17 施設
窓の外から見える太陽の黄色、空の青、雲の白、木々の緑。どれも僕が元いた世界のものと変わらなかった。贅沢をしよう、などと思わなければ、この世界でもそれなりに満たされることができるだろう。この施設に来るまでは、帰りたい、という思いだけが僕の中にあった。しかし、今この瞬間は、帰れなくてもいいかな、という思いが心の中に浮かんできていた。
元の世界に戻りたいが、ここの世界にも留まっていたい、いわゆる葛藤に僕は悩まされていた。窓から見える青空をボーッと眺めていると、施設のスタッフが食べ物を持ってきた。
朝ごはんは白米、漬物、生姜焼き、お吸い物、みかんだ。私はいつも朝に焼き鮭を食べていたが、ここでは海の魚は貴重品ということで、無いのも仕方ないだろう。
相変わらずお腹は空いていないが「食べられない」というわけでもなかったので、僕は黙々と、ゆっくり食べていった。
「ごちそうさまでした」
僕は食べ終えた後、向坂くんに「今日何をするのか」を聞いてみた。
「ここは教育を行う場所でもあるから、基本的には城平語の授業だよ。9時から13時(昼食まで)と、14時から16時まで。そこからは、19時まで自由時間になる」
僕は、教室はどこなのか、と尋ねた。
「『どの時期に入ってきた人はどこが教室になる』っていうのが決まってるけど、正確には把握してない。初めてだしスタッフについていけばなんとかなると思うよ」
彼に、ありがとう、と伝える。城平の言葉を覚えて行かなきゃいけないのは憂鬱だが、「文字が新しい」というわけでもないし、なんとかなるだろう、と自分は勝手に思っていた。
食器を回収してくれたスタッフが話していたのだが、外の気温は23度らしい。どうやら、気温については、「水が凍るのが0℃」「水が沸騰するのが100℃」と、元の世界と変わらないシステムを用いているようだ。少し暖かいが「暑すぎ」ではない、まあまあほどよい気温のようだ。
9時まで筋トレをして時間を潰していると、ここの女性職員が、僕に授業の時間・教室を知らせにやってきた。
「教室は313号室になります。私についてきてください」
僕は彼女の指示に従い、3階の教室(とされる場所)まで階段で向かっていった。部屋は広いが、いるのは相川だけのようだった。
「あ、相川もきてたんだ」
僕は思ったことを正直に言葉に出した。