第95話
邪神と黒い悪魔……
注:いつも以上に物理の用語が出てきます。多かれ少なかれ、間違いもあると思うので、物理が詳しい方は間違いを指摘して頂けると助かります。
第95話 宇宙を"蹴"って移動できるだと!?
刻蝋値「さて、アポフィスさん、早速助言とやらをお願いしますぜ」
先程まであり得ない形に変形しまくっていたことが嘘のようにいつものコンディションだ。
アポフィス「よし、貴様が最も最短で強くなる方法……それは」
刻蝋値「…………ごくり」
さぁ、いったいどんな試練を乗り越えれば神のステージに到達するんだ……?
アポフィス「なれる全ての職業を極めることで、限界突破してただただひたすら筋トレとレベルアップだ★」
………………
…………………………
………………
刻蝋値「………………は?」
アポフィス「……聞こえなかったか?なれる」
刻蝋値「よおおぉぉぉーーーく聞こえましたよ!ええ、今まさにやっているんです!!……まさかこれで終わりなんですか…………?」
…………ああ…………返事を貰うのがこれほどまで怖いのは初めてだぜ…………。
アポフィス「そうだ」
…………実質収穫なし。ま、本当に全ての職業を極める必要があると分かっただけ良しとしようか。
アポフィス「というのは単なる身体能力面の話だ。続きがある」
刻蝋値「脅かさないでくださいよ……」
アポフィス「それは悪かったな。さて、教える前に幾つか聞くことがある。貴様は標準的な神を倒すための最低ラインの強さを言い表せるか?」
……これは確か
刻蝋値「相対性理論をぶっ壊すほどの力……即ち最低でも光速以上で動けるようにしないとダメなんでしょう? そこで伸びてるマモンが相対性理論について喋っていたから、推測してみました」
アポフィス「その通り。だが、そもそも貴様は相対性理論について知っているのか?」
刻蝋値「動いている物質の速度が光速に近づけば近づくほど、その物体の時間が伸び、見かけ上の質量が増えていき、次第には加速できなくなるんですよね……」
アポフィス「悪くない。では、仮に亜光速で動ける筋力を持っていたとする。この場合、どうやって相対性理論の壁を克服しようと思っている?」
刻蝋値「地面があるならひたすら蹴りまくって加速ですね。空気抵抗は速度増加による見かけ上の質量増加で打ち消せるだろうし、……でもある時点を越えたとたんに加速不可能になっちまうよな……やっぱ時空を歪める超筋力みたいなのが必要なんかなぁ……? それまで寿命が持たねぇか。だったら亜光速で超大質量ブラックホールに突っ込んで、事象の地平面内部で光速を超えて何とか脱出……いやいや、亜光速が限度の脚力じゃ怪しいし、そもそも何を蹴るんだ? 光の粒子でも蹴れればせめて光速に達せそうなもんだが……」
アポフィス「ほぅ、中々学もあるらしい。正直予想外だった」
刻蝋値「ですよね~~」
ま、理科と数学限定だぜ。
アポフィス「そう、そこで役に立つのがライトキックだ」
刻蝋値「ライトキック?」
アポフィス「光の粒子を蹴る技だ。足に魔力を纏わせ、踏み込むことで光の粒子を蹴る!」
刻蝋値「魔法ならアメジストに教えてもらった。ヒールなら何故か手足に纏わせれる。……つまり、こうして……おおおっ!」
両足に純粋な魔力を纏わせることに成功した。……ま、今の俺の魔力量は20程度だから1分が限度だろうがな。
アポフィス「出来たか。次は着地する前に片足を踏み込め」
刻蝋値「こう……ですね!」
試しにいつもみたいに超音速で踏み込まず、時速100キロ位で踏み込んだら、あっさりと体を浮かせることに成功した。
アポフィス「これくらいは余裕そうだな。この技は宇宙でも機動力を獲得できるから、ムーンに戻るときにでも練習すればいい。今はまだ低速条件下での効果しか得られないが、限りなく光速まで加速できるようになったときに使えば、相対性理論の壁を打ち破り、超光速に達することが出来るだろう」
刻蝋値「超光速……マジで達することが出来るんですね……!」
アポフィス「ああ、宇宙中の低速物質なぞ何も感じずに破壊できるようになるぞ」
刻蝋値「アポフィスさん、あんた邪神どころか破壊神じゃないスか?」
アポフィス「破壊神は我の比ではない。いつか宇宙を抜け出し、神々の次元に到達したときにはくれぐれも気を付けろよ。次に合うときは他の技を教えよう」
刻蝋値「やっぱ次元が違うんですね。色々教えてくださりありがとうございます! 絶対野望を達成しましょう!」
アポフィス「期待しとるぞ。では、貪欲に生きていくことだ!」
そういって、邪神アポフィスは霧散していった。
刻蝋値「……あれが神かぁ。初めてあったのがアポフィスさんで良かったかも」
あの強さ、今思い返すと敵いっこ無かったな。けど、いつかは超えてやるぜ!
