へ来るよう言伝をもらいここにいます」
依然ニコニコと笑顔のまま黒田 空は皆に来た理由を述べる。
「俺は三年の織田 信だ。ここに呼ばれたのは朝下駄箱に手紙が入っててここに来るよう書いてあったからだ」
最後に自己紹介をした織田は、続いて何処か警戒心を持ちながら疑念を口した。
「やっぱりこの手紙はいたずらだったんだな。んで、お前ら全員がグルってことか?」
元野球部ということもあり、威圧感を出しながら他の下級生達に言い放つ。
しかし楠が臆することなく織田にすかさず反論する。
「いやいや、今さっき全員が来た理由答えたましたよ。僕達もただ呼ばれて来ただけだと」
「それが本当だったらな」
「本当ですよ。何で今まで関わりのない先輩にそんなことしなきゃならないんですか?」
「それはこんなことを企んだお前たちしか分からないのではないか?」
「人の話聞いてましたか?逆にされるような後ろめたいことでもあるんですか?」
「何だと?」
「まさかの図星ですか?」
「まあまあ、先輩達落ち着いてください」
織田と楠の次第にエスカレートしていった口論を大和が止めに入る。
そんな空気を破り、突如視聴覚室の扉が勢いよく閉じた。
突然の事態に焦った男子達はすぐさま扉を開けようとするが、びくともしなかった。
そして慌てふためく男子達。
流石の黒田も笑顔を消し、不安な表情をしていた。
急な事態に追い付けない6人。
しかし、そんな6人のことなどお構いなしに『声』が響く。
とても透き通った綺麗な女性の『声』が。
『皆さんお静かに』
皆が一斉に黒板上の大きなスピーカーに視線を集める。
『声』は続けて話始める。はっきりとした声で。
『皆様は何故ここに集まったのかとても不思議に思われているかと。
しかしこれには明確な理由があるのです。
皆様は罪深き人のため、ここに集まっております。
その罪はとても重いのです。
それは、皆様をこの世の何よりも愛されている女性の気持ちに気付かれていないという大罪を犯しているからです。
だから皆様は今すぐにでもそんな彼女達に永久の愛を捧げなければなりません。
しかし、無知な皆様もいきなりそんなことを言われても納得されないかと思います。
そんな哀れで罪深い皆様のことを配慮した慈悲深き彼女達は時間と機会を与えてくれました』
『10分間、皆様に懺悔及び彼女達に対して自らを永遠に捧げる機会を設けます。
時間内に自ら身を彼女達に捧げる方は名乗り上げていただきますよう心よりお祈り申し上げます』
突如発せられた放送が終わる。
一瞬、時が止まったかのように静寂を保っていた男子達だったが、すぐにその静寂は消え去った。
「おい!お前ら一体どうゆうことなんだよ!?いたずらでもやり過ぎじゃねえか!」
「この期の及んでまだそんなことを!…いや、それよりも今の放送は一体なんなんだ!?」
織田は怒りを露にしながら今も扉を必死に開けようとし、楠は謎の放送と今の現状に頭を抱えた。
「ちょっと!何でネット繋がらないの!?さっきまで繋がっていたのに!」
熊鳥が険しい表情で自分のスマートフォンを連打している。
そんな熊鳥の発言と様子を窺った黒田は熊鳥の発言から嫌な予感を感じたのか、すぐさま携帯を取り出し外部との連絡を試みようとする。
そしてその予感は見事的中することになる。
「いや、それどころか電話もできなくなってるよ…」
黒田の携帯はもちろん、残りの彼らの携帯も圏外になっており、6人は外部と連絡ができない事態になっていた。
「そんな、僕達これからどうなっちゃうんですか!?」
仏間は閉じ込められた現状に怯え、さらに慌てふためき身体を大きく震わせている。
「いや、それよりもさっきの放送の内容は一体どうゆうことなんでしょう?」
6人全員の中で比較的冷静を保っている大和が今一番の疑問を口に出す。
