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異世界で生きたい  作者: 丸丸九
本編
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彼女のヒミツ?

陽気そうに見えるけど、止まらないためにも無理に笑うのです。それが正解と信じて。

「なんと言うか、凄かったね」


「ああ、凄かった。正直あれ程の物とは全く予想だにしなかった分上乗せで凄かったな」


 出発してから少しして、僕らはすでに王国都市の門前へと辿り着いていた。濃紺に近い色した高壁を太陽が煌々と照らす、その立ち姿はただの壁にも関わらずまるで王族の様な気風と威厳のある姿をしていた。それに比べて僕らはまぁ何と薄汚いと言うか、反骨的な色合いだろうか。

 まだ戻らない黒混じりの青い頭髪は土汚れで茶色く変色し、見るもの全てに混沌とはこの髪色の様であると知らしめ、相貌にも汚れが付き、片目からは幼木が生えるというなんとも痛々しい姿を晒して。アジーの方は顔や腕に深度の程度はあれど赤い弧を多く描いて、その目と髪の色を熱く鮮やかに染め上げていた。

痛みを誤魔化すためになるべく難しい言葉を使ったけれど、とにかく大怪我してボロボロの状態でーす!あぁ、片目痛いよぉ。


「セビア、私は学んだぞ。二度と得体の知れない車には乗らない、特にフューロス車には絶対に乗らない!」


「僕も完全同意だよ、案外ゴブリン達からディナス借りれなくて幸運だったのかもね」


 まだ深いところまで突き刺さってなくて良かった、魔法で治せる。

…いや、いくら魔法で治せるからって言っても良いことはないだろ良いことは。不味いぞ、治療できるのが当たり前になってるから怪我とかへの警戒がかなり薄くなってる。僕は治せないものの方が多いんだからまず怪我とか病気しない様にしなきゃ、予防大事に。

僕がもっとまともな治療魔法使いだったら、マクロの症状とかも治せたんだろうか。大切な時に何も出来ないのは、昔からまだ変えれてないんだなぁ。


「おい、思考に耽る前にまず治療を早くしろ!いくら出入りに制限ないからってこんな状態で突っ立ってたら憲兵が来る!後すっごい痛いからとにかく早急になんとかしてほしい!」


「え、ああそうだね。僕も痛くて仕方ないし」










「それで、着いたはいいけどこの後どうするんだい?君に任せっきりだとなんだか不安で」


「その不安について聞きたいことはあるが、あんまり騒ぐと面倒だから見逃してやる。まぁ、任せなさい。計画はバッチリだからさ」


うーん、不安!

 信じたいのはやまやまなんだけど、これまで言動とか行動とか鑑みるにあまり主導権を握らせちゃダメなタイプだと思うんだよな!僕!マクロはよくこの人とやって来れてるよな、勿論良いところも沢山あるんだろうけど、僕からするとまだ無鉄砲暴力女の域を出ないんだよな。


「なんか言ったか?」


「良いや何も、ところで気になってたんだけどさ、なんでそんな目深にフードをかぶってるんだい?まるで誰にも知られたくないように」


「誰にも知られたくないからこうやってるんだ。っと、着いたぞ。ここが目的の場所だ」


「目的の場所、って。ここ!?」


 ま、まさか連れられてやって来たのは超が三つは付くほどの有名高級店『空の靴屋』じゃん!確かに数少ない転送技師の中でも一流中の一流が集う場所で失敗しないし、行き帰りまで保証してくれて僻地への移動とかにはもってこいだけど!お金が無いんだよ!例え貧乏生活じゃない専業の治療魔術師だったり都市警備隊だったとても生きてるうちに一回使えれば良いくらいの値段だよここ!懐事情を忘れてるわけじゃ無いだろうし、まさかただ乗りするつもりじゃ、ダメダメダメ!犯罪はまずいって!

あ!だから顔隠してんの!?狡猾!思った以上に狡猾!


「何か不快な勘違いしてそうなのが気がかりだが、安心しろ。ちゃんとした手段を使うさ」


「ちゃんとした手段って何さ!?武力制圧のこと!?」


「やっぱり面倒な勘違いしてるなお前、良いから黙ってついて来い」


え、えぇ?堂々と進んでいくじゃん、不安だけどここで待つわけにもいかないし、腹括るか…


「ようこそいらっしゃいました、今日はどのようなご予定で?」


「ここの主人と話がしたい、都合できるか?」


「生憎ですが主人はお忙しい身でして。お引き取り願うしか」


「ミナーヴァの者が話したがっている、これで理由は十分じゃないか?」


「!失礼いたしました。では奥の部屋で暫しお待ちください、主人を呼んで参ります」


「話が通じる人で助かりました。ほら話ついたから、お前はそんな覚悟決まった顔で構えるな」


 え、え、どう言うことなの?てっきり蛮族が如く虐殺と蹂躙の限りを尽くして無理やり移動するもんだと思ってたのに何か別の方向性で大きな事をしようとしてないかこの人?

僕、お腹痛くなって来た…


「お前私のことなんだと思ってるんだ?」


「無鉄砲暴力女…」


「一回ちゃんと力の差を見せてやる必要がありそうだな、おい」


なんて通された部屋でやってると、ノックの音が4回してから扉が開き、いかにもな老爺が一人入って来た。


「こう急に来られても、私には私の都合があるというのにいつまで経っても礼儀をわきまえんなぁ、アジー?」


「ふふふ、急な訪問失礼いたします。今日は折り入って一つお願い事があって来ましたの、叶えてくださいますか」


「お爺様」


 このなんとなく肌が焦げるような感覚。マクロの所に帰りたくなって来るね…

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ちょこっと裏話

『フューロス』

大陸全土の上空に存在する魔物、犬のような頭をしており気性は荒く攻撃性が高いが警戒心が薄く餌を与えた者に強く懐くため手懐けるのは用意な部類。白く伸びた細い体で大空を移動するため最近まで空の雲の一種として見なされていた。常に宙に浮いており大地を蹴る必要が無くなったためか腕や足のような部位は存在せず流線型の体と頭のみで構成されている。

空路を使える点、速度の速さ、手懐けやすさなどの面から馬や牛よりも搬送や移動手段としての期待値が高かったが加減を知らない加速と空中での制御の難しさから殆ど使われることはなかった。現在フューロスを使った車は大型の荷物などの頑丈性の高いもののみを高速で搬送する手段として用いられている。

「影の仕事、車乗りの陰と陽」より引用

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