俺は無言で誓った後、マモンを担いで星を脱出した。
刻蝋値「おおおっ! フツーに宇宙を蹴って移動できる!! ヒャッハーー!!!」
柄にもなく(?)はしゃぎながら加速していった。リミッター等がいつもと同等レベルまで戻ったとはいえ、空気抵抗の無い宇宙では、マッハ150まで容易く加速できた。理論上亜光速まで加速できるが、これ以上は制御が効かないので、等速直線運動をすることにした。
~マンデースター~
ポイズン「う……ん…………? ここは……?」
気絶していたポイズンがようやく起きたようだ。
アリアドネ「やっとお目覚めね。どうして気絶したのか覚えてる?」
ポイズンが起きる数分前に目覚めていたらしいが、どうにも機嫌が悪そうだ。
ポイズン「確か……どこぞの馬の骨がこいた屁にやられて……」
アリアドネ「ええ、あなただけでなく、下にいた私達も気絶させられたのよ。ねぇ、犯人を見つけたら山分けして食い殺さない? 下半身はあなたにあげるわ」
ポイズン「いや……そんな屁するやつ食ったら死ぬだろ…………」
比較的常識人のポイズンはカオスがカオスを呼んだ状況に困惑している。と、その時
エメラルド「助けてくれてもいーじゃん! ケチー!」
インフィニティ「はっ!あの程度の臭いで気絶する雑魚がここに来てるのが間違いなんだよ!!」
シン「けど、あんたも悲鳴をあげていたのなら、あの程度とは言えないだろう」
インフィニティ「気絶したやつに言われる筋合いはねぇ!……それともあれか? 何でもいいからムカムカをぶつける相手が欲しいってか?」
ラビ「滅相もありませんよ。悪いのはどこぞの馬の骨じゃないですか!」
インフィニティ「いい度胸だ! 少しでも俺に歯向かう姿勢を見せたら葬ってくれる!!」
タート「いや、話は聞こうぜ……」
エマ「うええん……」
インフィニティ「うるせぇぞ!さっさと泣き止め!でなきゃ…」
ポイズン「うるさいのはお前だろ」
いきり立つインフィニティに対し、ポイズンが横槍を入れた。
インフィニティ「あ?」
場の雰囲気が先程に増して重くなる。
ポイズン「俺達はお前になにもしない。だからせめて黙りなよ」
インフィニティ「俺の足元にも及ばねぇ雑魚のくせして言いやがるなぁ」
アリアドネ「暴れても良いけど……最悪彼に抹殺されるわよ」
インフィニティ「はっ、だからどうした? 俺は1度死んだ身だ。こうなったらとことん暴れてや」
刻蝋値「止まらねえええぇぇぇ!!!!!!!!!!」
インフィニティ「ゴガァ!?!?」
突如落下してきた刻蝋値(と、マモン)に押し潰されたのだ。
刻蝋値「あー……全員無事か?」
エマ「お兄ちゃ~~~~ん!!」
刻蝋値「おお、エマ。無事で何よりだぜ~。おーよしよし!」
俺は抱きついてきたエマを全力で撫でてやった。……少し背が伸びたかもしれねぇな。
タート「マジで宇宙から戻ってきたのか……」
刻蝋値「おう、またひとつ強くなってきたぜ!」
インフィニティ「……おい」
刻蝋値「あ、すまねぇ。お前の上に落ちちまったのか……」
インフィニティ「俺はどこぞの馬の骨がこいた屁のせいで、コイツらに理不尽な事を言われまくって虫の居所が悪いんだ」
エメラルド「だって! 一人だけ気絶しなかったんだから普通アタイ達を助けるよね!」
インフィニティ「だーかーらー! その程度でくたばる雑魚がここに来てるのが間違いだっつってんだろ!!!」
刻蝋値「うーん、インフィニティ、うちの団では助け合うことが常識だから……なるべく助け出してあげて欲しい。それと、この人選は俺がしたから全て俺の責任だ。だから、コイツらに怒るのなら俺に怒りをぶつけてくれ。何らかの願いがあるなら聞くしさ」
…………こうはいったけど、これって俺の屁だよな。……なんかすまねぇわ本当に。
インフィニティ「……チッ! チキュウに戻ったら俺を2段階位強くしろ! 分かったか!!」
刻蝋値「おう!……さーて、一先ずこいつとかぐら王に色々釘刺すか」
シン「待ってくれ……実は、俺…………この星の王子なんだ……」
刻蝋値「…………うん、それ本当?」
シン「ああ、父に反発して王宮から飛び出したんだ」
刻蝋値「詳しく聞かせてくれ」
