世界について
そこまで難しい発音があるいというわけでもないので、割と簡単に会話が可能そうな雰囲気はあった。僕は、近いうちに高校にあたる場所に戻れそうだ、という希望を持つようになっていた。
休み時間は外に出ることもできるし、特に不自由だとは感じない。午前・午後の授業を終えれば、そこからしばらくは自由時間となる。僕たちは相川と、その間に城平の探索をしてみよう、と決めていた。
授業を終え、昼ごはんの時間だ。白米も納豆も、肉も野菜もある。鮭は取れないようだが、そこまでぜいたくを言ってはいけないだろう。日本にあるものを食べることができればそれでじゅうぶんといった感じだ。
この休み時間に、先生に「高校にあたる場所に戻った後は、どこで生活することになるのか」と聞いてみた。
先生は、寮のような場所があるから、そこに住むことになる、と教えてくれた。そのための費用については心配しなくていい、とも教えてくれた。
気づいたらここにいて、さまよったらこの街にやってきた人がいるという事案は、記録に残る限り500年以上前からあるようだ。そういった人に対応するためのマニュアルのようなものもあるという。僕は、それを聞いてかなり安心した。
「ここの外に町はないんですか?」
僕はまた思ったことを聞いてみる。先生曰く、かなり遠くに行かないと街はないとのことだった。この街の周囲60kmには草原が広がっていると話していた。かなり不便に感じるが、町の人はそう感じていないようだった。
城平と呼ばれる区域は半径3kmほどのエリアであり、周りは高さ10mほどの壁で囲まれている。そこまで広いというわけでもないのに、10万人以上の人口を擁しているようだった。
「ちなみに、日本って国はあるんですか?」
相川が質問をする。先生は、そのような国はない(が、日本という国から来たと名乗る人は多い)というアンサーをくれた。
「世界地図を見せてもらうことってできますか?」
そういえばまだ世界地図を見せてもらったことがないような気がする。動詞て思い至らなかったんだろうとも思いつつ、僕たちは世界地図を見せてもらった。
その世界地図は、地球のものとかけ離れているわけではないが似てはいない地形が映っていた。
大雑把に見た感じ、大陸は5つある。1番大きい大陸が北半球の1/4を占め、次に大きい大陸が北半球の1/3を占めている。南半球はそれに比較すると海が多く、アフリカにあたるであろう大陸・南アメリカにあたるであろう大陸・オーストラリアにあたる大陸の3つがあるが、海の占める割合も多いという様子だった。
城平は1番大きい大陸の東南のほうに存在しているようだ。ここから120km離れた場所には洛唐(らくとう:klakdang)という都市があるようだった。しかし、とても歩いて行けそうな距離ではない。僕たちはいつか行きたいと思いつつも、今行くのは無理だろうと話し合った。
よく見ると、オレンタ大陸(城平がある大陸)の東部には¬のような形をした島国がある。見た感じ日本にあたりそうな土地だ。僕は、その島国について聞いてみた。
「確かにその国、いわゆる東の国ではあなた方の話す言語と多少は似た言語が用いられています。翻訳機を使わずとも文章を理解できる程度には言語が日本語と似通っているようですが、違う部分も数多く存在します。その国の人も自らの国を日本とは呼ばないようですよ」
僕は、ありがとうございました、と伝えた。
気づいたらチャイムが鳴っている。僕たちは授業を再開した。