闇に浮かぶは白き魔性
お久しぶりです、ちょっと忙しくしてた上に自分の創作にあり方を探ってたため遅くなりました。
下界の民達はその姿に敬服を隠さず、敵前だというのに頭を垂れてまで歓喜と畏怖の言葉を述べる。その姿はまさに狂信と呼ぶに相応しく、彼らが犯してきた過ちの意味をありありと写し出していた。しかしいつの時代においても罪人の末路というものは悲惨なものだ』
さっきから頭の中に直に響いてくるこの声はどうやら浮いてるあいつから放たれているらしい。
自らを悪魔と名乗るだけあって、その身から発せられる力や威厳は確かなもので体が強張るのを感じる。今は距離が離れているが、いつ距離を詰めてくるか、どのような手段を取るか、その全てが不透明な状態での睨み合いはあまりにもこちらに不利だ。出方を伺わねば、一体何をしてくる……?
そう身構えた次の瞬間、周囲の村人たちが空から降り注いだ強い光の柱に飲み込まれ、その姿をくらませていった。
月の光は時に優しく、時に妖しく人を包み導く。だが導かれる先を誰が決めるのか、誰が知れようか。故に人は安らぎを期待する、自らこそ救われるべきであると夢を見る。現を幻として』
光が過ぎた後に残ったのものは何もなかった、そこには一抹の塵すら無くただ空虚な闇が浮かんでいるばかりだった。
今になってやっと理解できた、いやたった一撃で理解させられた、アレは絶対に相手をしてはいけない存在で私たち人間や魔物とかとは全く比べ物にならない存在なんだと。
知覚できないほどの速度で、その上周囲に広く展開していた全員を1秒の誤差なく同時に消し去る射程範囲の広さ、それに高攻撃力ながら私とセビアだけは無傷で済ませる程の精密動作性、笑えてくる程の理不尽が彼我の差というものをありありと映し出していた。
勝利の算段なんてのは全くつかないし正直とても怖い、今も歯の根は噛み合わないし出来ることならば何もかもを捨て置いて逃げ出したいほどに。だがな、私はここで一体どうすればなどと泣き言を呟きながら頭を抱えるつもりもない。完全なる負け戦、犬死に、無駄な争い。
だからどうしたと言うのだ、遠路はるばるここまできて今更全部放り投げて逃げ出すというのはあまりにも不格好が過ぎる。それに、ここで退いてしまえばもう、何もかもが元に戻らない気がする。それに退いても抗ってもどちらにせよ一人になるのであれば。
「もう、一人なんてのはこりごりだからな。決死の覚悟で差し違えてでも打倒する、それ以外に明日はない」
身体中に魔力を回す、それによって血液と共に魔力が駆け巡り身体と脳を熱く狂わせる。あぁ、これで良い、余計な思考を全て吹き飛ばすほどの高揚感!そうだ、私は誰かのためになんてのは向いてない。どこまでも自己中心的に私の欲望を果たす!
私の周囲に風が吹き、砂を巻き上げお互いの姿を隠す。敵から目を離すなんてのは三流だが、三流上等。何にせよ挑戦者はこちらなのだから多少泥臭くとも本気でぶっ潰す!!
未だ燃え残る蒼炎に照らされながら、赤き戦士は閃光として空へと駆け上がる。それを守護するように炎が周囲を飛び回りながら強大な敵を討たんと速度を速める。
赤と蒼の共演!世に語られる神話のように今、二人の英雄が友のために自らを越えようとしている!その煌めきの何と美しいことか!ああ、人間というのも捨てたものじゃあない!さあ、存分に魅せてくれ、魂の輝きを!!』
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ちょこっと裏話 『魔力と魔法』
魔力とは即ち人の身に流れる力であり魔法とは魔力によって生み出される現象であり、この二つの要素を扱う学問並びに諸研究を魔導と呼ぶ。
魔力や魔法というものは個人間で形質に違いがあり、生まれた時にどのような形質を持っているかが決定される。
留意しておいて欲しい事だが魔力の継承については未だ解明出来ている部分は少なく、現在判明していることは血統に依ることなく親から子へ遺伝しない。
そして一般的に勘違いされやすい事であるが魔力の本意とは身体に巡らせ理外の力を得る事であり、魔法というのはそれに伴う副産物にしか過ぎないという事である。例えば炎を生み出す魔法を持つものはまず魔力に炎の力が宿っているのである。
『魔への目覚めと導き』序文より引用