信じられる人
「魔法薬についてならば、この国で1番詳しい者を知っている。」
シーくんの言葉に、私は思わず飛びついた。
「ほんと!?その人にお願いできるかな?信用できる人?」
お願いするとしたら、全てではなくとも状況を説明する必要がある。少なくとも、現在のリオの状況を見ることができるのは週刊誌のネットサイトが出している暴露のような隠し撮り写真のみ。それを見てもらうには、私のスマ本と、そこに映る日本語がどうしても見えてしまう。それ以外のスマ本から見られるリオ関連のネットニュースや公式からの発表は私が訳して伝えるとしても、全てを隠してお願いすることは難しいだろう。
それならば、その人が信用に値する人物であり、今後も秘密を守ってくれるような人である必要がある。
「……信用に値する人物かどうかは、俺よりもルナの方が知っているだろうな。」
「え?私?」
ガラク村という田舎から都会に出てきたばかりの私が、王族として人脈を広げながら生きてきたシーくんより知っている人とは……?
首を傾げながら必死に考えている私をみて、シーくんは言った。
「よく一緒にいるところを見る。学友なんだろう。ティア・ネットとは。」
「ティア!?」
「……というわけで、どうにか私たちに力を貸していただけないでしょうか!?」
魔法学校の一画にある王族専用の応接室。豪華ながらも下品になりすぎないセンスのいい部屋で、私とシーくんはティアに向き合っていた。
「え?あの、まってくださ、あの、え?」
私がティアを呼び出した時には何の疑問もなくついてきてくれたが、この部屋に辿り着いた時からティアは顔面蒼白だった。そして、そのドアをシーくんが中から開けた瞬間、意識を手放しそうになっていた。
そんなティアをなんとか落ち着かせて、席に座ってもらった。シーくんの隣に私が座ると、なんとか落ちつきかけていたティアがまた意識を失いそうになっていたけど、こっちは依頼している側だから隣に座るわけにもいかないし……
再度ティアに落ち着いてもらってから、私はひと通りの事情を、スマ本を見せながら話していった。目を白黒させながらも、話を最後まで聞いてくれたティアに、私は椅子から立ち上がり床に膝をついて頭を下げた。
「えっ、あの、頭を上げて!話は分かったというか、理解はできないけど分かったような気がするんですけど、それでも、私には荷が重すぎるような気がするような気がするんですけど、」
断られそうな雰囲気になってきたけど、何とかお願いしたい……!!
必死でお願いする私の隣で、シーくんは表情を動かさずにただ座っていた。
「ほら!シーくんも一生懸命頼んで!!ティアだけが頼りなんだからね!!」
「………分かった。」
「ぴょっ!?!?!?」
椅子に座ったままだったシーくんの腕を引いて、同じように床に座って頭を下げるよう促すと、シーくんは文句も言わずに言われるがままに動こうとした。
それを見たティアは、よく分からない奇声を上げながら立ち上がった。
「まってください!!分かりました!!何でもするので頭を下げないでくださいぃぃぃ!!!」
「……!!ありがとうございます!!」
そっか、王族に頭を下げさせるなんてしちゃいけなかったのか。さらに動揺させてしまった。申し訳ない。
それでも何とか承諾してくれたティアに、私はさらに深く頭をさげた。
……シーくんからティアの名前を出された時、私の中に迷いは全くなかった。
ティアと出会ってから、まだ半年も経っていない短い付き合いしかしていない。でも、何となく、彼女なら大丈夫だと思った。
私は昔から、人を見る目には自信がある。だからきっと、大丈夫。
……絶対に、ユージン陛下には負けない。




