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3 出会い

 近くで見ればよくわかる。間違いなく、この足跡は人間のものだ。1人でこの草原を歩いているのだろう。僕は1人でないことがわかると、急に嬉しくなった。南から北の方(太陽をもとに判断)へと続いている足跡をたどり、僕は歩き続けた。


 「果てしない荒野 きらめく星の 足跡たどり 僕らは砂漠を横切る」


 ふと、僕が推していたアイドルの歌が脳裏によみがえる。僕は関東に住んでいたが、この歌を歌っていたユニットは徳島県で活動している。最近、テレビのローカルアイドル特集で放送されていた歌だ。もともとはゲームのイメージソングとして公式に作られたものだが、そのグループの世界観とあうということで、看板にもなっているような歌だった、ときいている。僕は、あの9人のアイドルの姿を思い浮かべ、気力を少し取り戻した。


 日が沈むと、夜空は満天の星で埋め尽くされる。都会ではまず見ることのできない星空だ。僕は、地面に寝ながら、星空に思いをはせた。決して戻れないのかもしれないけど、誰かに出会えることを信じながら、僕は1人で夜空に祈った。


 いつのまにか寝てしまっていた。周りには危ない動物はいないので、比較的安心して眠ることができる。起きたらもう日はのぼっていた。僕は、足跡の方向へとまっすぐ向かっていった。途切れることなく地平線の向こうまで続く、羅針盤のようなもの。頼れるもの、希望の光はそれしかなかったので、僕は迷わずに歩き続けた。


 「見渡した先は 悠久の大地 足元踏みしめ どこまでも進む」


 さっき書いた歌の、歌詞の続きだ。今の自分の様子を、これ以上ないくらい的確に表している。人を探して、水を飲みながら僕は足跡を追い続けた。


 数時間歩いただろうか。足跡の主は1人だろうから、相手も自分を探している可能性がある。つまり、相手が運よく戻ってきてくれれば、出会える可能性があるということだ。誰でもいい。本当のことを言えば美少女がいいけど、どんな人でも構わない。歩きながら、僕はもう一人いる誰かに想いを馳せていた。


 足跡はどこまでも続いている。あと何日、何週間、何か月、何年歩けばいいんだろう。食べものはどうしようか。幸いにも、飲み物はまだ大丈夫そうだった。


 もうすぐ日が暮れそうだ。そんな時間に、足跡の先に1人のシルエットが見えた。性別はわからないが、人間であることは間違いない。ココが地球(半径6370km)ならば、僕は170cmなので、地平線まではだいたい4.5km。相手の歩く速さにもよるが、この体力が持てば1時間もあればつくだろう。


 よく見えないが、シルエット的には多分女の子だ。僕は、人に出会いたいという一心で遠い地平まで走っていった。休みながら走っていると、1時間でその少女のもとに着いた。僕は会えたことが嬉しくて、涙を流してしまった。


 相手はびっくりしていたが、どうやら彼女も誰かいないのか探していたようだった。


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