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私は普通を諦めない  作者: 星野桜
第一章
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望み

 初めてこの世界で魔法を見てから数年がたち、私も魔法具召喚の儀を行う日がやってきた。



「これより、ここにいるルナ・ハリスの魔法具召喚の儀を執り行う!」



「はい、よろしくお願いします。」



「さあ、ルナ・ハリス。この魔法陣の中に入って、己の望みを言いなさい。さすれば、この国を守護するクロス様が、君の望みを叶えるための魔法具を授けてくれるであろう。」



「……、」



 初めて魔法を見たときは、私はどんなかわいい魔法具を望もうか、どんな綺麗な魔法を使おうかと、この時をとても楽しみにしていた。

魔法を使えば、なんでもできると思っていた。



 でも、この数年で分かったことがある。



 魔法は、万能ではない。





 私のお母さんは、病気のためベッドに寝たきりになっている。

お母さんの病気は不治の病ではなく、薬を飲めば完治するものだ。

でも、その薬はとても高額で、貧しい我が家では買うことができない。

せめて回復魔法があれば、と思ったのに、この世界の魔法攻撃魔法や防御魔法など戦うためのものばかりだった。



 村での生活はとても厳しく、土地も枯れ果てて作物は育たないし、水も満足に流れない。

大人は必死になって働いているから、子どもが家のことをやっているけど、道具もなにもないから栄養不足の子供の身体じゃ、満足に家事も出来ない。

生活を楽にしてくれる、前世の家電のような魔法道具があることを知ったが、とても高価で、うちの村では誰も買うことができない。



 教育を受けることができないから、誰も文字を読めないし、書けない。

テレビやラジオのような魔法道具もあるらしいが、誰も持っていないから、この国のことも何も分からない。



 そして、国からはなんの助けもない。




 そんな状況でも、国には莫大なお金を納めている。

みんな、それが当たり前だから。

自分の生活が苦しいことも、王家に納めることも、それが普通で、当たり前で、疑問すら抱いてない。



 私も、普通に生まれていたらそうだったのだろう。

でも、私には前世の記憶がある。

だから、これが当たり前だとは思えなかった。



 せめて、前世が瑠奈(・・)じゃなかったら。

今世がルナ(・・)じゃなかったら。

この世界はこういうものなのだと諦めもついたと思う。

でも、私は同じるな(・・)として生まれた。



 だから、決めたことがある。

 


 私は絶対に、前世の自分を捨てない



 綺麗な魔法なんかいらない。



 お腹いっぱい食べたい。

 美味しい水が飲みたい。

 お母さんは、元気になって欲しい。

 お父さんは、幸せになってほしい。

 本を読みたい。

 文字を書きたい。

 この国のことを知りたい。

 村のみんなには、長生きしてほしい。



 だから、お願い……




「私の思う普通の世界が欲しい!」




 ねぇ、この世界の神様……叶えてくれるんでしょう?













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