それに対して楠も続けて喋る。
「それだよ、それ。俺達を愛している奴らがいて、それを気付いていないのが大罪だとか・・・どうかしてる!」
「ちなみに皆さん答えづらいと思いますが、彼女はいますか?」
大和の発言に一番最初に答えたのは意外なことに熊鳥であった。
「はいはい!自分います!ネリアちゃんとユユチっていう嫁がいます!」
「それ絶対二次元ですよね…」
「二次元だろうが関係ない!ネリアちゃん、ユユチは我の嫁なんだ!」
「はあ…わかりました。他の皆さんは?」
大和はこれ以上熊鳥と話しても無駄だと思い他の人に訊ねてみる。
「僕はいません…今も昔もです」
「同じく空しい青春を送っているよ」
仏間と楠がいないと答える。
「俺は今はいないが一ヶ月前に別れたばかりだ」
「何と!?リア充爆発しろ!」
「何だと?」
「ひぇ…何でもないです…」
織田の彼女いた発言に噛みついた熊鳥だったが、織田の強い眼光と威圧に負け、背を丸める。
「黒田先輩は?」
「僕はいるよ」
黒田を除く全員がその答えに当たり前かという謎の一体感の雰囲気ができた。
先程、織田に噛みついた熊鳥さえも当たり前だと思い、素直に受け止めているくらいだ。
「わかりました。皆さん答えてくださってありがとうございます。ちなみに俺も生まれてこのかた彼女はいないですね」
「へえ、意外だなあ。大和君も女子からモテそうだけどな」
「まあ、何度かは告白されたことはあります」
「リア充爆発しろ!」
大和は黒田の言葉に答えづらくもしっかり事実を話す。
熊鳥の方は絡むとめんどくさそうだったのでスルーをしたようだが。
「そうなると、大和君、黒田君、織田先輩は今回思い当てはまることあるんじゃないんですか?特に織田先輩の場合は元彼女が当てはまりそうですが」
「俺は悲しいことに振られた立場だ。だから今回の件に思い当たる節はないな」
織田は今までと違い、声のトーンを落として話す。
話の内容的にあまり話したくなかったことだったのだろうと皆が推測した。
気まずくなった雰囲気を取り消そうとすかさず大和は自分に話題を変えた。
「俺はですけど、告白してきてくれた女子全員が『今は彼氏がいる』って周りから聞いています。だから、俺もそんなさっきの放送には見に覚えがないですね」
「僕は彼女をしっかり愛しているから大丈夫ですよ」
「彼女じゃない違う女子がそう思ってるかもしれないだろ?」
彼女一筋という言葉に反応した楠はそう黒田に訴えるが、黒田は少し戸惑いながらも笑顔でそれに答えた。
「それはないと思うんだけどな…」
「黒田先輩カッコいいからありえますよ」
「僕も黒田先輩カッコいいと思います!」
「ほら、二人の後輩もこう言っているんだし、少しでもその可能性を考えてみないと」
「あはは、ありがとう。お褒めの言葉として受け取っておくよ。けど、仮にそうだとしたらこんな目に会わせる人は勘弁かな」
「ああ、本当に勘弁してもらいたいもんだ」
織田はそう弱音をこぼすと、先扉を開ける作業を諦め近くの椅子に座る。
そして、6人は声の主が問いかけてきた内容について話し合い始める。
「それよりも、自分たちのことを好きでいてくれる人に自分を捧げよって話だが…」
「流石にこの展開でそんなこと望む人はいないと思いますけど…」
楠の問いかけに対して、大和が直ぐに反応して答えた。
「ほ、本当に僕たちのことを好きな人がいるかとかこの話自体怪しいから怖くて無理です…」
変わらず怯えながら、そもそもの話を信用していないと仏間は答える。
「んー、ネリアちゃんとユユチであれば問題なしだから、これはお誘い乗るのが正解ルートの予感!」
「ほ、本気で言ってますか、熊取先輩?」
熊取の発言につい反応してしまった大和。
