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エイプリルフール・トゥルーストーリー  作者: 日向満家
現在 恭一  葵を地上に帰した少し後
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Scene32

 恭一と南波による、風船オバケとの戦いは凄惨を極めた。二人がいくら攻撃を加えようが、ダメージを受けている気がしない。そのくせ、風船オバケからの攻撃はガンガン効いてくる。

 攻撃としては、ありとあらゆることを試した。あの風船オバケも使ってくるような、火・水・氷・雷・風などの自然現象系、ミサイルや銃などの火器系。猛禽や幻獣などの動物系。

 南波が得意とする正のエネルギーの流し込みも、相手が巨体すぎてほとんど効かなかった。

「まずいね。ここまでとはね」

 それまでは二人が別々に攻撃していたが、珍しいことに南波が恭一の方に近寄ってきた。

都度応急措置をしているが、全身傷だらけだ。おそらく骨も何本か折れている。

「ああ、葵を帰しておいて良かった」

 とてつもないピンチであることは間違いなかったが、恭一はどこかホッとした顔をしていた。

「全くもったいない。あんな巨大戦力を」

 南波は嘆かわしそうにそう言った。恭一は耳を疑う。

「お前、正気か? いくらすごい能力を持っていると言っても。自分でその能力もろくに使いこなせないやつには、この状況はきつ過ぎる」

 それを聞いた南波は間髪入れずにこう言った。

「君は、彼女をなめすぎじゃないかい? 葵ちゃんは君が思ってるより何倍もすごいよ」

「うるさいな、わかってるよ」

 恭一は少しムスッとして、南波に言い返した。葵とはずっと繋がっていた。彼女の能力については自分の方がよく知ってるという自負が、恭一にはあった。

「それよりあいつの倒し方をもっとちゃんと考えようぜ」

 恭一は話題を変えた。これ以上、話すと本当に葵を呼び戻さなくてはいけなくなってしまいそうだ。

「今まで、俺たちは自分の想像力のままに何でも創り出せる能力のせいで、無敵だと思い込んでた。だが、あいつを倒すには、それじゃダメなんだ。それを超える何かがないと」

「そんなこと言ったって、僕たちにはそれしかできないじゃないか。自分たちの思うままに、何でも生み出すことしか、僕らはできない」

「なんて贅沢な悩みなんだ」

 状況を客観的に聞いてしまった恭一は、なんだか可笑しくなってしまった。南波も頬が緩んでいる。

 しかし、ゆっくりと喋っていられるのもそれまでだった。風船オバケが放つかまいたちが、二人の間を断つ。二人は慌てて横っとびに避けた。



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