相応しい
「世界を渡る術は授ける。人間のやったことについては干渉しない。」
そう言い残すと、クロスは消えていった。
「……結局、リオのことはこっちでなんとかしろってことなんですね。」
「神クロス様は人間のやったこと、と言っていた。それならば、こちらで何とかできるのかもしれないよ。そのリオという人が今どうなっているのか私にも教えてくれるかい。」
「はい、これなんですけど……」
クロスが消えた後、シェイドは立っていることが出来ずに、近くの椅子に座り込んだ。一方、ルナとウィルドは何事もなかったかのように、魔法具を見ている
先程まで神様がいて、とんでもない話を聞かされたというのに……まるで知り合いが帰った後かのように普通に会話をするふたりを、シェイドは呆然と見つめていた。
確かに、クロスと会うのが初めてなのはジェイドだけだ。それでもシェイドは、何度クロスと会う機会を重ねても、ふたりのように対応することはできないだろうと思った。
そもそも、ルナは会ったと言ってもすれ違った程度で、ウィルドは何度も会っているようだが、初対面からいきなり現れたクロスに錯乱することなく普通に会話をすることができていた。シェイドは、その存在感に圧倒され、ほとんど言葉を発することができなかったというのに。
「おそらく魔法汚染の類だろう。魔法薬で何とかなると思うが。」
「本当ですか!!」
「ああ。しかし、魔法薬については私は専門外だからなぁ。ああ、そうだ。シェイド。」
「………」
「シーくん?」
「………」
自分と兄が違うことは分かっていた。だから、兄が王になってそれを支えようと思った。
ルナが特別であることには知っていた。だからこそ、好きで、愛して、欲しいと思った。
こうしてふたりが揃っているのを見て、シェイドは初めて……ふたりは似ていると思った。
それに対して感じるのは、嫉妬だとか疎外感とか、そんなのではなく……自分への劣等感だった。
きっと、ふたりは特別だ。もしかしたら、クロスは本当にウィルドとルナが結ばれることを望んでいたのかもしれない。ウィルドとルナが並ぶ姿を想像すると、激しい嫉妬の感情と……やはり自分は相応しくなかったのだと納得してしまう自分がいた。
「シーくん、大丈夫?」
………それでも、王太子になると決めた。一緒にいたいと望んだのだから。
「ああ、すまない。大丈夫だ。」
何があっても、この居場所は譲らない。




