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私は普通を諦めない  作者: 星野桜
第一章
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出会い

 山小屋での軟禁生活から、3ヶ月。



 軟禁生活の食事は、月に1回お父さんに渡されるほんの少しの干し飯だけ。

前世では1日分にも満たないであろうその量を用意するのがどれほど大変か、今の私はよく知っている。

ましてやこれから私が居なくなって、お父さんは前のように何日も留守にすることが出来なくなるから、家の収入は減ってしまう。



 小屋で引きこもってる私はともかく、働いているお父さんや病気のお母さんがこのままの食生活を続けたら、いつ死んでもおかしくない。

 私もこのままタダ飯ぐらいになるのは罪悪感が凄い。

会うたびに、元々ガリガリのお父さんがさらにやつれていく姿を見て、私は今の私にしか出来ないことをすることにした。



……ということで、今日も私は森を探索している。



 この森は、ガラク村からそんなに離れていないけど誰も寄り付かない場所で、村長さんが子供の頃迷子になった時見つけたらしい。夜になって右も左も分からないなかこの小屋を見つけて、一晩乗り切ったそうだ。

 それ以来この森には入っていなかったが、今回の私の処遇を相談していたなかで、そういえばあそこに小屋があった……という話になったらしい。



 そんな人も寄り付かないほど危険なのか……と初めはビクビクしていたが、そんなことはなく、ただ単に、村のみんなは森の探索なんてしてる暇なかっただけだった。

確かに、村にいたらそんな時間はない。

 それなら、森に何か食材となるものや水源があるかもしれない……!だって、小学校のときに林間学校で行った山にはきれいな川が流れてたし、山菜だっていっぱいあった!



 干し飯からわかるように、この世界の食べ物と前世の世界の食べ物は、今のところ同じだった。いや、干し飯とか聞いたことなかったけど、例のスマホのような魔法の本……長いから略してスマ本で調べたら、干し飯って日本に昔からある食べ物だった。馴染みがないからこの世界特有の食べ物だと思ってた。



 スマ本さえあれば、この植物が何なのか、食べられるのかどうか、水源があれば水の引き方とか分かると思って、この3ヶ月探索を続けた結果……何も見つかっていない。



 何なの!?この土地呪われてるの!?



 やっときのこや山菜らしきものを見つけた!と思って調べると毒があるものばっかりで、全然ダメだ。むしろ、毒があるものしか見つからない。

スマ本さえなければ、空腹に耐えかねて食べていたと思う。インターネット万歳。



 今日の散策でも、見つかったのは有毒のきのこと気持ち悪い虫だけだ。

 この世界、植物は同じだがそれ以外の動物や虫は前世の世界と全く違っている。

特に虫はかなり大きくてめちゃくちゃ気持ち悪い。絶対に遭遇したくないのに、結構いる。気持ち悪い。



「今日の探索もこれで終わりかな?ていうか、本当に呪われてるんじゃない?この土地。こんだけ散策しても水源はないし、出てくるのは毒があるか気持ち悪い虫だけだし。何でこんなとこに小屋作ったんだろう。作ったの誰か知らないけど。」



 しょうがない、今日も帰ろう。

 気分を変えるために歌いながら帰ろう。こんな時はやっぱりアイドルの歌を歌うにかぎる。

今日は星が綺麗だし、やっぱり夜空を歌ったあのバラードがいいな。



「〜〜〜♪」



 やっぱりいい曲だなぁ……。歌ってる子もイケメンだから、さらに絵になるんだよなぁ……。



 素晴らしい歌と、それを歌っていた素晴らしい彼らの姿を思い出していると、探索のイライラもモヤモヤも全て浄化されていく……そうだ、これがアイドルの力……!



 そんなご機嫌な私に水を刺すように、近くの草がガサガサと音を立てた。

……え、待って。虫とか言わないでよ。私より大きい何かが動く音だった……!



「……誰か、いますか〜?」



 どうか人間であって欲しい。いや、場合によっては人間の方が怖いこともあるけど、虫は絶対に嫌だ。



……返事はない。え、まじで虫?



 今まで遭遇した虫たちは、かなり大きいとはいえ、私よりは小さかった。

でも今の音からすると、明らかに私より大きい何かが動いた音だった。



……確かめよう。



 虫だったら気持ち悪いを通り越してむしろ恐怖しか感じないけど、こんな大きなやつまでいるのだとしたら、今後それなりの心構えが必要になる。

 私は、恐ろしい現実を知るよりも、知らない恐怖の方が嫌だ。



「よっ…よし。いくわよ、ルナ!」



 気合を入れて草むらを覗いた先にいたのは……



「あれ、人間だ。」



 しかも、この辺りでは見たことがないほど綺麗な服を着ている。こんなに綺麗な服、魔法具召喚の儀でも着ることができない。



「あの、大丈夫ですか?」



声をかけてみるが、返事はない。



「あの〜!大丈夫ですか!?」



 さらに大きな声で声をかけながら譲っても返事はない。

まさか死んでる……!?と思って口元に耳を近づけると、息はしていた。手首にふれると、脈もちゃんとある。



「よかった……。とりあえず生きてる。」



 もうすっかり日は落ちてしまっている。

さすがにこのまま放置という訳にはいかないので、小屋に連れて行こう。



 さて、ここで問題があります。

 自分よりも大きな相手を運ぶにはどうしたらいいのでしょうか……。



「お願いスマ本。自分よりも大きな相手を運ぶ方法を調べて。」



 やっぱりこの本、ほんとに便利。 



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