リンゴ
魔王討伐に向かった勇者は、魔王の言葉に惑わされ、世界の半分を手にした。しかしその後勇者は行方不明に。
モブラの任務は消えた勇者を探し出し、もう一度魔王討伐に向かわせること。
モブラは勇者を見つけられるのか!?
そもそもモブラは戦えるのか?
「おりゃぁ!!!!!!」
コツン
突然ドッグゾンビの頭にリンゴが当たった。
「お前ぼーっとしてっとパンみたいに腕を食いちぎられるぞ!」
幼く高い声がリンゴを投げた方からしてきた。まだ歳は10くらいだ。
「てめぇー!マジで食われてぇのか??俺の前で食われるのはやめろよ!気持ちわりぃ!」
ドッグゾンビはうるさい方へと走り出した。たしかに元気な肉の方がうまいだろう。
「ちきしょう!もうリンゴしかねぇんだよ!俺はぁ!」
モブラは彼を救っても救わなくてもどっちでもよかった。しかしモブラは思った。彼が敵を惹きつけてくれれば自分は逃げられると。犬の1匹追い払って彼を仲間にすれば、将来ドラゴンの身代わりにでもなってくれるのではないかと。モブラはそう思った。モブラは姑息なやつだった。しかし魔王が支配するこの世界ではそうでないと生き残れないのだった。
「たまに考えていた。」
「なに1人で言ってやがるんだよ!なんとかしてくれ!」
「ギターで殴ったら痛いだろうと。」
「は??ギターで何だって?聞こえねぇ!」
バゴンッ!
鈍い音がサウンドホールで響き渡る
頭の歪んだ紫粘土は骨を残して溶けてゆく。
「なぁ助けてくれてありがとよ!あーその、」
「…」
「お、俺はナミラ。名前はなんて言うんだ?」
「…」
「なあ、名前くらい言ってくれねぇと俺もお礼ができねぇんだぜ。名前くらいいいじゃねえか。」
「モブラだ。」
「おぅモブラか。お礼はどうしたらいい??俺は商人やってんだ。今はリンゴしか持ち合わせねぇけど、パンくれぇならすぐに調達できるさ」
「俺についてこい。旅だ。」
「た、旅だってぇ!?俺は両親を番人に斬り殺されてんだ!俺は生きていくので精一杯なんだぞ!?」
「お前だけならどこに行っても変わらないだろう。」
「まぁ、そうだけどよぉー、、たしかにそうだな」
「よっしゃわかった。命の恩人。旅についてくぜ。」
「…」
「なぁ、ありがとなくらい言ったらどうだ?今のは感謝のシチュエーションだぜ?」
モブラの旅は騒がしくなりそうだが、結局ギターとリンゴしかない。ギターだけで戦っていけるんだろうか。