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私は普通を諦めない  作者: 星野桜
第三章
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まだ

「その世界では魔法は想像上のもので、使える人はいなかった。代わりに、科学技術が発達していて、そうして人々が生きている世界だったの。私はそこで生まれて……20歳まで生きていた。」



「魔法がない世界だと……?いや、異なる世界だ。こちらの常識とは違うことは十分にあり得る。だが、その世界で生きていた?今ルナはここにいるだろう?俺が知る限り、異なる世界を渡ったという人がいたという話は聞いたことがない。」



 シーくんは混乱しているが、私の話を全く信じていないというわけではない様子だったのでほっとした。ここで否定されてしまったらもう何も話せないと思っていたけど、そうではなかったことに少し安心した私は話を続ける。



「私自身、どうしてこの世界にいるのかは分からないの。20歳まで前の世界で普通に生きていたはずなのに、気がついたらこの世界でルナ・ハリスとして生きていた。」



「それで……それが、どうユージン陛下の話に繋がるんだ?」



「私がユージン陛下と話していた言葉は、前の世界での私の国の言語……『日本語』なの。私のスマ本の文字も『日本語』だけど、今まで自分のスマ本以外で『日本語』を見たことも聞いたこともないし、この世界にはないものなんでしょう?ということは、ユージン陛下は『日本』を知っている……もしかしたら、前の世界で関わりがあったのかもしれない。私は全然覚えがないんだけど、この世界に来るまでの記憶がない以上、失われた記憶がある可能性もある思う。」



 私の瑠奈とルナのように、前の世界と同じ名前になる法則があるのかは分からないが、もしそうだったとしても、悠仁、祐人、悠仁……と、ユージンという名前は日本でもある名前だ。それに、日本が話せる外国の人だった可能性もある。外国の人の名前にはあんまり詳しくないけど、あり得ると思う。



「お前とユージン陛下が話していた言葉が、ニホンゴという異世界の言語であることと、ルナがこの世界に来た理由を理解していないことは分かったが、それだけでユージン陛下とお前に繋がりがあると考えるのは早計だ。……お前がそこまで言うと言うことは、他にもそう考えた根拠があるんだろう?」



「……信じて……くれるの……?」



 こんな、自分の身に起きなければとても信じられなかったような話を完全に否定せずに聞いてくれて嬉しかったし、安心した。でも、完全に信じてもらうにはもっと時間がかかると思っていたし、それが当然だと思っていた。それなのに、今のシーくんは私の荒唐無稽な話を少しも疑っていない。それどころか、私がそう思った理由がまだあると察してくれている。……ほんとうにこの人は、頭がいい。単純な学力も勿論だけど、考え方が柔軟で察しもいい。



「今のところ、お前の話に大きな矛盾はない。俺が抱えていた疑問の答えにもなっている。それに何よりルナがこの状況で嘘をつかないと知っている。……どんな話だって信じるから、安心して話せ。」



 その言葉を聞いて、私は強張っていた体から力が抜けていくのを感じた。この人になら、話せる。



「信じてくれて、ありがとう。」



 もう、大丈夫。信じてもらえるか不安だったこの大前提さえ信じてもらえれば、この先は何を言えばいいか分かる。



「シーくんの言う通り、他にもユージン陛下が日本を知っているんじゃないかと思った根拠はあるの。まず、前世での社会保障制度……国民の生活を保証するための決まり事がユージン陛下が行った政策が酷似している。偶然の一致……というには、あまりにも似すぎている。それに、ユージン陛下は前世の世界の形と名前を知っていた。そして、私がそれを知っていると確信していたの。」 



 あの口振りは、私が日本……地球を知っていると確信しているものだった。それに何より……



「ユージン陛下は、私のことを……『佐藤瑠奈(・・・・)』と呼んだ。誰にも言っていない、私の前世の名前を。」



 信じてもらえるはずもない、途方もない話であるはずだった。私自身、自分の妄想なんじゃないかと思ったこともあった。でもその度に、自分の耳にある日本との繋がりが、その中に見える大好きなアイドルたちが、この記憶は夢や妄想ではないのだと信じさせてくれた。

 それでも、もう終わったことだと思っていた。この世界はこの世界、前世は前世で、同じだけど交わることはない。私の佐藤瑠奈としての人生は終わったのだと、ひとり隠れて泣いたりもした。シーくんがこの世界での居場所をくれて、ようやく佐藤瑠奈としての終わりを……ルナ・ハリスとしての今を受け入れられそうだったのに……。



 まだ、終わらせてはくれないらしい。










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