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Scene27
いつの間にか怪物は姿を消していた。何が起こっているのか少し気になったが、今はそれどころじゃない。天国がどんどん狭くなってきている。
天国自体はただっぴろい一つの光の円盤だが、その中央付近に薄い霧がかかっているところがある。
そこには負のエネルギーをことさら強く込めているため、その中に入って強く念じることで、望む人に会えるのだ。
だが、その負のエネルギーも無限ではないため、一度に入ることができる人間は限られていた。
死者に会えることを掲げて仲間を集めていた南波は、その責任感から、順番を次々に譲っていると、さっきはついに会うことができなかった。
恭一と葵のおかげで生まれたチャンスだ。今度こそは、母に会いたい。
思っていたよりも早く、南波はその霧の前に着くことができた。さっきよりも随分早い。恭一達が、順調に天国を縮小しているのだろう。
実際、その霧を前にすると、途端に強い緊張が南波を襲った。よく仲間達は何の躊躇もなく、この中に入っていったものだと思う。そうか、皆は愛されていたからか。
僕は母に愛されていたのだろうか? あの日記を信じて良いのだろうか。わからない。だって生前もほとんど会っていないのだから。
ただ、そんな恐れで止まる南波ではない。一度大きく深呼吸をして、南波は中に入った。




