表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
私は普通を諦めない  作者: 星野桜
第一章
16/83

王太子殿下

 魔法具召喚の儀から6年。

 私は村に戻って来て村で暮らしている。

……というのも、そもそもピアスが問題ならピアスが見えないようにすればいいじゃん!と思って、髪を伸ばすことにした。

 今まではどうせ手入れもできないからと、お父さんの魔法具(ナイフ)でざっくざっく切っていたが、お父さんとも月1でしか会えないし、と思って伸ばすことにしたのだ。

髪が腰の長さまで伸びたあたりで、私は村に戻ることができた。



 そして私は、12歳になった。



「……なぁ、ルナ。駄目か?」



「うん。絶対いや。」



 いつもと同じ返答に、お父さんは肩を落とす。



 10歳になった頃から結婚の話が来るようになった。その時の私が受けた衝撃は凄かった。

 だって、10歳っていったらまだ小学生だよ?そんな幼い子を結婚させるなんて正気の沙汰じゃない。

しかも、相手も私の3つ上の子だった。

ありえない!



 そうして結婚を断り続けて2年。12歳という年齢は、村では行き遅れの部類に入るらしい。

結婚の賞味期限短すぎでしょ。

……ただ、その理由も分からなくはない。

 この村では、そもそも平均寿命がそんなに長くない。

まともに栄養も取れてないし、病気になっても医者に行くことができないこの村では、長生きしても50歳まで生きることはかなり難しいらしい。

……50歳って、前世だったらまだまだこれからなのに……つらい。



 そういう事情もあって、この村では早く結婚して早く子供を産むのが普通だ。

分かってはいる……でも、



「ルナ!ただいま!おれ、今日街から帰って来たんだ。……それでさ、今度こそお、おれとけっこ、」



「しません。おかえりなさい。」



 うん、絶対嫌だ。



 そもそも、前世でアイドルに全てを捧げて、20年間彼氏すらいたことがなかった私は、結婚なんて考えもしなかった。

 しかも相手は、私が初めて魔法というものを知るきっかけとなった、男の子……トワくんだ。



 いくら私の方が年下だといっても、私の精神年齢はもうさんじゅ……うん、数えるのはやめよう。



 とにかく、そんな小さな頃から見ていた男の子と結婚しようなんて、とてもじゃないけど思えない。せめて成人してから……いや、村での基準じゃなくて前世基準の成人でお願いします。



「なんでだ!おれの何が不満なんだよ!言ってくれれば治すから!」



「あのね、何度も言ってるけど、わたしは結婚自体したいと思ってないの。」



「結婚したくないなんて、そんなことあるわけないだろう?本当は何が不満なんだ!なんでも言ってくれ!」



「本当に結婚したくないの。それに、私トワくんのこと好きじゃないし。」



「好きじゃなくても結婚はできるだろ!」



「できません!」



 結婚こそが全てみたいな価値観やめてくれないかな、本当に。あと、好きじゃないのに結婚できるわけないでしょ!そこも、この世界との酷いズレだ。

日本でも、お見合い結婚とかあったけど、それはあくまでも結婚願望がある人たちの話であって、結婚願望もないし恋愛感情もないのに結婚って、本当にする意味が分からない。

 今日も私は、まだ何か言っているトワくんを適当にあしらって、お母さんの待つ家へと帰って行った。














 そんなやりとりから数日後。まだ日も上ってない時間なのに、村が騒がしい。



「おはようございます。どうしたんですか、みんなそんなに慌てて……何かあったんですか?」



「ああ、ルナちゃん。大変なんだ。今日、王太子殿下が視察に来られるんだよ。」



「え?王太子殿下が?」



 王太子殿下といえば、次男でありながら信託に選ばれ、王太子となったお方だ。

初めは誰もが不安視していたが、戦争間近とも言われていた隣国との会合で和平条約を結んできたり、侵略しようとやってきた他国をたったひとりで制圧したり、今まで放置されていたここのような貧しい村に水路を引いたりと、今では国民から高い支持を受けている。

 さらに、容姿端麗で頭脳明晰、桁外れた魔力をもち、どんな相手にも分け隔てなく笑顔で接してくれると、平民だけでなく貴族からの支持も高いらしい、とにかくすごい人だ。



 そんな王太子は、自分が行った政策の結果を自らの足で確かめることもあるらしく、今日はガラク村に引かれた水路を視察に来るそうだ。



……そうか、来るのか、王太子殿下。

忙しそうに動く村の人たちの輪の中に加わって、私も準備を手伝う。

 実は私、王子系(系というか本物)アイドルかのようなそのスペックが気になり、一度でいいから姿を見てみたい、と思っていたのだ。望みは薄かったが、王太子殿下は平民の村を視察に訪れることもあると聞いて、もしかしたら……と密かに期待していた。

まさか、本当に来るなんて……!