シンは実際に正当な王家の血を引き継いでおり、王位継承権も持っていた。翌日、俺達はかぐら王とマモンを並べてこの星の真実を話した。この星の富裕層共はそれでも文句を言ってきたが、家族がマモンに殺された者、あまり裕福ではない者達はかぐら王を引きずりおろし、シンに王位を与えることを望んだ。
シン「刻蝋値さん、色々とありがとうございました」
刻蝋値「おう、カーススター開拓計画、上手く行くと良いな!」
シン「はい! チキュウやムーン、アース、フレイムスターとの貿易も楽しみです」
シンは呪われていた星、カーススターの開拓を発表した。狙いとして、星の資源は勿論のこと、ウナギ星人同士の友好度をあげることがある。今は高額の報酬につられているに過ぎないが、共同作業を行う内に仲良くしてくれる事を狙っているらしい。当然多人数で行う作業はボーナスが入り、サボりは厳格に罰せられる。そして監視員は人格や学力など、厳しい審査をくぐり抜けた者だけがなれるのだ。
ラビ「僕たちも遂にマンデースターに住めるのですね……」
タート「ラビ、泣いてる暇はねぇ。皆に連絡を入れて、旅行者達を歓迎できる姿勢を作るぞ!」
ラビ「うん、そうだね!」
~繁華街~
刻蝋値「よーし、折角だから、今日は街で遊んでから明日帰るぞー!」
エマ「刻蝋値お兄ちゃん、エメラルドちゃんと遊んできて良い?」
刻蝋値「勿論だ。頼んだぜ、エメラルド」
エメラルド「ラジャー。あ、あそこに美味しそうなお菓子が!」
エマ「食べたーい!」
インフィニティ「暇だ。カーススターで1暴れしてきていいか?」
刻蝋値「おう、明日の昼までには戻ってこいよー。さて、お二人さんは俺にお願いがあったんだったな」
アリアドネ「あら、覚えていたのね。律儀ね~」
ポイズン「俺から言おう。この国のお金で500万ゴールドに相当する金額を欲しいのだが、良いかな?」
刻蝋値「良いけど……何に使うんだ?」
……効率重視のポイズンが変なことに使うとは思えねぇが、気になるぜ。
ポイズン「この国の毒物を片っ端から調査したい。結果が出次第、お前の毒免疫向上に役立てるからさ」
刻蝋値「なーるほど、そう言うことなら頑張ってくれ」
ポイズン「ああ、ありがとう」
俺は実は初めて見るような毒は少しずつ接種を行うことで、抗体を作り、しまいには完全に克服するという行為を行っている。いつの間にやら結構な人々に認知されているから、死んで悲しむ事が無いように、毒殺防衛をしているのさ。
刻蝋値「さて、お前はなにが望みだ?」
アリアドネ「私は、普通のデートをしたいかな」
刻蝋値「あー、確かにそんなことしたことなかったな……よし、まずは屋台の飯を全て食いつくすか!」
アリアドネ「ええ!」
しばらくはとても楽しい時間が過ぎていった。が、ある一言で俺は翌日まで眠ることが出来なくなった。
刻蝋値「ふー、食った食った……あれ? やっぱり胃袋が膨れきらないな」
アリアドネ「私は既に服がキツくなってきてるわ……あなたのそれ、病気じゃないの?」
刻蝋値「帰ったらマリンに見てもらおっかな?」
アリアドネ「それにしても見つからないわね……」
刻蝋値「何がだ?」
アリアドネ「昨日インフィニティ以外の私達を屁で気絶させた不届き者よ」
刻蝋値「お、おう。臭いじゃ分からないものなんだな……消臭技術がスゲェというか…………」
…………屁の事は忘れてくれねぇかなぁ……。俺だってわざとじゃないんだよ。
アリアドネ「まぁ、今日はいいや。ということでラブホに向かいましょ」
刻蝋値「あ、ああ……まぁ、ラブホだからアレもやるんだよな…………」
普段なら喜べるのに……今回ばかりは……今回ばかりは!
アリアドネ「当然じゃない。というか、何だか乗り気じゃない」
刻蝋値「いやいやいや!! 数日間ご無沙汰だったから、いつにも増して嬉ぃーぜ!!!」
半分本当とはいえ、ヒデェハッタリだぜ。
アリアドネ「じゃ、さっさと行きましょ!」
刻蝋値「おう!…………(バレたら終わる…………(泣))」
…………オナラは極力封印しよう。俺は心からそう誓った。
第96話 腹が減って仕方ねぇ! だったら暴食の星に行くまでだぜ! に続く。




