1 始まり
少女に出会うのは第4話となる予定です。
目を開けると、そこには果てしない青空が広がっていた。僕は、どこまでも続く緑の大地に横たわっていたようだ。
僕は、体が重いことに気が付く。ただ、重いだけで痛みはなかったので、ゆっくりと立ち上がって状況を確認した。ここに来る前の僕の最後の記憶は、雪の降る日、塾から家への帰り道で、階段の氷で足を滑らせて頭をぶつけたことだった。
「あれ、ここはどこだ?」
何十秒かして、頭が回るようになってくると、僕は自分が変な場所にいることに気が付いた。夢の中なのかな?と思ったが、それにしては意識が鮮明だ。ほっぺたをつねってみても痛い。僕は一瞬でココが夢ではないことを確信した。
なぜか持っているカバンの中には、塾の帰り道に買ったお菓子、からっぽの水筒、ジュース、あと文房具などが入っている。スマートフォンもあったが、電源は切れていて使い物にならない。モバイルバッテリーは持っていなかった。
どうやら塾から帰るときに持っていたものは、一応すべて持っているようだった。とはいえ、これだけでは何もできそうにない。特におなかもすいていなかったので、僕は家に帰りたい、この状況を何とかしたい。その一心で草原の向こうへと歩み始めた。
草原には、木がところどころ生えているが、林立はしていない。最悪の場合、草や葉っぱを食べることになるのか、と僕は落胆した。もしかしたら有毒なものもあるかもしれないが、生きるか死ぬかわからない状況でそんなことも言っていられないだろう。まだお菓子があるので、そこまで最悪な状況ではないが、なくなってからが本番だろう、と僕は心の中で思っていた。
水さえあれば一週間は生きていくことができる。そう聞いたことがあるのを思い出して、僕は少し安堵した。しばらくは葉っぱを食べなくて済む。そう思うと、体がふと軽くなったのを感じた。
動物は周り、少なくとも僕が視認できる範囲にはいないので、ここに横たわれば割と安全に睡眠をとることはできる。気温も、人間にとって比較的心地よい感じだった。
今は、太陽が真上に来ている。ここで日本の常識が通用するのであればの話だが、気候的には今は4月上旬(涼しい)くらいなので、あと6時間くらいで日は沈むだろう。しかし、時間や距離の確認できるものを何も持っていなかったので、僕はまっすぐ、遠い地平線へと歩み始めることしかできなかった。
水があるのか、という問題は別にある。今はまだ、ジュースを持っているからそれを飲めばいいが、たぶん今日1日で尽きてしまうだろう。その後どうやって水を集めるか、ということを考えながら、僕は歩き始めた。
どこまで歩いても同じ景色が広がる。正直、僕が方角等を判断できるのは太陽の位置しかなかった。何時間も歩いていると、気づけばそろそろ日が沈みそうになっていたが、割と外的な命の危険はなさそうだったので僕は歩き続けた。
塾帰りに買ったジュースも、そろそろなくなりつつある。空には雲があるが、雨が降りそうな感じではない。少しおなかがすいているが、我慢できないほどではなかった。その後何時間歩いたかなど見当もつかないが、眠気が襲ってきたので僕は草原に体を横たえて眠りについた。
朝起きても、まだ日はのぼっていなかった。暑くはないので、寝ている間に汗をかいたりはしていないようだった。水を求めて、僕は歩きつづけた。