 忙しそうに動くみんなの顔は、緊張しながらもどこか嬉しそうで、私も同じ顔をしていたと思う。

王太子殿下は、綺麗な水が飲みたい、という私の夢を叶えてくれた人だ。直接言葉が交わせなくても、感謝の気持ちが伝わるように、私も精一杯準備を手伝った。











 跪いたまま下を向いた体制のまま……どれぐらい経っただろう。



 王太子殿下がもうすぐ到着されると聞いて、実際に到着して村長さんの案内の元視察が行われている間中、私たちはこの姿勢を保っている。

 というのも、許可なく王族のご尊顔を拝謁することは不敬罪にあたるから、らしい。

 正直、かなりきつい。体力のないこの体でこの姿勢は辛すぎるし、なんでそこまで!と思ったが、仕方ない。



 本当ならば、私は今日、あの懐かしの山小屋行きとなるはずだった。

いくら耳を隠すような髪型にする、といっても村の人たちは私の魔法具が視察団に見つかったら、ということを心配してくれていた。

 でも、どうしても王太子殿下イケメンを見たい私が、なんとかお願いして村にいることを許してもらったのだ。だから、なるべく目立たないように小さくなっているつもりだったので、むしろこの体制は好都合なのかもしれない……足の筋肉はやばいけど。



 足はプルプルするし、頭に血が上ってクラクラするしで限界を迎えていた頃、足音と話し声が聞こえてきて私たちに緊張が走る。帰って来た!



「水路の視察は終わりました。魔法石も正しく動いているようでしたので、これからも水路は変わりなく使っていただけると思います。」



 その話し方に、私はかなり驚いた。というのも、貴族は愚か街の人でさえも、村人に敬語を使うことはない。

 それなのに王太子殿下は、とても丁寧な言葉で私たちに話してくれている。それだけで、とても嬉しかった。



「さて、長い間辛い姿勢を敷いてしまい申し訳ありませんでした。顔を上げてください。」



 足はそのままだけど、やっと頭を上げられる!



 そうして視線を上げた先にいたのは……前世でもお目にかかったことがないようなイケメンだった。

 いや、イケメンというか、もはや美しい。ひたすらに顔がいい。

これで王太子とか、スペック盛りすぎでしょ。異世界凄い。

……やっと、今世で動くイケメンを見ることができた。感無量。



「実は、今回の視察の目的は、水路だけではないのです。ガラク村の皆さんにお願いしたいことがあって参りました。」



 その言葉に、私たち村人に緊張が走る。これ以上は何の準備もしていない。特に村長さんなんて今にも倒れそうなぐらいガタガタ震えている。

 この状況でアドリブぶっ込んでくるのは反則だと思いますよ、王太子殿下……!

 どうか、準備がなくても何とかなる内容であってくれ!



「ルナ・ハリスを、私の婚約者として迎えたいのです。」



……ルナハリスヲワタシノコンヤクシャトシテムカエタイノデス?



 何度も何度も俯いたまま頭の中でその音が反芻するけど、全く理解できない。



ルナハリスヲワタシノコンヤクシャトシテ……ルナハリス、は、私のこと?ワタシノコンヤクシャトシテ……私の、婚約者として……迎えたい?え?



 言葉の意味を理解した瞬間、顔を上げた瞬間、王太子殿下と目が合って微笑まれた。



「お断りします。」



 と同時に、私の口からは反射的にお断りの返事が出てきた。



 それによって、村の人たちもようやく意味を理解して、それを私が断ったことに気づきいろんな意味で顔が真っ青になってパニックになっているし、まさか断られると思わなかった使節団の人たちは不敬だと怒り今にもこちらに攻撃を仕掛けて来そうだしで、この場は混乱を極めた。



 そんな中で、王太子殿下だけが一瞬驚いたように目を見開いた後、楽しそうに笑っていた。




















 

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