自分の発言を拾ってくれたことに気をよくした熊取は、どゅふふとご満悦に笑うと、少し真面目な表情浮かべてしゃべり続ける。
「どゅふふ、大和殿はノリがいい方ですな。まあ、流石の拙者も見ず知らずの人には着いていくなと親に言われているから、今回はノーセンキュですな!」
「あ、あはは。流石にそうですよね」
「でも、どうせならこのまま異性界転生してネリアちゃんとユユチがいる世界に行きたかったなり」
「あはは…」
熊取とのやり取りは疲れるなと思う大和は、つい乾いた笑いが出てしまう。
そんな二人を横目に落ち着いた様子の織田が思った疑問を口にする。
「ひとつ疑問に思うことがある」
「何をですか?声の主ですか?」
楠が言い当てようとするが、織田は違うと首を振った。
「確かにそれも気になることだが、やけに周りが静かだとは思わないか?」
織田の問いに対して楠をはじめ大和、熊鳥、仏間が頭にハテナマークがあるかのような反応をしたが、黒田が理解したのか一人言のように答えを口にする。
「…不自然と言っていいほど、周りの音が聞こえないね…」
「…だよな。今、この学校に他の人はいるのか?」
織田のその一言が場の空気をが凍る。
そんな空気の中、珍しく熊鳥がまともな言い論をぶつける。
「いやいや、そうなりますと扉を閉めた輩と声の主はどう考えているのですかい?」
「いや、そもそもおかしくないか?この校舎は吹奏楽部、演劇部、その他同好会等があってもっと騒がしいだろ。」
「ここが視聴覚室だから聴こえないのでは?」
熊鳥は視聴覚室だから仕方ないと主張するが、今度は楠が直ぐに違うと答える。
「確かに視聴覚室は防音性がある部屋だけど所詮は学校の部屋だ。多少は漏れるし、外の音も小さく聴こえるはずだ」
「確かに楠先輩の言うとおり視聴覚室でも音が漏れて聴こえてきたりしますよね。特に吹奏楽部の演奏とかは小さくても聴こえてくるはずです」
楠の言い分を肯定する大和。
ただ、その事実に怯えたのか、肯定後に顔をこわばってしまう。
「た、たまたまじゃないのかな?部活が休みだったとか?」
「まだテスト期間じゃないからその可能性は考えられないかな。あまりにも外から気配が全く感じられないし」
「確かにそうですよね…」
仏間の偶然の出来事だという意見に対してやんわりとしつつも確実に違うと否定する黒田。
その後も特に話は進展することなく、気付けば10分が過ぎようとした。
そして、前触れもなしにさきほどの『声』が視聴覚室に響く。
『…自ら彼女達のもとに歩む方がいないことに非常に悲しく哀れで至極残念です』
「当たり前だろ。こんなおかしな目に会っているにも関わらず、そんなでたらめな話に乗るわけないだろ!」
我慢の限界であったのか、織田が『声』に対して怒鳴り上げる。
だが、そんな織田の怒鳴りも空しく視聴覚室に反響するだけであった。
『声』は変わらず淡々と語り続ける。
『―ですが、短時間で少しでも仲良くされていたことは皆様にとっては幸いだったかもしれません。何故ならこれから貴方達はかけがえのない仲間となるのですから―』
「こいつ、俺たちの会話盗み聞きでもしてたのか?」
楠が愚痴るように疑念を口にする。
楠の疑念を聞いた残りのメンバーは辺りを見渡す。
どこかに盗聴器でもあるのかと見渡し探すが、それらしきものは見当たらない。
『声』は変わらず淡々と語り続ける。
そして、6人は否応にもその声の内容を耳をする。
『―それでは、本題に入りましょう。 皆様と彼女達の運命のゲームを─」
彼らの運命を掛けたゲームを。
ご愛読ありがとうございました。
純愛?たっぷりな学園ものを書いてみたい思い勢いで投稿しました。
勢いで書いている作品でゲーム内容部分はお粗末な内容かと思いますため、
雰囲気だけで味わっていただけたら嬉しいです。