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4 探検

 僕は、言葉わかる?と聞いてみたら、相手も日本人だと教えてくれた。しかも、同じくらいの年齢だ。離れていても、5歳は離れていないだろう。


 僕は名前を彼女に伝えると、彼女も、僕に名前を教えてくれた。相川あいかわすずっていうらしい。どっちも同じ、高校1年生のようだ。話しているうちに、僕たちはすぐに仲良くなった。どうやら、彼女も2日前にここにやってきて、あてもなく草原を彷徨さまよっていたらしい。


 本当はもう少し歩きたい、話したいこともあるが、日も暮れている。さっき走ったせいで疲れている。実は今日は何も食べていないのでおなかがすいている。ただ、疲弊がまさっていたので、僕は2人で地面に寝っ転がって、色々話しながら眠りについた。


 2人とも、大体同じくらいのタイミングで目が覚めたようだった。日はまだ昇っていないが、東の地平線がほのかに赤くなりつつある。僕たちは、明るくなるまでに「今後どのような作戦でこの草原を抜けるか」を考えることに決め、日が昇ってから歩き始めることにした。


 彼女と僕は大体歩くスピードは同じだった。どちらが早いとか遅いとかで、お互いに迷惑をかける心配はなさそうだ。歩きながら話しているうちにわかったことだが、彼女も関東の人で、友達と遊びに行った帰りに足を滑らせてしまい、取り戻したらここにいたということだった。彼女の場合も、スマートフォンは電源が入らなくて使えなかったとのことだ。


 喋りながら何時間も歩いてると、日が完全に昇った。僕は鞄の中からノートを取り出し、今後どうするかについて話し合った。見渡す先まで続く草原に終わりなどありそうにない。食べもの、飲み物はどうするか。唯一救いなのは、不気味にもトイレに行きたいとは一切感じないことだった。


 僕は、水筒に入っている水を飲んだ。相川さんも、池を途中で見つけたようで、水をくんでいたようだった。2人でたわいもない話をしながら、今後どうするかについて真剣に考え始めた。


 数分ほど考えて、この草原は割と足跡がはっきり残るから、まっすぐ歩き続けることは困難ではないだろう、という結論に至った。浅はかな考えかもしれないが、できることは歩くことしかない、というのは、僕たちにとっては疑いようのない事実だった。


 「広がる草原 何もなくても 遠い地平に まっすぐ迷わないだろう」

 これ以上、今の僕たちの状況を的確に表現したうえで励ましてくれている歌はないだろう。さっき脳裏によみがえった、四国のアイドルの歌の1番のサビだ。相川さんも、こないだ放送されていたテレビ番組を見ていたようで、この歌を知っているようだった。


 この曲の歌詞では、草原を抜けて、砂漠を越えた先の海を目指している。この荒野を抜けた先には、砂漠はあるのだろうか。その向こうに海はあるのだろうか。しかし、僕としては、海というよりかは街にたどり着きたいという想いが強かった。


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