表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
私は普通を諦めない  作者: 星野桜
第四章
81/83

やりたいこと

 これからのことについてひと通り話し、ティアには今のリオの状態についてわかる範囲で全て話した後、私は1人部屋に戻ってきた。



 リオのことは、ティアに任せた。国の内情については、シーくんとウィルド様に任せた。



 あとは、私が……私自身がやらなきゃいけないことをすればいい。



 私は結局、この世界の問題については無力だ。

 この世界では、とにかく生きることに必死で、この世界を知ろうとする余裕はなかった。でもそれは、私以外の村の人たちにも言えること。私は偶然シーくんと出会って、教育という機会をもらえたけど、村の人たちはまだまだその日暮らしに必死でいると思う。



 前世では当たり前に享受していたけど、教育というのは贅沢品だったんだと今になって痛感する。学校が面倒だと思ったことも、授業をサボったこともある。でも、当たり前に文字が読めて、言葉が話せて、歴史や世界情勢、生きていくために必要な知識を身につけることができる環境がどれだけ恵まれていたことか。それを面倒だ、と思えることがどれだけ幸せなことだったのか、今になってやっと分かった。知識は、自分を守るための盾であり矛なのだ。



 今の私には、それが十分に備わっていない。だからこの世界においての私は圧倒的に情報弱者だ。こんな事態になるとは思っていなかった。シーくんが与えてくれた機会をありがたく享受し、これからこの世界のことを知っていこうと思っていたのに……。

 でも、それも仕方がない。時間は私の都合のいいように動いてなんてくれない。



 私がやるべきことは、今ある手札でユージン陛下を止める方法を考えること。



 これについては、シーくんは反対した。シーくんですら簡単には勝てない相手であるユージン陛下と対峙するなんて、無謀だと。

 それについては、その通りだと思う。魔法を学び始めたばかりの私なんかが、どうにかできる相手でないとは思っている。



「それでも……絶対に私がやる。」



 だって、佐藤瑠奈(わたし)を殺した犯人はあの人なんだから。



 異なる世界の住人である以上、佐藤瑠奈を殺した犯人が捕まることはない。それどころか、相手は一国の王として何食わぬ顔で再び私の前に現れた。



 前世の法で裁けないのなら、前世の世界の記憶を持った私が絶対に罪を償わせる。



……とはいっても、今のところは完全に無策。今からでも出来て、他に被害が行かないけど確実に罪を償わせる方法なんて、そんなのあるのか?私には何の権限もないからあくまでも法と倫理が許す範囲の嫌がらせしか出来ないし。

 あ、あとできれば戦争回避とか出来たらなおよし。



「なにか……なにかあるはず……」



 必死になって考えたけど、全く何も浮かばない。



……よし、こういう時は一旦FULL MOONのライブ映像でも見よう。



 アイドルは何をしていても好きだけど、1番輝いてるのはステージに立って歌って踊っている時だ、と個人的には思っている。だからこういう煮詰まった時にはライブ映像を見るのが1番だ。



「あ、新しいライブ映像が公開されてる……。リオに対してのメッセージも、こんなにたくさんきてる。みんな、本当に心配してくれてるんだ……。ありがとう。絶対にリオは助けるからね。」



 私がいなくなった後に開催されたであろうライブ映像には、あの頃よりも大きな会場で、あの頃よりもずっと上達した歌とダンスで、あの頃と変わらない笑顔でステージに立つリオがいた。



「すごい……!みんな成長してる……!あ、次の曲………ん?」



 その映像を見た瞬間、私の中に天啓が降りてきた。



「……これだ、」



 これなら、ユージン陛下に殺された仕返しをしながら、さらに戦争回避もできるかもしれない。



 思いついたら、すぐにそれをするための準備をしなくちゃいけない。そのために、確実に必要となるものがある。



「……クロス様、聞こえますか。」



 ここは寮の部屋なので、王宮にいた時のように大声を出すわけには行かない。どうやらクロス様はどこにいても自分を呼ぶ声は聞こえているそうで、次からはもっと静かに呼ぶようにと分かりにくい言葉で苦言を呈された。というか、今までクロス様に呼びかけてた人たちの声は聞こえててあえて無視したのか。神様には、ファンサという概念はないらしい。

 でも、これから始まる壮大な兄弟喧嘩のために、私たちの声には応えてくれると約束した。



「なんだ。」



「やりたいことがあるんです。そのためには多分、膨大な魔力が必要になります。」



 表情ひとつ変えずにこちらを見るクロス様に、一応話は聞いてくれると判断して私は続けた。



「ユージン陛下に魔法をかけたいんです。その魔法を創りたいんです。どうか、力をかしてください。」



 クロス様は、表情ひとつ変えずに静かに頷いた。








評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