奇襲への奇襲
木々をかき分け、草をかき分け、道なき山道を進んでいくシェド、ネク、ジャカル、サンの4名。慣れない山道に苦戦しながらも、サンは今の状況をシェドに確認する。
「それでシェド隊長。もう何十分もこの山道を歩いているけど、あとどのくらいで敵陣に着くんだ?」
「だから前にも言ったろ。サン。俺たちの目的は敵本陣への奇襲だが、直接今からそこに出向くわけじゃない。だからな。あーもう、説明が煩わしいなぁ。ネク、代わりに頼む」
「……うん、わかった。サン。私たちの目的は、味方の軍とレプタリアの軍が戦っている間に敵の中枢を担っているゲッコウとその護衛であるヤモリ部隊に接触し、撃退すること。ゲッコウとその部隊は、南の峠にてレプタリア軍の指揮をとっている。そんな彼らを倒すことができれば、この戦争は勝ったも同然」
静かに淡々と状況を語るネクの説明をジャカルが引き継ぐ。
「そうそう。だけどどんなにアツい俺たちでも、急に本陣に突っ込むわけにはいかない。敵に囲まれてしまうからね。だから今は、とりあえず、敵の本陣に近くかつ標高の高いところに陣取り、ヤモリ軍の位置を確認して、敵に隙ができるのを待つ。すでに本陣の場所はネクのアツい調査でわかっているからね。だから今向かっているのは、本陣じゃなくあくまで本陣の様子を見渡せる場所ってわけだ」
「そっか、そうだったな。ありがと、2人とも」
そして、作戦内容を確認しながらも少しずつ目的地へと足を進めていく4人。そして出兵から、40分ぐらい山道を進んだあと、シェドが声を上げる。
「よし、大体この辺でいいだろう。俺たちシェド隊はここに陣取る。ここなら敵の本陣の様子が見えるはずだ。おい、ネク。望遠鏡待ってるか?」
「うん、待ってきてる」
「よし、じゃあそれで本陣の様子を教えてくれ」
そしてネクは、ポーチから望遠鏡を取り出す。そして、じっと本陣の方をしばらく眺めていると、ネクが小さな声で呟いた。
「…-おかしい」
「何がだ?」
シェドがネクに対して低く響く声でそう尋ねる。
「……どこを見ても、ヤモリ隊とゲッコウが見当たらない。なんで? ここで彼らはレプタリアの指揮をとっているはず」
「なんだと? どれ、見せてみろ」
そして次はシェドがその望遠鏡のレンズを覗き込む。しかし、やはり期待していたものを見つけたような反応はそこにはない。
「確かに。なんでだ? 今までネクの調査に不備があったことはなかったが」
「どれ、俺にも見せてくれよ」
そう言ってサンはシェドから望遠鏡を受け取る。一応自分だってフェニックスであり、鳥類の端くれ。みんなには見ることができないものを見られるかもしれない。もっとも、未だサンの目に、鳥類の視力など備わったことはなかったが。
右へ左へと敵の本陣を見渡すサン。しかし、カエルやカメなど部隊らしきものはあれど、ヤモリらしき獣人は見当たらない。
「ん? あれは?」
そんな時彼の視界に、見知った顔が飛び込んでくる。
「なんだよサン? 何かアツい発見があったなら教えてくれよ?」
「いや、でも別に大したことじゃないんだけど」
「なんだ? サン。些細なことでもいい。言ってみろ」
シェドがじっとこちらを見て、サンに対してそう告げる。本当にこんな情報いるのだろうか。サンは首を傾げながらも、彼らに自身の発見を伝える。
「いや、カエル部隊の中にさ。グレイトレイクで戦ったアマガエルがいたんだ。それだけだよ」
シェドは眉をピクリと顰める。
「どういうことだ? お前が戦ったのは、アマガとウガイの2人だけだろう? 他に誰かいたのか」
「ああ、本当はもう一人アマガエルの獣人とも戦ったんだ。最も、そいつはジャカルが来た時の混乱に乗じて多分湖を泳いで逃げたと思うんだけど」
「え、それって………」
ネクが体を震わせる。最悪の想像が彼女の頭をよぎる。その瞬間、シェドが声を上げる。
「なんでそんな大事なことを今日まで黙ってた。一旦本陣に戻るぞ。こっちの作戦がバレている可能性がある」
「悪い。そんな重大なことだとは思ってなかった。でもなんでその可能性があるんだ?」
「アマゲは結構謎に包まれている兵士なんだが切れ物でなく。ジャックがお前に対して行っていた俺たちの説明を、水中で聞いていた可能性がある。そしたら、ネクがレプタリアで得ていた情報は全て使えないし、こちらがどういう情報を得ようとしていたかで、こっちの大まかな作戦がわかるはずだ。だから――」
「シェド! サン! 危ない!」
ネクはふと、自分たちの右側を見て、そう声を発する。何が危ないのかわからなかったがシェドとサンは、咄嗟にその場から離れた。




