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私は普通を諦めない  作者: 星野桜
第三章
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拝謁

「それで、クロス様ってどこにいるの?どうすれば会うことができる?」



「そっ、そんな簡単にお会いできませんよ!そもそも今この国に神クロス様と実際にお会いしたことがある方はいらっしゃいません!」



「えっ?そうなんですか?」



 オーケノア様は、当たり前のように現れて会話に混ざっていたから、この世界の神様はあんな風にふらっと現れているのかと思っていたが、そうではないらしい。

……いや、そういえばシーくんがそんなこと言ってたような気もするな。



「本来神のご加護をいただけるだけでありがたいことなのですから。実際に会おうなんてそんな恐れ多いことを言う人はいませんよ。建国神話ではこの国を創られた初代国王様は姿を拝見したと言われていますが、それ以降お姿を見ることは愚か、お声を聞いた人すらひとりも、」



「いや、ひとりいる。」



 今まで黙っていたシーくんがそういうと、ルイス様は目を見開いたまま、固まって動かなくなった。言葉を失っている。それほど、シーくんの発言は衝撃的だったみたいだ。



「え?そうなの?」



 世間知らずがゆえに、それがどれほどのことか今イチピンと来ていない私は、それが誰なのかということの方が気になる。だって、唯一相手に対抗するための手がかりだ。



「ああ。公にはしないで欲しいと本人の希望だ。これが知られたら大ごとになると……」



 珍しく言葉に詰まったシーくんに、復活したらしいルイス様が詰め寄った。



「いっ、一体いつ!?誰が!?神クロス様と拝謁できたとしたらそれは確実に歴史に残りますよ!!それを、隠しておくなど……!」



「俺も、それがいいと判断した。……知られてしまえば、後継者争いになってしまう。」



「後継者争い……ということは、王族ですか!?」



「……ああ。」



 王族……ということは、シーくんの家族か。私は試験前の勉強で必死に覚えた王族の家系図を思い浮かべる。



「あ!でも、シーくんの家族ならすぐに会いに行けるかな?それでどうやって会ったかきけば……!」



 一般市民が王族に会うとなると難しいかもしれないけど、目の前にいるのはその王族の王太子だ。どうにかなるかもしれないと期待してシーくんを見るけど、シーくんは苦い顔をしている。



「いや……どうだろうな。連絡は取っているが、もう何年も直接顔を見ていない。」



「後継者争い……拝謁が難しい……ま、まさかっ、」



 すぐにピンと来たらしいルイス様と違って、私はそれが誰だか分からない。



「あの、ごめんなさい?私全然ピンと来ないんですけど……?」



「それは……」



 ルイス様は、答えずにシーくんを見る。シーくんに答えを委ねているようだ。シーくんは言いづらそうにしていたが、諦めたようにため息をついた。



「仕方ないか……」



 私は、固唾を飲んでシーくんの言葉を待つ。これが、唯一の手がかりだ。なんとしても、リオを助けて、戦争も回避するような方法を見つけなければ……!



「俺がそれを知ったのは、信託を受けて王太子に選ばれたばかりの頃だった。だから余計に、俺が王太子でいいのか悩んだ。」



「そうなんだ。それで……その人は……?」



「ウィルド・フェルダリア。俺の兄で、この国の第一王子だ。」



「!!」



 その言葉で、私はようやく後継者争いの意味を理解した。第一子が後を継ぐのが当たり前の世界で、シーくんは選ばれた。きっと、認められるまでにいろいろあったんだと思う。その上クロス様と第一王子が会っていたとなると、反発はさらに大きくなっていただろう。



「兄様が神クロス様に拝謁したのは、俺が魔法具召喚の儀を終えた頃だったらしい。詳しくは教えてくれなかったが……」



「実際に会った所を見たわけじゃないんだよね?その……それは、信じていいの?」



 疑いたいわけじゃないけど、私は第一王子……ウィルド様がどんな人かを知らないし、それがこの世界ではあり得ないことだとなると尚更だ。信託を受けた弟に対する意趣返しに嘘をついた……という可能性もなくはない。



「そんな嘘をついてしまえば、いくら王族といっても処刑は免れません!あの恐ろしい毒の森行きですよ!」



「「………」」



……ごめん、その森、私たち何日も住んでたんだよね。



「……とにかく、そういうことだ。」



 誤魔化すようにそう言ったシーくん。……ルイス様にはあの森に行ったこと隠してたんだね。



「それになにより、兄様は嘘をつくような人ではない。」



 そう言ったシーくんの目は真っ直ぐだった。



「……そっか。分かった。疑ってごめんなさい。」



 ウィルド様はよく知らないけど、シーくんがそういうのならそうなんだろう。ルイス様もこの手の嘘をつくような人ではない。



「それじゃあ、ウィルド様の所に行って話を、」



 そう言いかけて、さっきのシーくんの言葉を思い出した。



(「いや……どうだろうな。連絡は取っているが、もう何年も直接顔を見ていない。」)



 直接顔を見ていない?でも、シーくんは何度もお城に帰っている。仲が悪い?いや、連絡をとっているなら絶縁ってほどでもない……はず?じゃあこの国にいない?まって、確か試験の時に……



(「兄は俺が信託によって選ばれてから、自室に篭りきりで全く外に出てこない。」)



「あ……」



「兄はもう何年も、部屋から出てきていない。」



 そういえば、そうだった!!



 そこで私はやっと、今までのシーくんの発言を理解したのだった。
















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