12 施設で 3
1話、何文字くらいが読みやすいかと言った感想がありましたら気軽にお願いします。
「さっきも言いましたが、『事故で転んで気づいたらここにいた』と主張する人は300年以上前からいます。この城郭街に住む人もみな、その、いわゆる”外つ者”の存在を認知しています。ここはそのような人を保護・支援する施設ですが、そうすると外つ者でない人の中に、たまに良くないことを考える人がいて『支援してもらおう』と考える人がいるんです。それを回避するために、確認を行っているんです」
「確認方法はいくつかあったのですが、1つだけ話します。この帽子型端末で、あなた方との話・あなた方の会話を録画・録音しています。嘘をついている人は、詳しくは言いませんが、全員とは限りませんが大体いくつかの共通点があります。あなた方の喋り方には、そのような嘘を言っているようには感じられない何かがありました」
相川さんは納得したようだ。そのうえで張川さんはここ城平での生活方法などについて話し始めた。
「基本的にここは保護する場所です。あなた方は学生さんのようですね、今は3月ですが、今年の9月をめどに、新学期に高校に編入していただくことなります。そのような人もクラスにひとりはいる、いなくても、あなた方の存在をおかしいと思う人はいない、ので安心してください」
「とりあえず、あなた方は城平語での名前の呼び方を覚えてください。渡辺諒平さんの場合、名前はドゥオビャン・クリャンピイン(Dwobian Kljangpeing)、相川すずさんの場合......すずって、鈴でいいのでしょうか? 私の帽子の翻訳機ではそう表示されているのですが」
「はい、鳴らすあの鈴が由来だけど、読みやすさのために『すず』と平仮名表記になったと聞いています」
「それでは名前の読みはシャンジェン・リン(Sheangzjen Ling)となりますね。今は覚えなくてもいいですが、高校に行くまでには言語を話せるようにしておいてください」
そういえば、張川さんも似たような響きの名前だった気がする。僕は彼女に聞いてみた。
「私の名前はチャンリン・ジェン(Chaang Zjen Lin)です。似てなくもないかもしれませんが、この程度の重複は普通にありますよ」
彼女は笑いながら言う。
「ここでの生活は大変かもしれませんが、私はあなた方の味方です。いつかここでの生活を楽しめるようになってくれることを祈っています」
「それでは今回はここで終わりです。気になることなどあれば、私に何でも聞いてもらってかまいませんし、帽子をかぶっているスタッフさんもあなた方の言語を理解してくれますからなんでも聞いて大丈夫ですよ」
「あなた方は、先に来ている『外つ者』たちが集まっている部屋に向ってください。相川さんは203の部屋に、渡辺さんは109の部屋に向ってください。1つの部屋に10人ほどいますよ」
僕は指示された通り、109の部屋まで向かっていった。城平で使われている文字はアラビア数字・漢字であり、翻訳機がなくても案内や壁に書いてあることはだいたいは理解できる。迷うことなく、僕は109の部屋へと向かっていった。
部屋の入り口のドアは、教室の入り口にあるような横に引くタイプのものだ。僕はおそるおそるレバーを引っ張って、中に入っていった。
部屋の中には10人程度の男子がいて、横には人数分より少し多いベッドがある。見た感じ、全員日本人っぽい見た目をしている。僕が入ってきたのを見た1人の男の子は、僕を見てこう言ってきた。
「アァ、シュイシーンジー」
何を言っているかわからなかった僕は、おそるおそる「初めまして」と言ってみた。
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